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耳をすましてもう一度聞きたい北朝鮮の言葉(『愛の不時着』について#9)

 ドラマ『愛の不時着』について、9回目です。今回は南北の言葉や表現の違いについて。

 韓国人女性のセリ(ソン・イェジン)がパラグライダー事故で北朝鮮に不時着し、そのまま素性を隠して北朝鮮で暮らすドラマの前半。同じ民族である韓国と北朝鮮は同じハングルを使っていますが、使う単語や発音、アクセントなどが異なります。

「お母さん」を意味する韓国語の「어머니(オモニ)」が北朝鮮では「오마니(オマニ)」だったりと少しの発音の差から、「女」は韓国では「여자(ヨジャ)」なのが北朝鮮では「에미나이(エミナイ)」という違いまでさまざま。

 ドラマ全般でよく使われていた、とくにリ・ジョンヒョク(ヒョンビン)が言っていた「イロプソ(일 없소)」は「大丈夫」という意味ですが、場面によって平気です、いいですという意味もあります。

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ドラマ『愛の不時着』からのキャプチャー画面 地雷を踏んでしまったジョンヒョクが、セリに対して「イロプソ(何でもない)」と言うシーン。

 韓国ではまったく言わない言葉なのですが、映画やドラマなどで中国系韓国人や北朝鮮の人の定番のセリフとしてよく出てくるので、大体の韓国人はこのセリフの意味は知っています。

 また第11話で、セリは韓国で「リ・ジョンヒョク(리 정혁)」を紹介するときに咄嗟に「イ・ヒョク(이 혁)」と言います。

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ドラマ『愛の不時着』からのキャプチャー画面

 名前の真ん中を抜いただけでなく姓の「リ( 리)」が「イ(이)」に変わっています。漢字では同じ「李」です。韓国では頭音法則で「リ」は「イ」と発音しますので、姓を「リ」と発音するだけでそれはすぐに北朝鮮の人であることがわかるのです。

 “南の言葉を話す”セリと、北朝鮮の人たちは、文化の違いはもちろん、お互い初めて耳にする言葉を新鮮に感じます。韓国の視聴者も同じ感覚で、ドラマのストーリーが進むにつれて、北朝鮮の言葉が自然となじんで聞こえるようになりました。日本の人も、日本語に近い韓国語の単語の発音には親しみを感じられたのではないでしょうか?

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