オンボロバイクでパミールへ②【旅編】
タジキスタン北部の古物市で中古のバイクを買って旅した日の話です。購入編はこちら
翌朝、宿のオーナーに見送られ、私達のバイク旅が開始した
Kujand郊外に出ると、景色は一変し、青草の広がる農地に出た
ここ一帯は肥沃なフェルガナ盆地に位置し、中央アジアの食生活を支えている
ロバと馬と車がたまに通るだけののどかな道を走っていると、シャシリクの香ばしい香りがどこからか漂ってきた
「お腹すいたね…もしかして、レストランかな?」
小さな看板を見つけたので脇道に入り、匂いの元を辿ると、民家に辿り着いた
「なんだ、家か…」
と、そこを後にしようとしたその時、中からタジク帽を被ったおじさんが出てきた
「どこから来たんだ?何してるんだ?」
と質問攻めにあい、そのまま中に招かれると、そこはチャイハナだった
木陰にタプチャンが立ち並び、タジク帽のおじさんたちが胡座をかいてトランプをしていた
15人ぐらいだろうか…中には寝そべっている人もいる
どうやら、地元の人たちの集いの場のようだ
好奇の目に晒されながらもタプチャンに座り、シャシリクを2本オーダーした
すると、次から次へと頼んでもいないスイカやメロン、数種類の肉と飲み物が運ばれてきた
戸惑って見渡すと、みんな大丈夫と言う
結局、誰が支払ってくれたのかも分からないまま、ペコペコしながら知ってる限りの感謝の言葉を連呼して、そこを後にした
ちなみに、Citi ace2はとても人気だった
おじさんや子供達はみんな跨いでみたりしてはしゃいでいた
そして、ここが人生で一番美味しいシャシリクだったと思う
厚切りの牛肉だったが、酢に漬けたのかとても柔らかくジューシーだった
行く人は現れないと思うけど、場所を共有しておきます
のろのろと時速40kmで進み続けると、景色は農村風景からタジキスタンの北部の豪勢な町並みに変わった
中心街の一区画だけが派手で、一際目を引くのは政府関係者の写真だ
政府関係者のほとんどは北部出身だと耳にしたことがある
タジキスタンは地域間で格差が大きく、税金の多くは富裕層の多いKhujandのあるソグド州やDushanbeで使われているという
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この辺りから雲行きが怪しくなってきた
ぽつぽつから始まり、雨が本降りになったところで、手足は寒さで悴み、商店で雨宿りさせてもらうことにした
雨宿りしていると、客だったおじさんに家に招かれた
「そのままじゃ濡れるから、お茶していきなよ」
これまでイスラム圏を旅して来た経験から「お茶」は「お茶で済まない」事ぐらい分かっていた
失礼を承知で断るも、やはり断り切れずおじさんに着いていくことに
すると、チャイに続いてお盆山盛りのプロフが出てきた
3時間前に詰め込むように食べた大量の肉も果物もまだ消化できていない
しかし、食べないのも失礼だからと、少しずつ押し込んだ
おじさんは中国から衣料品を輸入しているという
おじさんのファッションショーを楽しんだところで雨が止み、家を後にすることにした
ここで学んだのが、タジキスタンでチャイに招かれると、最終的に泊まっていくよう促されるということだった
「チャイ」=「食事+宿泊」
これを覚えておかないと、後々旅程が崩壊することになるから気を付けよう
この時既に9月中旬だったこともあり、なるべく早く山に行きたい気持ちもあった
説得力は全然ないが、時速40kmですごく急いでいたのだ
おじさんの自宅を後にした頃には、陽はすでに暮かけていた
そろそろ郊外でテントを張る場所を探さなければ…
なかなか見つけられずにいると、また雨が降り出した
贅沢を言えるほど選択肢がなかったので、誰かの畑の隣にテントを張った
この日はありがたいことに腹12分目だったため、夕飯を食べずそのまま眠りについた
多分21時頃だったと思う
懐中電灯の光で目覚めた
外は土砂降りだ
懐中電灯は明らかに私達のテントを照らしている
怒られると思いドアを開けると、おじさんが4人立っていた
「どこから来たんだ?何してるんだ?」
挨拶代わりの質問攻めに遭い
「寒いからうちに泊まっていけ」
と提案された
ずぶ濡れだった私達は着替えても凍えていたため、ありがたく泊めてもらうことにした
私はおじさん達の車に乗り、彼はバイクで着いてきた
15分ほど走った先の村に辿り着いた
凍え死にそうな私達の元に、なんと炬燵が用意された
奥さんが炭を用意し、足元に入れてくれた
炬燵文化、イランの北部でも見かけたが、タジキスタン(しかも北部)で見かけるとは!
感激しつつおじさん達の顔を見ると、赤ら顔だった
やたら愉快だと思っていたが、おじさん達は酔っ払って私達を拾ってくれたんだね、ありがとう
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翌朝、おじさんたちは村を案内してくれた
バザールから村長さんの家、おじさんの親戚の家を次々と訪ね、ロバに乗ったり、くるみを拾ったりした
生のくるみは、メープルシロップのような味がする
私を乗せて村を歩き回ってくれたロバ
おじさんの実家は緑が多く気持ちよかった
お返しをしようと、町に行ったついでにレストランに行くと、次々と見知らぬおじさんがタダ飯を食べにやってきた
いや、タダ飯を食べさせてもらってばかりなのはこちらなのだ、これまでもこれからも
彼らと別れを告げ、更に進んだ
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岩肌が剥き出しの山を抜け、4km以上一切照明のない真っ暗なトンネルを越えると、Ayniという大きい町に出た
途中休憩した小さな村でもCiti Ace2は大人気
とくにヘルメットは珍しいのか、子供達は被ってみては写真を撮っていた
KujandからAyniまで2日で175km
時速10kmぐらいに落ちてしまうほどの登り坂も多かったが、なんとかここまで辿り着くことができた
今度は本当に町だから、ホテルがあった
明日にはFann mountainの拠点地には辿り着くだろうから、今夜は休んで山に備えよう
つづきはこちら
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