第240回往復書簡 のとのわ
牧野伊三夫 → 石田千さんへ
富山の荒井江里さんが、能登の支援プロジェクトを立ち上げた。三連休の日曜日、富山にある彼女のカフェの庭で似顔絵屋をやって、僕もその輪に加わった。いつもよりずいぶん高い料金にしたにもかかわらず地元富山の人たちが十一人、描いてもらいにやってきて、富山の人たちの心に触れた一日だった。カフェでは、はるばる北海道からやってきたパティシエの前田久子さんがアップルパイやドーナツを焼いたり、ランチをつくったりして終日、行列だった。絵のモデルをしたり、おいしいものを食べてもらったりして、支援をするという催し。
翌日、江里ちゃんと久子さんは、早起きをして、寸断された道路を迂回しながら片道六時間もかけて、能登の湯宿「坂本」へ売り上げのお金を届けに行く。到着すると、なんとか購入し、免許をとったユンボで大水で流れた土砂を取り除いていたらしい。
僕は、久子さんが焼いたアップルパイを土産に持ち帰り、ウィスキーをのみながら食べたのだが、アップルパイってこんなにうまかったのかと思うほどうまい。ひと仕事終えた充実感もあって、ついつい飲みすぎた。
(10月16日水曜日)