温泉むすめの展開等についての考察

はじめに

 元からたまの休みの日に温泉に行くことがあったりする程度には温泉好きなのだが、ちょっと前に SNS 上で難癖を付けられたことから「温泉むすめ」を知り、調べたり応援の一環としてゆるく楽しんでいくにつれて、これが実はなかなか興味深いのではと思ったので乱文ながらもちょっとまとめてみた。

一風変わったキャラクター先行の地域PR

 地域をPRするキャラクターは、「現地で生まれ、現地が主導する」ことが多い。もしくは漫画や小説など、本来現地をPRする目的ではないが、作者が生まれた育った地元や、作中のモデルとなった舞台の様に後付けでPRに用いられるといった物がある。

 温泉むすめでは地域をPRするという目的が最初からあるものの、現地でキャラクターが生まれるのではなく、また現地が主導すらしていない(※初期の頃は特にそうみたいで、今は現地からの意見・要望も反映されやすくなっていると思われる)。どちらかと言えば、漫画の世界のキャラクターに近い「作品の中で生まれているキャラクター」である。

 しかし、各キャラクターの名前には実際の温泉地の名前が直接使われており、どこの温泉をモチーフにしているのか明言されている。更には漫画作品のアニメ化等でよく注目されるキャラクターの「声」も既に決定しており、サンプルボイスまで収録済みで公式サイトで聞くことが出来るといった用意の周到さである。

 このキャラクター設定が何よりも先行するというスタイルはハズレた場合のリスクはあるものの、いくつかのメリットもあるのではと感じている。

メリットとして

・キャラクターのデザインについてイラストレーターの選定をしなくても良く、作家にデザイン作成の依頼や交渉をしなくても良い。

・声について選定をしなくても良く、声優さんや事務所に依頼したり交渉、収録の立会等もしなくても良い

・上記キャラクターデザインや声について、現地の人が漫画やアニメといったサブカルチャーに詳しくなく、例え全く知らないとしても特に問題にならない

・各キャラクターの監修などが集中管理されているので、コンテンツとして世界観が統一され、全国規模で繋がりを持てる

デメリットとしては

・現地の人が考える地域の魅力や歴史、キャラクターとイメージのズレがあった場合に扱いがやや難しくなることも考えられる。

 つまる所、現地の人が組合の会合などでアレコレ話し合いを重ねつつ、手探りでイラストレーターや声優への交渉などをせずともキャラクターが用意されて、地域のPRに活用することが出来る(更にはオマケで全国規模で世界観が統一されている作品の登場キャラクターとして展開出来る)という感じか。

 費用に関しては知らないので本文では言及出来ないが、温泉地の知名度と現地スタッフのノウハウを考えた場合、メリットの方が十分過ぎる程にはあると思う。

地域PRとして「ゆるキャラ」との違いや活動の幅

 本来、地域をPRするキャラクターとしては「ゆるキャラ」と呼ばれるマスコットキャラクターの存在は外せない。

 「ひこにゃん」や「くまモン」といったゆるい見た目の、郷土をアピールするキャラクター達が注目を浴び、そこから次第に各地でキャラクターが生まれ、ゆるキャラグランプリという人気投票に発展したりもした。

ただ、ゆるキャラについて個人的に気になるのは

・各々の地域がPRしたいものがそのままデザインされているので、野菜や果物に顔や手足が付いたキャラクターもいれば、動物キャラクターもいたりして世界観がバラバラで、その地域から出て活動することがやや難しい(知名度が大きければ可能)

・ゆるキャラによってはアクションのしづらいものもあり、PR出来るものに制限がありそう(野菜が自分とは別の食べ物を食べる等のアクションは見た目的に違和感がある)。

そうした点と比較すると、温泉むすめでは神様かつ人間に近い姿なので

・その地域の特産品を飲んだり食べたり(お酒も可能で、時には飲食店や土産物を扱う店員の姿で働いたりも可能)、といったアクションが自然に出来る(人間から見て共感しやすい)。また、温泉以外であってもPR可能かつ既に実績もある

・服装や髪型を変えることで大幅なイメージチェンジも出来る

・好きなものや嫌いなものを途中で変えることが出来る(人間でもよく好みが変わるし、小さい頃に苦手な食べ物が大人になって好きになるとかもザラにある。)

・別の地域に出かけたり、コラボすることも出来る。作品内でも長距離移動の描写が世界観として存在する(神社の鳥居間でのワープ)。

 といった違いがある。なので、本来ゆるキャラが担っていた地域のPRなんかは全然出来てしまうし、なんなら全国で世界観が同じなのでコラボもしやすい(ついでに言うとゆるキャラとすらもコラボ出来る可能性がある)。

「奉納」を始めとするファンから現地に対するアクション

 温泉むすめに参加している温泉地では立ち絵ポップを飾る他に、缶バッジやアクリルキーホルダーといったグッズを購入出来たりもする。

 ...で、変わっているのが「奉納」といって別の温泉地にそのグッズを納めたりする楽しみがあったりする。この楽しみ方は必須ではないが、地元の温泉地からかなり離れた地域のグッズが一同に集められて飾られているのはちょっと不思議な光景ではある。また、飾り方等でも各地の工夫が出てくるので見るだけでも楽しめる仕掛けになっている。人によっては飾られていない種類のグッズを見つけた時に「じゃあ、自分が買ってきて納めようかな」という旅行に出掛けるモチベーションにも繋がるように思うし、中には自分で作成したファンアートなどを奉納している人もいたりする。

 こうしたアクションでファン同士の繋がりが出来ることはもちろん、現地のスタッフさんとも繋がりが出来たりする。この様な B2C ならぬ C2B 、C2C の流れは過去に現地での清掃活動に繋がったこともあるみたい。今現在はコロナ禍もあって大きなイベントは実現しづらいけど、落ち着いたらもう少しこうした流れも増えるのではと思う。

近場の「点」から全国規模の「線」へ

 小学生や中学生の頃に遠足やキャンプ等に参加した人はオリエンテーションに参加したことがあったり、社会人になってからでも商店街のスタンプラリー等に参加したことがある人は多いのではないかと思う。信心深い人であれば、四国八十八か所霊場めぐり(所謂お遍路)なども参加したことがある人もいるかもしれない。

 人間は物事の「関係性」を考えることが出来てそれが「知性」にも繋がっている(「りんごが何故落ちるのか」から重力を知ったように)が、それ以外にも関係性は縁起物やゲン担ぎ、ジンクスにも繋がる要素で人間の行動にも少なからず影響を与えることもある。

 温泉むすめの場合は、2022年3月時点で国内だけでなく台湾(!)含め 123 人(柱)公開されている。なので、他県に観光に行く際に「□□県の○○行くか」⇒「宿泊施設どこにしよう」「宿の近くに温泉無いかな」⇒「温泉むすめに関連してる温泉だったら折角だし見に行こうか」みたいに繋がる可能性がある。

 なので、温泉地が温泉むすめに参加した場合、他の温泉地域(国内の超有名所など)の盛り上がりが関連して自分達の温泉地への誘致に自動的に波及する可能性が出てくる。近くや隣県の温泉地とコラボしても良いし。

(ただし、現地でのやる気やモチベーションというのは、ファンから見ても伝わったりするものなので、最終的にはゆるキャラ同様「現地での力が最も影響するコンテンツ」ではあるとは思う。)

地震の多い日本と温泉という地域特有コンテンツ

 自宅でもシャワーやお風呂が好きな人、近所の銭湯が好きな人がいるとは思うが、それらはあくまでも「ガスや電気を使ったボイラー等で普通の水を温めたお湯」を浴びたり、浸かったりしているに過ぎない訳で。

 温泉はと言うと、温泉法の法律で定めたものであって、温泉と認められるためには温度又は含有する物質が測定した基準をクリアする必要があるし、何よりその地域の地層など、場所によっては 1000 年を優に超える時を経た地域特有のコンテンツなのである。単に「入りたいから」と思っても自宅で入れるものでも無く、「温泉の基準を満たしている温水、鉱水及び水蒸気その他ガスがたまたまその場所で出ていることが発見された」ゲームのガチャで言うところの SSR ランクみたいな確率のコンテンツだったりする。

 そして、容器などの保存や鉄道・航空といった輸送の技術が発達している現代においても尚、通販で簡単に手に入るようなものではなく、源泉かけ流しで湯に浸かれるのは現地に行くしかない、という The 観光資源と言うべき贅沢の極みだったりする(そうした温泉を維持・管理している温泉施設や宿泊施設ないしは温泉地の人々には感謝しかない...)。

 また、日本は地震の多い国なので、源泉が湧いている地層への影響によっては温泉が出なくなったりすることもある(逆に地震の影響で出た温泉もある)っぽい。地域によっては更には継承者の問題とか絡むので、入れる内に入っておきたい。

まとめ

 そんなこんなで、個人的に温泉むすめ(と温泉)というコンテンツをどの様に見ているかをまとめてみた。現時点における感想をまとめているので、時間が経ったら追記するかもしれない。

 下手にゆるキャラ作るよりかは地域 PR がしやすくて、サブカル系キャラクターを用意して新たなファン層を呼び込むきっかけにするにはお手軽で、温泉地の周辺も含めて地域の PR や旅行客の誘致になるので、そりゃあ観光大使化してもおかしくないよねー、といった感じ。

 温泉自体がやっぱり好きなので、近場も含めて温泉むすめのキャラクター増えたら良いなぁと思ってる(コロナ落ち着いたら台湾との関係とかも期待)。

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