精一杯生きても何ひとつ報われない…?ドンベクを絶望させた韓国社会の「金のスプーン」階級論(ドラマ『椿の花咲く頃』について#12)
『椿の花咲く頃』について12回目は、韓国で社会問題にもなった階級論についてです。孤児として、現在は未婚のシングルマザーとして、必死で生きてきたドンベク(コン・ヒョジン)が心情を訴えるせつないシーンを紹介します。
最終回第20話、“奇跡が起こるを待つしかない”状況のドンベクが、感情を爆発させるシーンがあります。自分が置かれている境遇を泣いて話す様子に多くの人が共感しました。ドンベクのセリフは「持たざる者はいつまでも貧しいままなのよ」という日本語字幕になっていますが、実際はもっとリアルな言葉で、韓国で社会問題にもなった「金のスプーン(금수저 クムスジョ)」階級論の話も混じっていて、韓国の視聴者の心に響きました。
ドラマ『椿の花咲く頃』からのキャプチャー画面。
2010年代、韓国では親の職業や経済状況によって金のスプーン、銀のスプーン、泥のスプーンに分類することが社会現象になり「金のスプーン」という言葉が流行るようになりました。昔は、貧しい家で育ったとしても勉強さえできればいい大学に入り出世することが可能だと思っていましたが、2010年代に入ってからは両親の経済状況で勉強の質が決定づけられ、貧しい人がいくら努力しても生まれながらに持っている人には叶わないという意識が高まったのです。自分はどのスプーンに属するのか、多くの人々がその話で盛り上がり、自分の立場を悲観する人も出てきました。
ドラマ『椿の花咲く頃』からのキャプチャー画面。
ドンベクが「ほかの人たちが金のスプーンか泥のスプーンかと言い争うとき、私は泥のスプーンさえなかった」と泣き叫ぶのを見て涙が出ました。その言葉は多くの人の胸に響き、ドンベクの幸せをみんなが祈ったと思います。韓国では最近、もし自分が泥のスプーンだとしても出身や置かれた環境のせいにせず、自分なりの幸せを探そうとする傾向になっていて、「金のスプーン」の話題はジョークで使うことも多いです。ドンベクを守ったのはドンベク自身であったように、幸せも自分が決めるものであることを、このドラマは私たちに伝えてくれたと思います。
「金のスプーン」階級論現実基準
韓国のネットを見ると、金のスプーン階級論の分類基準が出てきます。ただ、その数字は毎年物価上昇率で変わるようですし、人から見れば中産階級でも自分はそう思わないなど、人によりその基準にも差があるので、あくまでも大体の分類の目安として参考程度に見てください。
*ダイヤモンドスプーン(다이아몬드 수저 ダイヤモンドスジョ)
純財産:200億ウォン以上
世帯年所得:重要ではない
*金のスプーン(금수저 クムスジョ)
純財産:50億ウォン以上
世帯年所得:5億ウォン以上
*銀のスプーン(은수저 ウンスジョ)
純財産:12億ウォン以上
世帯年所得:1.5億ウォン以上
*銅のスプーン(동수저 ドンスジョ)
純財産:6億ウォン以上
世帯年所得:8800万ウォン以上
*泥のスプーン(흙수저 フクスジョ)
純財産:5000万ウォン以下
世帯年所得:2000万ウォン以下
※2020年9月現在、100円はおよそ1095ウォン。