見出し画像

養魚秘録『海を拓く安戸池』(3)~手はじめの頃~

野網 和三郎 著

〈注意事項〉
・文章、写真の説明文(キャプション)などは明らかな誤字脱字を除き、原文の通りとしております。ただし、著者略歴については、西暦を加筆、死去された年に関する記述を追加しました。
・敬称は原文に即して省略させていただきました。
・現在では差別的表現として、みなと新聞で使用していない表現についても、原文の表記をそのまま記載しております。あらかじめご了承ください。
・本書原本の貸与や販売は在庫がないため行っておりません。ご了承ください。

(3)~手はじめの頃~

 年間一八〇〇円也、月割にして一五〇円の賃借料はとてつもない高額であったことは、世がまさに不況のどん底であっただけに世間を驚かせたのであった。専門の人も入れず何の経験も持たず何をしでかそうとしているのか!、物好きとも馬鹿とも蔭口され十年はおろか、ものの三年も持てば逆立ち歩きをしてやるとまで其処此処で言われていたのである。

ここから先は

1,604字 / 1画像
この記事のみ ¥ 250