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伝説のストリップ・ピンク女優大会(前編)

2024年(令和6年) 5月16日に本作に原案、アドバイスなどで、ご協力下さいました。
「久保新二」さんが逝去いたしました。

謹んでご冥福をお祈りします。


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ピンク映画の取材活動をして行く上で、活字媒体の
掲載が、ほぼ皆無と言っていいネタに遭遇した、
それは!!
成人映画に出演の経験の有る女優だけで、行うストリップ興行大会である。

近年、そんな興行を最後まで行っていたのは、
「ポルノの帝王」こと「久保新二」御大と、
途中から参加したライターでも有る「石動三六」氏である。
石動氏に、その貴重な興行体験を述懐しコラムにして頂きまして発表してます。

※掲載にあたり、興行主催である「久保新二」さんより許可を頂き掲載発表しております。

【 ストリップ劇場でのピンク女優大会 】石動三六

同じ裸産業ということもあり、ストリップ劇場とピンク女優は密接に結びついている。現役の踊り子の中にも、ピンク映画出演経験者は少なくない。だが、現状は「AV女優がピンク映画にもストリップにも出演」というスタイルが一般的であり、AVなしではこの二つの業界は結びつかない。

AVが登場する前、ピンク映画の女優は、大手映画会社の大部屋出身や舞台女優、ヌードモデル、まったくの素人など様々だったが、当時は映画館で彼女たちのショーが行われることがあった。【実演】と称し、上映中の作品に出演している女優が映画の合間にエロチックな寸劇を披露。これが後にストリップ劇場へと移行し、人気女優・男優らが一座を組んで、芝居を中心としたショーで全国を巡業するようになる。谷ナオミ一座、愛染恭子一座などは大人気を博したという。

当時、ピンク女優と一緒に全国を巡業していた男優・久保新二は、ストリップ劇場でのショーを21世紀まで続けていた。最後の数年、私もこの興行に携わっていたので、以下当時の思い出話を書き留めておきたい。
私が最初に関わったショーは「ピンク女優大会」という名称であった。記憶が曖昧だが01年頃か。場所はSHOW-UP大宮劇場。同じ建物にピンク映画館、ゲイ映画館も入ったオトナの娯楽の殿堂だ。余談だが、このストリップ劇場、昔はライブハウスであり、そこで若き萩原健一が唄っていたという伝説の地でもある。

大宮でのショーは何人かの踊り子さんのステージに挟まって、十日間毎日50分×四回(踊り子さん二人分)。出演する女優は日替わりで2,3人。メインの出し物はピンク映画名物「痴漢電車」の再現コーナーで、お客さんが舞台上で女優を背後から触る。そこで久保新二が「いきなり手のひらで触らない! まずは手の甲で様子をみて…。そうそう、上手いなぁ。いつもやってるんじゃないか?」などと面白可笑しく指導するショーである。

ここで自分がなにを手伝ったのかというと、楽屋での雑用諸々とお客さん役のサクラ。人気があった林由美香らの相手役にはお客さんが殺到するが、誰も舞台に上がってこないケースもある。そこで客席から登場し、ショーに参加するわけである。暇な日だけ来てくれればいい、という条件だったし、劇場に無料で入れるし、空き時間は近くの喫茶店で久保新二と話したり、女優と食事に行ったり…まぁ、呑気なお手伝いだった。

ただ、このときのショーには不満もあった。「女優大会」と銘打ちながら、芝居のかけらも披露しないのである。それを久保新二に話したところ、「舞台にセットもない、衣装もない、出演者も少ない、これじゃ芝居はできないだろ」という返事が返ってきた。全盛期に開催していたショーの台本を見せてもらったことがあるが、大人数でコミカルなお色気芝居を上演。設定は時代劇が多く、まさに大衆演劇の趣。たしかにそれを再現するのは無理だろう。だが、自分は小劇団に属していたので、セットなしの少人数でも芝居はできるという目論見があった。
何回か「痴漢電車」ショーを手伝ったあと(当時は年に数回公演があり、最後の頃は十日間МCを務めていた)、ようやく「その少人数の芝居とやらをやってみるか?」とOKが出た。04年8月の新宿TSミュージックである。このときに自分で台本を書いた『籠の鳥』という女優二人芝居を上演した。
出演は演技派女優として知られ、「ピンク女優大会」の主力メンバーであった里見瑤子と、アングラ系劇団の女優でピンク映画にも出ていた鏡野有栖。芝居は終戦間近の遊郭が舞台。

ベテランの娼婦(里見)が、まだ幼い見習いの娼婦(鏡野)に、戦争の悲惨さ、自由の尊さを教え、最後は二人のレズシーンで終わる構成である。稽古は一回のみだったが、ストーリーを気に入った久保新二が大衆演劇風の演出をつけてくれた。一日四回の十日間公演は、二人の熱演もあり、お客さんには評判が良かったようだ。何度も観ている常連さんは、里見瑤子が酒を呑むシーンで本物の酒を舞台に出したり(こういうノリが嬉しい)、見得を切るところで掛け声をかけたり、大いに芝居を盛り上げてくれた。これぞライブの楽しさ! ストリップ劇場のお客さんの優しさに心を打たれる公演となった。

このときは芝居の二人以外にも日替わりで女優が出演。各自が一人芝居、歌、観客参加型キャットファイトショーなど、それぞれの特技を活かしたステージを披露してくれた。MCと称した久保新二と私の漫才は、日に日に伸びて20分の長尺に。寄席に出ている漫才師よりも長い(笑)。この興行にはもちろん踊り子の皆さんも出演していたが、そのステージや楽屋生活に憧れて、その後踊り子に転身した女優もいた。

ストリッパー・鏡乃有栖の誕生である。

……続く

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続きは、本編完全版は販売誌にて掲載いたしましまので、よろしくお願いします。

※本文のコピー、掲載写真の転用や利用は固くお断り申し上げます。

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