NTLイヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出「橋からの眺め」

90年代にデニーロがスコセッシによる映画化を切望してた記憶。マークス・ストロング怪演の本公演を見ると、なるほどこの思い込みの激しい男をデニーロが演じたくなるのはわかるなあ、と思った。あの偏執狂演技が目に浮かんで仕方なかった。

同じ家に暮らす姪をきわどく愛するおっさんの自滅。ドメスティックで気色悪い話ではあるけれど、終幕で語り部の弁護士が言うように、彼は純粋さを晒け出しただけなのかもしれない。血の雨が降るクライマックスに、ギリシャ悲劇より文楽の凄惨さを思ったのは、箱庭的ミニマムセットの故かなあ。

しかしアーサー・ミラー、途轍もなく器の大きな人だな…。アメリカ現代社会と歴史を見渡し「ここだ」って場所に国の歪みを鋭く見つけては深く食い込んで劇化、人間の本性を暴き切るまでギリギリ容赦無く追い込んでいく。ラッパーみたく自身の私生活をネタにしたりもする。劇作家かくあるべしって事か。

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