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メガミ神姫の重量改善方法

ⅩⅩⅩ,メガミ神姫の重量改善加工

旧MMS武装神姫と比べ、KOTOBUKIYAのプラキット版武装神姫は「軽すぎて扱いにくい」というお話を旧い神姫オーナー様方から聞くことがしばしばありました。
これは、かつてのMMSを知っている方々からすると大きな問題でした。
しかし、近年の美少女プラモから入った方にはいまいち実感の伴わないものであると思います。
今回は「旧MMSと近年の美少女プラモの重さの違い」、「重さの違いがどう扱いにくさと関わるのか」、そして「軽いがゆえの扱いにくさの解消方法」を扱いたいと思います。

美プラは軽い?
美少女プラモ全般に言えることなのですが、旧MMS武装神姫に比べると大抵のキットは軽いです。
ところどころにPCVやABSのムクパーツ、金属のネジなどが使われている旧MMSと比べ、昨今の尾錠所プラモは中空構造になることが多く、パーツ同士の接合ははめ込み式のスナップフィットで、素体には重量のあるパーツなどは使われていません。
これは良い悪いではなく、単なる事実としてのお話です。

これはそもそも、両者の製品の性質が違うので素から、当然のことです。
片や旧MMSは「完成品玩具」であり、破損等に対する安全基準があります。
そのため、樹脂などにも一定の頑丈さが求められました。
片や美少女プラモはどれをとっても「プラモデル」であり、加工が容易であることは利点のひとつです。
しかし、頑丈さは加工の容易さとは相反するものであり、加工が容易であるということは壊れやすいということと表裏一体です。

これらの違いは両者が目指す方向性がまったく異なるものに由来するものです。
目指す方向性が違うのですから、「頑丈さ=加工しにくさ」と「加工しやすさ=壊れやすさ」のどちらを優先するのかも当然異なります。

頑丈な樹脂を使い、分解しにくいようネジやハトメを使った旧MMS武装神姫は、加工が容易で組み立てやすさを優先した美少女プラモより重い。
繰り返しますが、ここに良し悪しはありません。
単なる事実として、「旧MMSは美少女プラモより重い」のです。

重さと扱いやすさの関係
さて、ではなぜ「軽い」と「扱いにくい」ということが繋がりを持つのでしょう。
これは武装神姫の旧くからのユーザーが、どのように武装神姫を扱っていたか、という話にもなります。

本来、武装神姫はフィギュアです。
それは、室内の限られた空間で遊ぶことを想定されたものでした。
飾ったり、動かしたりして遊ぶ中で、ユーザーはたんに飾る/動かすだけでなく、様々な楽しみを見出しました。

ある方はスタンドを使わず、フィギュアを自立させることに楽しみを見出しました。
片足立ちや逆立ちなど、アクロバティックな動きを何の補助もなく写真に収めることを楽しみました。
またある方は、屋外に持ち出し撮影することに楽しみを求めました。
様々な風景の中にフィギュアを溶け込ませ、写真を撮影することを楽しみました。
ここで意図せず有効に働いたのが、フィギュアの「重さ」でした。

物体は重い方が安定します。
バランスを取って不安定なポーズを取らせるとき、重心にかかる重量が重い方が、不安定な姿勢を維持しやすいです。
また、屋外で撮影する際に突然の風が吹いたとき、重量がある方が転んだり倒れたりしにくいです。
これが、現在の美少女プラモにはない、旧MMS武装神姫の特性です。

「美少女プラモは軽い」。
これは、単なる事実です。
そして、「軽いため、不安定な姿勢を維持しにくい」。
あるいは、「軽いため、不意の転倒・落下が起こりやすい」。
これも、先程の事実に付随する事実です。
そして、転倒や落下の際、「加工しやすい=破損しやすい」美少女プラモは、髪などの細工の細かいパーツが破損する例が報告されています。
これが、「軽くて扱いにくい」という言葉の意味するところだと思います。

話が逸れますが、この僅かの違いを対立の契機にしてほしくはない、というのがぼくの望みです。
この記事の目的は、美少女プラモの価値を下げるものではありません。
ただ、この僅かの違いが、旧くからのユーザーには大きな違いだった。
それだけのことを、単なる事実として記載するのみです。

違いはほんの僅かなものですし、それは簡単に解消できるものなのですから。
転倒したら壊れるというなら、転倒しない運用をすればいいのです。
例えば、単にスタンドを使うだけでも、安定性は格段に向上します。
あるいは、両面テープや磁石のようなものを併用するだけで、安定した姿勢の維持は簡単に実現します。

そして、話を本筋に戻せば、「軽い」ことが問題ならば、「重く」すればいい。
それだけの話ですから。

重量を加え、安定させるための加工。
さて、長々と昔語りをいたしました。
ここからようやく本題です。
先程触れた通り、軽いのが問題ならば、重くすればよい。
簡単なことです。

ただ、メガミデバイスを始め近年の美少女プラモは中にも可動関節などの構造が詰め込まれています。
ガンプラの旧キットのように、中身が空洞になっているキットというのは現在ではまず見られないでしょう。
そのため、素体のラインを崩さず重量を増す、というのは言うほど簡単な可能ではありません。

また、今回の重量改善の目的は「安定性を増す=自立しやすくする」ことです。
そのためには、極力接地面に近い、低い部分に重さを加えたいですね。
重心の位置が高くなれば、それだけバランスはとりにくくなりますので。

結論から申し上げますと、足部分に重りを仕込むのが、今回の改修におけるメインの工作になります。

プラキット版の武装神姫は、太腿部分と脛部分に軸があり、分割された構造になっています。
また、足首から下にも爪先可動軸があり、有意な重量を仕込むことは不可能に近いでしょう。
よって、今回は分割された脛部分と、膝関節下の部分に重りを仕込みます。

まずは脛から構造を確認します。

パーツを開くと、上部には軸と接続するためのダボがあり、ここは残す必要があります。
また、下部には足首関節があり、ここにも重りは仕込めそうにありません。

さらには、両者の間には別パーツになった脛カバーを接続するための角ダボがあります。
が、脛カバーはダボを使わない接続に変更すれば、スペースを確保できそうです。
よってまずは、ニッパーやデザインナイフ、マイクロナイフなどで真ん中部分を削り落とします。

併せて、脛カバーの方も接続用の角軸をすべて削り落とします。
丸棒ヤスリやリューターがあると作業しやすいと思います。

スペースが確保出来たら、脛カバーと脛軸に1.5㎜程度の穴を開け、真鍮線を刺して接着します。
これを接続軸に使いますが、もし面倒ならば脛カバーは接着しても問題ないでしょう。
勿論その際は関節に接着剤が流れ込まないように細心の注意を払わないといけません。
脛カバーを接着してしまうと、脛部分は分解できなくなりますので、足首関節が接着されてしまうと取り返しがつかなくなってしまいます。

次は、釣具店などで購入できる板鉛を適当に切り出し、ペンチなどを使って巻いていきます。
その際にはだし巻き卵のような角柱になるようにすると、十分な重さが確保できます。
また、ペンチで適宜形を整え、鉛板同士の隙間がなくなるようにするといいでしょう。

鉛板が巻けたら、次は適当なサイズに切り出します。
足首側には切り欠きなどを入れると、中までしっかり鉛を詰めることが出来ます。
鉛は柔らかいので、デザインナイフやニッパーなどでも切削加工が出来ますが、有害物質ですので普通ゴミに混ぜて捨ててはいけません。
きちんと集めて金属ゴミに出せるようにしましょう。

さて、鉛の形が整ったら、鉛の断面に瞬着を塗って、ばらけないように固めてから脛のスペースに押し込み、脛カバーをつけて完了です。

次に、膝下部分です。
こちらは前後のモナカ構造ですが、中には脛との接続軸が入っています。
このままではスペースが確保できないので、ここも接続軸や前後のパーツの接続を損なわない程度に削ります。

ぼくは接着なしで接続できるように作っていますが、勿論前後のモナカは接着してしまっても問題ありません。
繰り返しですが、その際は関節が接着されてしまわないように注意してください。

画像のような感じにパーツを削り、スペースを確保出来たら先刻同様、鉛板を巻いて接着剤で固め、形を整えたものを入れて完了です。

効果の程ですが、メガミ神姫はそもそも全体的に軽いので、少し重量を増やしただけで大分安定性が増します。
具体的には足を揃えて立つことがやりやすくなりましたし、揺れにも多少強くなりました。
旧MMSの安定性にはまだ劣るかもしれませんが、それでも無加工よりは大分改善したように感じます。

いかがでしたでしょうか。
自分の手塩にかけたキットが破損するというのは、大変辛いことです。
しかし、幸か不幸か、美少女プラモは単なる作品に留まらない例も多くあります。

それは、旧MMSがドール的な楽しみ方を切り拓いてきたことと、無関係ではないでしょう。
ある方は作品を相棒とし。
またある方は作品に我が子のように接する。

ぼくはそれを尊い感情だと理解しています。
故に、こうした些細な違いでオーナー様方が対立することを、悲しいことだと認識しています。

違いは個性であり、特質です。
それはある角度から見れば短所ですが、別の角度から見れば長所にもなり得るものです。
であるならば、こうした特性を長所として扱ってあげられるようにしたいものだと、ぼくは思います。

もし、この記事を読んでくださった方も、この思いを理解して頂けたら、ぼくにとってはこの上ない望外の喜びです。
この記事を読んでくださった方に、どうか誤解なく届きますように。
そう願い、筆を置こうと思います。

最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

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