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Jackie my love

私には3人の人間の子どもがいる。我ながら上手いことに若さもあってか勢いで二歳間隔で産めたので、その後の七五三を一緒にお祝いできる年が一回だけ訪れた。その時がきたら近くの温泉にでも行こうと貯金を細々としていたけれど、旦那の仕事が鬼のように忙しくて連休なんてとても取れるような雰囲気はなかった。でも何か思い出になるモノ(コト)が欲しかった。

旅行に行けないと決まってガックリ来て、さてザリガニと亀の餌を買いにでも行こうかと、新しくできたペットショップへ子どもたちと買い物ついでに立ち寄った。その日は夕刻でも店は珍しく空いていて、子どもたちもふれあい動物園のように色々な生き物を目にして生き生きしていた。

そこで、運命の子と出会ってしまったのだ。

当時はペットブームの走りで、ダックス、チワワ、ヨーキーなんかがショーケースに並んでいた。可愛いなぁ、そういえばシーズーもいたっけな。口をあんぐり開けてショーケースをぐるぐる見て回っていた。

そこにJackieはいたのだ。
ウェスティ、女の子。小さ目な子。
お口はアンダー。脚はパテラ。

ウェスティ、実はその存在すら知らなかった。その時初めてウエストハイランドホワイトテリアという犬に出会ったということだ。長くて難しくて一度では覚えられないちょっと堅苦しい感じ。

でもガラス越しに一目惚れしてしまったのだ。

私が子どもの頃、初めて迎えたマルチーズのJimmyに雰囲気はとても似ていたけれど、彼は垂れ耳でこの子は立ち耳。手のひらに収まるくらいの小さな小さな天使だった。ガラス越しに勝手にJackieと名前をつけて心で呼んでいた。多分、彼女もうちに来ることになると感じていたはず。

私は旦那に何も相談せずに契約をしてきた。心躍った。もう名前は決めて来たし、あとは迎え入れる家の準備をしなくちゃと環境を整えた。
後から犬を買ったなんていう事後報告された旦那は、呆れてしばらく口を開いてくれなかった。家族が急に増えるんだもの、今となっては当たり前の話だ。それとこれは後から聞いてわかったことだけど、私は小さな頃から動物と触れ合って生きてきた経験があったけれど、彼にはちょっとしたトラウマみたいなものがあったのだ。

旦那の少年時代、外飼いしていたシェパード(義父が何処かからもらって来たらしい)が野良犬に子どもを孕まされてしまって、保健所に連れて行かれたことがあったと。子ども心に相当しんどかったんだろうなぁ。それからずっと犬(や猫)を飼うということを躊躇してきたらしい。私が犬が欲しいと言っても首を縦に振ることは一度もなかった。そのシェパードがどうして保健所に行くことになってしまったのかなんて細かいことはわからないけれど、少年だった旦那の心は深く傷ついたようだ。そりゃ、もう二度と同じ思いはしたくないはず。

そんな旦那の為にも、この子をしっかりと育て上げなければ!と意気込んだものの、後になって気づいたのは私たち家族がものすごく彼女に育ててもらったということだ。
まさか愛犬にnannyになってもらうとは、その時に気づくこともなかったんだよな。笑っちゃうけど。



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