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ネジ錆由来の固着の解消

ⅩⅩⅨ.ネジ錆由来の固着の解消

さて、久方ぶりの補修記事です。
以前、錆びたネジを交換する方法は記事を書きましたが、今回の記事はその一段上のケースです。

ネジの錆だけであれば、以前の記事のようにネジを交換することで解消できます。
しかし、ネジの錆は(保管状況にもよると思いますが)水分とくっついて、パーツ内部で固着する場合があるようです。
そうなると、ネジは回らず、パーツが分解出来ないということになります。
特に、ネジは錆によってネジ山が完全に崩れてしまうこともあります。
今回は、そうした「どうしてもドライバでは対処出来ないネジへの対処」と「胴体パーツ内部で固着が起こった場合の対処」となります。

このような事例は、そうそうないケースだと思いますが、例えばヤフオクやメルカリなどで、パーツの纏め売りなどを購入した場合などはあり得るケースかな、と思い、記事にまとめることにしました。
ご興味おありの方は、お付き合いをお願いします。

なお、今回の処方は決して簡単な方法ではありませんし、根気と時間も必要です。
そのことをご理解の上、お読みください。

1.ネジ頭の除去
さて、まずは何を置いてもネジ頭を除去しないことには始まりません。
しかし、ネジ山が崩れた上に、完全に固着したネジを回すことは不可能です。
そのため、今回はネジ頭を破壊することでネジを除去します。

方法としては、2.0mmのピンバイスを使って、ネジ頭の中央部分に穴を穿ってやります。
ネジ頭とネジ足の接合部分まで掘り進むことが出来れば、ネジ頭とネジ足が分離できます。

ピンバイスは元々のネジ山の刻みが残っていれば、概ね中心にドリル刃が当たると思いますので、そこは心配ないと思います。

注意すべきはむしろ、深く掘り進みすぎないことです。
ネジ足の径は2.0mmですが、中心から刃がズレていた場合は胴体に傷をつけてしまいます。
また、穴が深すぎるとネジ足を除去する際に不都合があります。
理由は後述しますが、上手い事ネジ足との接合部まで掘り進むことが出来れば、画像のようにネジ頭のみ取り外すことが出来ると思います。
ネジは鉄製で非常に硬いので、時間をかけて掘り進むのには根気と時間を必要とします。
慎重に、ゆっくりと進める方がいいでしょう。

2.固着部分の分解

ネジ頭を取り除くことが出来れば、胴体パーツを分解することが出来ます。
しかし、今回のケースでは水分で溶け出した錆が内部で固着していました。
よって、すんなりとパーツ同士は分解出来ません。

とは言っても、結局はパーツの隙間にセパレーターを入れて、こじ開ける他はありません。
しかし、その際には破損を避けるために注意すべき点があります。

まず一点目は、画像の赤矢印部分は構造的に弱いということです。
この部分は隙間が出来やすいので、セパレーターを入れやすくなっていますが、強い力をかけると白化や歪み、あるいはへし折れてしまう恐れがあります。
セパレーターを入れる場合は、出来るだけ腕の付け根まで持って行ってから力をかけるか、あるいは腕の上側からセパレーターを入れるようにしましょう。
二点目は、このポイントにはパーツを固定するためのダボがある点です。
このダボはネジさえしっかり効いていれば不要ということも出来ますが、無駄にパーツを傷つけることを嫌う場合は注意が必要です。
特に、セパレーター代わりにデザインナイフなどの刃物を入れる場合は、ダボを切り落としてしまわないように注意しましょう。

3.ネジ足の除去

さて、ここまでは根気と時間があれば、何とかなります。
しかし、残ったネジ足の除去は少々手間がかかります

まず前提として、ネジ足がネジ穴から飛び出していれば、その部分をペンチで掴んで回すことが出来ます。
この場合はドライバで回すのと同じことですので、簡単に取り出すことが出来ます。
ですが、そう上手くネジ足が残っているとは限りません。
また、ネジ頭を除去する際に穴を深く掘ってしまうと、ネジ足の飛び出した部分に穴が残り、ペンチでつまんだ際に潰れてしまって上手くつかめない場合があります。
なので、そうなってしまった場合の対処を考えなければなりません。

橙色の印部分は、ネジを受けるネジ穴が突起状のパーツにあります。
そのため、以下の図のように、突起部分の上端(赤く囲った部分)をニッパーでカットすればネジを露出させることが出来ます。
そうなれば、ペンチで掴んで回すことが出来ます。

さて、橙色の印部分は少々手間がかかるものの、概ねペンチで掴んで処理が出来るということはお分かり頂けたかと思います。

では、カットの出来ない赤印部分はどうなるのか?
ここのネジがペンチで掴めなかった場合は、気合と根性でネジをすべてドリルで破砕するしかありません。

強いて希望をお伝えするならば、この部分は背中側のパーツと密着しないので、多少ネジ足が露出する構成になっています。
そのため、ネジ頭とネジ足の分離が上手くいって、ネジ足に余計な穴を開けなければ、ペンチで掴む余地が多少残りやすいです。
しかし、ここで残ったネジ足を潰してしまったり、奥まで掘り進んでしまったりすると、現時点ではちょっと解消法をご提案出来ませんでした。

また、当然ですが金属であるネジは周囲のABSよりも硬い材質です。
そのため、ドリルに触れると強度の弱いABSの方がより削れやすくなっています。
結果として、よほど慎重に、真っすぐ掘ることが出来ないと、周囲のABSパーツを削ってしまうことになります。

実際、ぼくは今回、四カ所のネジ除去処置をするにあたって、二カ所はドリルでネジを破砕しました。
その内上手くネジ足を除去できたのは一回で、もう一回は周囲に穴を広げてしまいました。
母数が少ないのですが、ネジ足全てをドリルで除去するのは非常に難しい、ということは確かです。

4.ネジ穴の再生処置

さて、そうかと言って、ネジを除去しないわけにはいきませんので、ネジ穴を広げてしまった場合の処置も付け加えておきましょう。

この処置は、今までの作業に比べて非常に簡単です。
穴が広がってしまったのならば、埋めればよいだけなので。
幸い、ネジ穴は普段決して見えない部分ですので、パテ材などで広がってしまったネジ穴を完全に埋め、硬化後にネジ穴を開け直してからネジを締めればよいのです。

この時に使う素材としては、エポキシパテの方が良いと思います。
ラッカーパテなどは、深い穴を埋めるには不向きです。
深い穴にラッカーパテを詰めると、中に含まれている溶剤が揮発しなくなってしまい、内側はいつまでも硬化しない、ということがありますので。

また、ネジ穴を開け直すのは必須です。
ネジ穴を開け直さないでネジを刺すと、押し広げられたパテがパーツに無理な力を加えてしまい、破損の原因になります。
ネジの足径は2.0mmなので、それに合わせた穴を開けてやりましょう。

いかがでしたでしょうか。
今回はぼくの手掛けた補修の覚書としての意味合いが強いです。
正直、ネジの錆由来でパーツが固着するような例は少ないでしょう。
しかし、ネジをどうしても回せない、胴体パーツが開かない、という症例はあるかもしれないと思い、記事にまとめることにしました。

もっとも、金属をドリルで切削するのは大変に手間です。
出来れば、この記事が誰からも必要とされることがないことを願って、筆を置こうと思います。

今回もお付き合いくださり、ありがとうございました。

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