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第222回往復書簡 さくら、8時14分

石田千 →  牧野伊三夫さんへ

 あたらしい時間割での生活。週に3日、2時半に起きます。
 掃除、洗たく。家に帰ったら、お風呂にはいって寝るだけにして、かんたんな朝食をすませて、7時半に家を出ます。
 いくつも電車を乗りついで、最寄りの駅につくのは、9時半ごろ。第1週は、長い道中、ずっとお花見をしていました。
 お寺さん、小学校、公園。団地には、並木。畑には、大木がいっぽん。
そうして、つぎのつぎ。駅をたしかめると、ホームに若い、細い桜がありました。
 どんなに頼りない若い木も、全力で満開、たくさんの花を咲かせていました。桜は、一輪咲いておしまいとはいかない。それぞれに満開の使命を負っている。圧倒されたり、励まされたり、こころ奪われるのは、その全力ゆえかもしれません。
 ゆりさんが、きのう、ぼちぼち始動してねとメールをくれました。
 駅を出て、桜をみつけながら坂をのぼれば、燕がやわらかに飛んでいます。いつのまにか、松田聖子さんの、チェリーブロッサムを歌っています。マスクで、息切れしながら、でも、歌詞はちゃんと覚えていた。
 ぼちぼち、歌って、初日に向かいました。

  月曜日どこもかしこも春となり  金町
  (4月26日金曜日)

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