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第233回往復書簡 還暦、7月4日

石田千 →  牧野伊三夫さんへ

 牧野伊三夫さん、還暦のお祝いを申し上げます。
 60年まえ、7月に臨月をむかえられたお母さまは、暑さを乗り越え、辰年うまれの男の子をご出産されたのですね。
 ご家族で、お祝いをなさいましたか。交友のひろい、牧野さん。お誘いも、たくさんなのかもしれませんね。還暦のあかい装束、きっとお似合いになられますね。
 夏がお好きな牧野さんですが、くれぐれも、おからだ大切になさってください。
 雲のうえのお仕事にお誘いいただいていらい、ことあるごとに、気にかけていただき、たくさんのお仕事をご一緒させていただくようになりました。
 そうして、月金帳。わたしにとって、いちばんたいせつな、ありがたいやりとりです。
 以前、林芙美子が、川端康成に宛てた手紙を読んだことがあります。じしんの弱さをかくさず、とても素直な手紙でした。川端康成とことばをかわせることを、こころの支えとして、書いていたことが、よくよくわかりました。
 月金帳を書くとき、たびたびその手紙を思います。牧野さんに、上野さんに、読んでくださるみなさまに、支えていただいて、なんとか日を過ごし、ペンを持っています。
 東京ではまだききませんが、遠出の仕事さきで、ひぐらしをききました。まだかぼそく、なまあたたかい風に溶けて、流れていきました。
 これから、ますます暑くなります。
 牧野さん、ますます、ごじしんの望むとおりのお仕事に没頭できますように。
 こころより、お祝いと、御礼を申し上げます。

  蝉うたう還暦めでたや牧野さん    金町
  (8月23日金曜日)

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