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第166回往復書簡 ひなた、12時42分

石田千 →  牧野伊三夫さんへ

 牧野さんのお便り、唐仁原さんとHBギャラリーを拝読して、たのしい時間を思っていました。
 唐仁原さんにはじめてお会いできたのは、牧野さんの展示にうかがえたからでした。HBギャラリーにはうかがっていたのですが、唐仁原さんが主宰されていることも、知りました。審査のきびしいギャラリーと、きいていました。
 唐仁原さんに、かけ出しのころ、『店じまい』という本の装丁、装画を手がけていただきました。
ウェブサイトでの連載が、本になることになって、打ち合わせというとき。
 じつは、装画の希望をきかれたら、牧野さんにお願いしたい。そのつもりで、かばんに、四月と十月、牧野さんのお仕事を集めて、出かけました。けれど、担当していただいたベテランの編集者さんは、すでに装丁、装画は決めてあります。それは、唐仁原さん。もちろん、喜んでお願いしたいですといいました。
 そのときは、牧野さんと面識もなく、牧野さんと唐仁原さんのご縁も知らず。そうして、ずっとのち、牧野さんにお会いできたら、唐仁原さんにお目にかかることができた。『店じまい』では、たいへんお世話になりました。ようやく御礼をお伝えできました。あの晩は、ほんとうにうれしかった。
 HBギャラリーでの展示、区切りとのこと。牧野さんは、あたらしい場所にむかおうとなさっているのではないかと思います。
 月金帳は、もうすぐ3年になります。ひんぱんなやりとりは、牧野さんが進まれる道のおじゃまになるのではと、案じています。ひきとめては、いけないと思います。
 石のうえにも3年。3月に飛行機のきっぷを予約しました。その日を考えると身動きができなくなるほどこわい。けれど、やっと、母に会いにいきます。  
 牧野さんのご負担のないように、それがいちばんいいことと思います。

  冬の石3年たてばひなた見て    金町
  (2月3日金曜日)
  

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