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第185回往復書簡 アスパラガス

牧野伊三夫 →  石田千さんへ

 アスパラガスを穂と茎とに分けて考えたことがこれまでなかった、、、。
僕は硬めに茹でて,もさもさした穂とぽりぽりした茎にたっぷりマヨネーズをつけて交互に食べるのが好きかな。卵と相性がいいのかな、トルティーリャもおいしい。フードプロセッサーで豆乳と一緒にスープにするのもおいしいなぁ。だけどあれはなにか、お風呂に入りたての人に肌に嚙みついたときのような香りがして、本当においしいと思っているのかとときどき思うことがある。
 先月二つの個展の忙しさからようやく解放されて、画廊の人たちと甲府に遊びに行ってきた。朝から温泉公衆浴場へ行き、明るいうちから飲んでまわるだけの、そんな旅。太宰治ゆかりの喜久乃湯、うまい葡萄酒のある豊鮨、昭和歌謡の流れる老舗のくさ笛、特急で一時間半の山の向こうの楽天地。武田信玄が作ったという堰も見にいって、いつだったか千さんが書いた堤をつくった昔の女性のことを唄った民謡を思い出していた。
 (6月26日月曜日)

信玄堤のふたり

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