第197回往復書簡 日田
牧野伊三夫 → 石田千さんへ
九月十六日、日田で第一回ヤブクグリの日。万貴ちゃんバスガイドの林業ツアー、ヤブクグリ役員総会、「みどり」の演奏会、それに寶屋の新作弁当「三隈川いかだすし」の発売開始を無事に終える。翌十七日は、別府温泉でひと休み。久しぶりに別府冷麺を食べ、山田別荘に泊まった。もうずいぶん前のことだが、九重高原で隔てられた日田と別府を千さん、音曲師の柳家小春と旅したことがあった。千さんは、旅のなかで、それぞれの町を舞台にした即興小説を書いて、それぞれの町で朗読した。「べっぴんさん」「日なたのふたり」。朗読を聞いて泣く人もいたな。
十八日から日田にもどって三日間、市観光協会の黒木君とあかね書房の榎君と三人で林業関係者を取材。子供たちに向けてヤブクグリの本を書くためだ。カネサダ横尾木工所、マルマタ林業、田島山業、マルサク佐藤製材、九州木材市場へ行って話を聞く。絵を描こうとスケッチブックを持参していたが、いずれも話を聞くだけで終わってしまい、後日あらためて絵を描きに行くことを伝えて帰る。この三日で取材を終えられると思っていた榎君が、隣で顔を曇らせていた。しかたがないよ。
初日の夜、演奏旅行中のハルカ君が日田に立ち寄ってくれ、リベルテの原君ほか、次々と人がやってきて、いつしか大宴会になっていた。日田では、なぜかいつもこうなる。
帰る日もまた、電車の時間まで三人でビールをのもうと寶屋へ行くと、そこへ偶然、原君がおひるを食べにやってきた。それで、原君は車で帰るのをあきらめ、僕も電車を遅らせてもう一泊するかと算段しながら、のみつづけることになった。映画館は大丈夫だったろうか。
(9月28日木曜日)
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