第193回往復書簡
牧野伊三夫 → 石田千さんへ
美術同人誌『四月と十月』の表紙の絵を内藤君に渡す。郷里の小倉の山を、小倉の土と灰で描いた絵だ。表紙は毎号同人が当番で担当することになっているが、現在同人数は三十六名、年に二回発行なので、十六年に一度しかまわってこない。順番がまわってきたら、おおいに自由に描こうと思っていた。しかし、いざ当番になると、自分は発行人だというつまらない責任感に心をとらわれ、そのことから逃れるのにずいぶん苦しんだ。絵に責任感など、いらないというのに。
(8月23日水曜日)
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