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第112回往復書簡 さよなら、よろしく、15時。

石田千 →  牧野伊三夫さんへ

 2022年、ことしもよろしくお願い申し上げます。
 大晦日に、洗濯機のかくさんの、水の出が悪くなった。ホースをつけなおしたら、元にもどって、紅白歌合戦をききながら、浴室に干した。大晦日は、野村訓市さんのラジオが11時まであったので、紅白歌合戦は、石川さゆりさんのところからきいた。
 そうして、迎えた元旦。洗い初め、かくさん、よろしくおねがいします。スイッチを入れたら、やっぱり水がちょろちょろとしか、出ない。きょうは、ホースをなおしても、説明書きをみて、洗濯機の水栓フィルターをあらっても、まったく改善しない。洗濯は、あきらめた。ホースが、だめなのかなあ。通販で、ホースが翌日届くのを待つことにした。
 新年2日に、届けていただき、ほんとうにありがたかった。けれども、ホースをとりかえても、なおらない。これは、一大事になる。からだが震えた。
 管理会社に連絡をすると、明日、水回り修理のかたが来てくださるとのこと。
 新年にお騒がせして申し訳ありません。あやまると、こちらこそご不便をおかけして申し訳ありませんとお返事されて、恐縮してしまった。
 2年ぶりの来客。明日を待つのは、おそろしいことだった。かくさんのまわりにあるものを、すべて移動させて、備えた。そして、万が一、水回りではないことも考えられる。インターネットで、洗濯機をあれこれ見ておく。
 翌日、朝いちばんに、担当のかたがきてくださった。あれこれ、30分、水道と格闘してくださったけれど、異常はないとのこと。ああ、かくさん。とうとう。背骨が揺らいだ。
 きのう下見したもののなかから、いちばんはやく届くものを注文した。6日まで、大きなものは、洗えないので、ビニール袋につめていく。ちいさなものは、手洗いして干す。新年から、部屋にいながら、旅さきのような生活となった。6日までには、外出もした。ビニール袋の洗濯ものは、どんどん、たまっていった。
 そうして、ようやく6日。前日は大雪で、道路を心配したけれど、届けてくださった。背の高い、若いかたがふたり、せまいところの据えつけで、たいへんそうだった。せーの。ふたりで、動かなくなったかくさんを持ちあげ、通路に出す。
 前の晩まで、いままでありがとうね。まえのアパートから、いっしょにがんばってきたね。さびしくなる。声をかけていた。けれども、運び出されるときは、てんてこまいで、なんにも言わずに別れてしまった。運びだされていくかくさんも、もう魂の抜けたものになっていた。
 届いた新品は、いままでとおなじ5キロのサイズ。それでも、ひとまわりちいさい。洗う音が、静かで、動きをいろいろ切りかえて洗ってくれる。かくさんよりも、色がやわらかく、白というよりアイボリーなので、あいさんと呼ぶことにした。あいさん、よろしくお願いします。
 いらい、せっせと朝昼晩、洗濯をして干して、ようやく去年のシーツを洗い終えたところです。
 とちゅうになっている、へんてこクリスマスは、来月に、へんてこバレンタインへとつづきます。よっちゃんと大ちゃんも、へんてこな年末年始を過ごしているみたいです。

  元旦に別れ初めあり寅のとし  金町

 (1月14日金曜日)

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