Angelus(アンジェラス) ー3ー
流れるような木目が印象的なウォールナットの玄関ドアを開けると、三人の母親たちが玄関ホールに置かれたランタンの椅子にかけていた。息を切らしている美和子に、ドイツ人の夫の姓で「ホフマンさん」と呼ばれている、つややかな黒髪の母親が言った。
「大丈夫。先ほど少し遅くなると、お母さん先生がおっしゃっていました」
自宅から山へ上がる道で、事故渋滞に巻き込まれ、美和子は開始時間ギリギリに到着した。ほかの母親たちは、帰宅せず近くのカフェで時間をつぶし、余裕をもって来てしていた。美和子は