第209回往復書簡
牧野伊三夫 → 石田千さんへ
年明け三日、小倉の鳥町食道街が火事で焼けた。
ここにはかつて、赤ちゃん食堂があって、ハンバーク定食とチャンポンがうまかった。このごろは、耕治のチャーハンと中華そば、川淀の鰻を食べに行くのがたのしみだった。戦後の風情をそのまま残す材木を組んだこの小路の天井が好きで、僕はそれを見るためだけに、ここをよく歩いた。そこがなんといま、ブルーシートで覆われ、警官に見守られている。
小倉のアトリエにて
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