第48回往復書簡 おやつ、16時
石田千 → 牧野伊三夫さんへ
この半月、あれよと日がすぎた。
眼の不調から、脳神経科、そこから大学病院に。来月から、検査と治療がはじまる。すぐに、専門のお医者さんに診てもらえて、ほんとうにありがたいことでした。
見つかった病気は、眼とは関係ないとのことだった。それでも、処方していただいた薬を飲みはじめたら、不調を感じない日もある。ひとりの人体、どこかなにかで、連絡しているのかもしれない。
脳神経科で完治しない見たてときいて、死ぬのかと思い、すぐにふたつ。
さいしょは、お母さんに会いたい。
もうひとつは、傷つけた友だちに、あやまりたい。
その日のうち、どちらにも電話をした。
母とは、長く話せた。友だちには、つながらなかった。
ふつかたって、大学病院で、治らないけど、すぐにどうこうなる状態ではないとわかった。
母に、また電話をした。友だちには、またかけてみる。
帰り道、お肉屋さんによった。ロース肉、ころんとひとくちぶん。とりもも、半分。このお店で、その日さいごのお肉を買うのを、楽しみにしている。ひとくちぶんのロースは、八角としょうがで煮た。奄美の黒糖もいれた。友人が、ミロコちゃんの展覧会をみて、すばらしかったとメールをくれた。焼酎をいれたかったけど、ないのでおさけをいれた。
病気だけど、禁酒はしなくてよくて、これも助かった。
とろける煮豚と、しろめしを食べながら、友だちを思う。
いつか、声がきけるかな。
願う時間があって、よかった。
あしたには新米いくよと電話あり 金町
(10月16日金曜日)
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