グランドセントラル駅の7ドルの奇跡
マンハッタンの真ん中にあるグランドセントラル駅
荘厳な美しい佇まいで知られるターミナル駅
週末、郊外に行く用事があったので
朝早く久しぶりにその美しい駅に向かい
幸い予定よりも早く着いたので
しばらくその荘厳な駅の佇まいに見とれつつ
郊外に向かう電車のチケットを買いに
券売機が並ぶエリアに行ったら
ホームレスと見える小柄なおじさんが
背中を丸めてウロウロしていました。
そのとき現金を持っていなかったので、
少し心がチクリと痛みながらも
そのままチケットエリアを後にして
駅の反対側のカフェにコーヒーと私の好きな
チョコレートクロワッサンを買いに行って
郊外に向かう電車のホームに向かおうとしたところ
そこにも同じカフェがあったことに気が付き
それと同時に、つい先ほど見かけたホームレスの
おじさんが今度はカフェに並ぶ人の列のそばを
ウロウロしていることに気が付きました。
私は良かったと思い、おじさんに近づき
買ったばかりのクロワッサンの袋を差し出して、
「Do you like chocolate croissant? 」
(チョコクロワッサンだけど食べる?)
と聞くと、おじさんは私を見て黙って頷き
私が差し出したバッグを受け取りました。
お腹が空いていたと見えて、すぐクロワッサンを袋から出して
ムシャムシャという感じで食べ始めたので
私は手に持っていたコーヒーも差し出して
「まだ口をつけていないの、飲む?」と聞くと
「砂糖は入ってるか?」と聞かれ
私が頷くと同時にコーヒーも受け取りました。
その後、幸い、まだ時間に余裕があったので、
同じカフェのちょっと長めの人の列に加わり、
さっき買ったのと同じコーヒーとチョコクロワッサンを
頼んでカードで支払いをしようとした時、
前に並んでいて支払いを済ませた女性が、
「I got you. (私が払うわ。)」
と言って私を見て、手に持っていた1ドル札の束から手際よく
7ドルを数えてレジの人に差し出しました。
ただ私の前に並んでいただけの見ず知らずの
女性を今度は私がびっくりして見ました。
褐色の肌の大きな目の綺麗なその女性は
スカーフを頭に巻いていて私より若く見えました。
私が驚いて、大丈夫、払うわよ、というのを制して、
彼女はもう一度、こう言いました。
I got you. You were good for him.
(私が払うわ。あなたさっきいいことしたでしょう。)
さっと1ドル7枚を数えてレジの人に渡して、
私を見て頷くと、駅の人ごみの中に消えていきました。
私はあっという間の出来事に驚いたまま
その女性が支払ってくれたコーヒーとクロワッサンの
入った袋を手に、電車のホームに向かい歩いていくと
さっきのおじさんが電車のホームの近くで
(美味しかったよ)と言わんばかりの笑顔でこちらを見て
手を振ってくれました。
私も親指を立てて、(それなら良かった)と笑顔を返して、
電車に乗り、席に座りましたが、
10分程の間に起こったことと、おじさんの笑顔と、
何のためらいもなくサッと7ドルをレジに差し出した
彼女のまっすぐな目を思い出すと、
理由も分からず目頭が熱くなり、涙がこぼれ
切符をチェックにきた駅員さんが怪訝に思うほど。
幸せな気持ちの循環は金額の大きさに関わらず
同じだけの温かさを心にもたらしてくれることを
体感させてくれた10分間の奇跡に心が熱くなり
目の前の一人の人を幸せにするということの意味を
あらためて感じた朝でした。
まっすぐに私を見て行動してくれた彼女の大きな瞳と
おじさんの嬉しそうな笑顔を、この先ずっと
忘れることはないだろうと思った一日でした。
なんだ、そんなことと思われる人もいるかもしれません。
きっと宝物のような奇跡は日々のいろんなところにあって
自分が気が付く余裕を持っているかどうか次第なんだと
感じる出来事でした。
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