第191回往復書簡 にわか雨
牧野伊三夫 → 石田千さんへ
仕事が一段落したので、昼酒でも飲もうと家族を連れて家を出たが、行先は決まっていない。こういうとき、上野か御徒町あたりの、もつ焼き屋かそばやへ行きたいと思うが、ちょっと遠い。ひとまず中央線に乗って都心に向かっていたが、電車が向かっている練馬から新宿方面の空に黒い雨雲がたち込めていて、そのうち稲妻の閃光がはしった。にわか雨の予報は知っていたが、これはなかなかひどい雨になりそうだ。引き返すか、、、。しかしもう、ずぶぬれになってもかまわない、どこかで酒をみにたいという気分にである。雨を眺めての酒も悪くない。吉祥寺で下車して小雨のなかを走って伊勢屋へ行ってみる。ところが、なんと店休日。こうなったら西荻の戎だ、と思ったが、また電車に乗るのは面倒だ。どこでもかまわない、吉祥寺で飲もうと店を探していたら、そのうちに、どしゃ降りの雨になって、雨宿り。
雨が通り過ぎて、雨雲の間に太陽が顔を出して蝉が鳴きはじめる。また歩いているうちに、前にいった喜久鮨へ行ってみることにする。息子はにぎり、妻はちらし、僕は、つめたいキリンのラガーを注文して、ゲソをきってもらう。そのあと、シンコを肴に菊正宗の熱燗を飲んでいると、とまらなくなって、お銚子が七本ばかり空く。仕上げに、イクラを一貫。
鮨屋を出て、どこかでコーヒーでも飲んで帰ろうと、ゆりあぺむぺるへ。なんだか、香ばしいものが欲しくなって、チキンホットサンドをたのみ、また、ビールを飲んだ。
(8月2日水曜日)
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