好きでもないヨーグルトを食べる。 #ヨーグルトのある食卓

ぼくは生まれつき肌が弱かった。汗をかく時期にあせもが出るだとか、最初は軽い症状ばかりだったが、キレイな肌ではなかった。昔からのコンプレックスだった。

3年程前から、症状が一気に悪化した。2年近くさまざまな病院に行き、薬を服用し、食生活を改善したり、生活環境も変えたが、とんと効果がなかった。最初はお母さんも真剣に向き合ってくれたが、だんだん疲れてきたようで、話もしなくなり、家は暗い雰囲気に包まれた。たまに会話をしたと思ったらだいたいぼくの肌の話だ。

肌について触れられたくないくらいストレスを感じていたが、お母さんも同様にストレスを感じていたようだ。

最近のお母さんの流行りはヨーグルトのようだ、しきりに乳酸菌は腸にいいだとかぼくにいう。一番この呪いのような肌に悩まされている自分はその言葉にうんざりだった。この肌のせいで友達もろくにできやしない。自分の肌に関するありとあらゆることがストレスだった。

冷蔵庫にはお母さんが買ってきたヨーグルトが山のようにある。砂糖は肌に悪いと、プレーンのものばかり。腐ってもいけないからと容器のまま、味のついた冷たく、白い固まりを、無心で処理する。捨てることはせずに毎日口に入れてしまうのは、どうせ効果がないと思いながら、一寸どこかに救いを求めていたのかもしれない。このボロボロの肌も、このボロボロの心も。今のぼくに必要なのは肌を治すことでなく、人の温もりが感じられる愛なのに。


今日も我が家には、スプーンから鳴るコツン、コツンという渇いた音が、ただ虚しく響く。

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