2023.8.1日記(『バナナの花は食べられる』観劇)

先日KAATにて、範宙遊泳の『バナナの花は食べられる』を観てきた。2022年の岸田國士戯曲賞受賞作の再演である。


古典的悲劇の構造をしっかり踏襲し現代劇を作っていること、真正面から「物語」を作ることに向き合っていることがすごいと思った。起承転結の構成がしっかりしていてフィクションとしての強度が高い!

範宙遊泳は、2017年にSTスポットで『その夜と友達』を観て以来6年ぶり。物語の構成力が格段に上がっていた。その夜と〜で中心として描かれていた「人間関係の構築と崩壊」のドラマは、今作でも登場した。今作ではより大きな物語を構成している一つのエピソードともなっており、時間的にも空間的にも山本さんがコントロールしている世界が格段に広がっていた。

気になったところとしては、物語としての完結度を優先するあまり(?)、若干ラストがくどく感じた。二幕前半のあの決定的瞬間の部分が恐らくドラマのクライマックスで、そこから先は物語の構成的には必要かもしれないが、ちょっと長く感じた。

あと、話自体がウェットなこととバランスを取るためにメタ的な演出やセリフが随所にあったが、機能してるところとしてないところがあったように感じた。最初のモノローグを役者2人で言うところや、渋谷の街で追いかけっこするところはフィクションとの距離感が絶妙で素晴らしかった。「頼むよ!ファンタジー!」と観客に向かって叫ぶところは、演技の温度感の問題なのか、異化効果ではなくむしろ没入感を増している感もあり少し気恥ずかしい感じもあった。

観終わってから人と色々感想を言い合いたくなるとてもいい芝居だったし、個人的には劇作面でめちゃくちゃ勉強になった。