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第190回往復書簡 あおいスカート、14時

 石田千 → 牧野伊三夫さんへ 

 うれしいことがありました。
 ギャザースカートをはいて、外出しました。
 だいすきで、10年以上はいていた、あおいチェックのスカート。ふんわりしているから、あちこちに触れるのがこわくて、3度の夏、あきらめました。
 春さきに、ジーンズがはけるようになったと書きましたが、そののちも、こわくて着られない服が、たくさん眠っています。
 遠出の仕事が再開して、世のなかにすこしずつ戻っている。朝夕、ラッシュの電車は、ビニール手袋をして、身を縮めています。椅子には座れず、立っています。帽子を脱げない、外出先で、スマートフォンを使えない。まだまだ、克服するもの山積です。
 しゃがめば地面についてしまうロングスカートをはける日は、素足にサンダル、そして、浴衣に下駄で河内音頭の櫓をまわれる日はくるのかなあ。考えると悲しくなる。だけど、きょうは、だいすきなスカートで、出かけた。このスカート、左右にポケットがついていて、ほんとうによかった。消毒のあれこれを入れて、出かけました。
 薬局にいったら、いつも応対してくださるかたが、すてきなズボンをはいていらした。すてきですねといったら、おかえしに、きょうはいつもと雰囲気がちがいますね。さわやかですね。なによりの励ましをいただいた。
 スソアキコさんが作ってくださった水いろの帽子は、どんなに風の強い日も、飛ばされたりしない。首には、ひんやりシートを貼って、牧野さんのあおい手ぬぐいを巻いている。上着はいつものグレーのジャージ。そうして、あおいスカート。好きな服を着るのは、こんなにうれしかったんだ。暑さも、買い出しの重さも、帰ってからの除菌作業もへっちゃらだった。
 さいきんは、除菌は趣味なんだと思うようにしている。ほかのひとがやっていないことを、好んで熱心にやっているのだから、趣味と思えばいい。そうしたら、気楽になって、へまが減った。まえより早く、完了するようになった。
 牧野さん、上野さん。お仕事がひと段落されたら、ランチョンで、ランチのビールをのみましょう。そのときは、ふんわり、あおいスカートで出かけます。

  ありがとうスソさんお手製夏帽子   金町
  (7月28日金曜日)

 

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