第129回往復書簡 函館東京ピアノと絵の通信
牧野伊三夫 → 石田千さんへ
博多はこしまでの個展の搬入を終え、一昨日、東京に戻った。福岡での初めての個展で、中学時代の美術の田尻先生から葉書をいただいたり、高校時代の井上先生が来て絵を買ってくださったり、郷里の温かみに涙する個展であった。小学一年生のとき競って漫画を模倣していた松原も来てくれた。こいつとはもう五十二年の付き合いだが、会って酒を飲むと小学一年のときのまま、互いにニヤニヤしていたずら小僧のようになる。筥崎宮の屋台居酒屋、花山での宴会にも来てくれて、シーラカンスのような友人がいるのだとみんなに紹介して挨拶をしてもらおうかと思ったが、ふとそのシャイな横顔を見て、悪い気がしてやめる。
ハルカナカムラ君と「函館東京ピアノと絵の通信」というやりとりを始めた。夏に、瀬戸内の海辺の町に合宿して、彼が曲を作り、僕が絵を描く。そのための序章。
(5月10日火曜日)
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