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洗浄について(リモネンの塗装への影響)

ⅩⅩⅢ.神姫の洗浄についての追記(リモネンの塗装への影響)
今回は過日まとめた神姫の洗浄についての補足となります。

というのも、以前にまとめた記事で、「洗浄には中性洗剤が良い」「リモネン(オレンジの香り成分)は塗装に悪影響を与える」と記載しました。
一方、いにしえより武装神姫を嗜むものには口伝で「可塑剤の洗浄にはダヴが良い」という言い伝えがあり、ぼくも個人的にはよく使用していて、直接お話をする機会のある方にはお伝えしていました。
ところが先日、「ダヴはアルカリ性ですよ?」という指摘を受け、「ホンマや・・・」と真顔になってしまいました。

よって、今回より二回に渡り、「可塑剤を洗浄するのに良いのは中性なのか、アルカリ性なのか?」「リモネンは本当に塗装に悪影響なのか?」「影響があるとしたらどれくらいなのか?」という検証実験を行い、そのレポートという形でまとめたいと思います。
ご興味ある方はお付き合いください。

さて、今回はまずリモネンについてまとめていきたいと思います。

・リモネンってそもそも何なの?
まずはこのリモネンというものについてお話ししたいと思います。
リモネンは、オレンジなどの柑橘類に多く含まれる香り成分で、主に精油(オレンジオイル)に多く含まれる成分です。
もう少し詳しく分類すると、主に柑橘系の香りがしてポリスチレン(PS)を溶かす作用のあるdリモネンと、ハッカ油などに含まれるlリモネンという物質に分類できます。
そして、この柑橘系の香りを放つdリモネンという物質がPSを溶かしたり、塗装に悪影響、ということのようですね。
そして、柑橘系の香りのものにはオレンジオイルであるとか、ジペンテンとかいう名称で表記されている場合があるようです。
ですので、リモネンを避ける場合はこうした成分も避ける方が良い、ということになります。

そして、このdリモネンの溶解力は相当に強く、少し前にはペイントリムーバー、現在ではPS用接着剤としても商品化しています。
オレンジの皮の汁をかけるとゴム風船が割れる、というような例はもしかしたら御存じの方もいるかもしれませんね。
オレンジの精油などは、スーパーのトレーなどにかけると穴を開けてしまう程度の力はあるようです。

とは言うものの、洗剤として売られている製品に、そこまでの影響力があるものなのか?というのが今回の疑問でした。
百聞は一見に如かず。
実際に試してみましょう。

・実験
今回実験に使用したのはこちらの洗剤です。

セリアで購入したもので、成分表には「オレンジオイル」の文字。

香料に何が使われているのかは不明ですが、これなら確かにリモネンは含まれているでしょう。

実験は以下のように行います。
①プラスプーンに黒のサーフェイサーを塗布し、洗剤に付け込んで様子を観察する。
②サーフェイサーの上から塗装に使われる複数種類の塗料を塗布し、それぞれ洗剤に付け込んで様子を観察する。

①では、時間をそれぞれ変えて様子を見ました。
10分、30分、一時間の三種類を用意しましたが・・・
結果としては、全て変わらず、異常なしでした。

一応塗膜が緩くなっている可能性も考え、残っている洗剤をティッシュペーパーで拭ってみましたが、色移りなども全くなし。
触った感じも指紋がつくなどの様子もなく、異常なしと判定できるものでした。

続いて②。
左手側より、ターナーのアクリルガッシュ、タミヤのエナメル、ゼブラのマッキー(金)。

ガンダムマーカーがちょうどなかったので、アルコール系の顔料マーカーということで代用しました。
こちらはそれぞれ、30分漬け置きし、ティッシュで塗膜を拭ってみる、という形で実験。

結果は、アクリルガッシュのみ、塗膜ごときれいに剥がれ落ちて跡も残りませんでした。
が、他の二者はまったく色移りなどもなく、やはり異常なしと言えるものでした。

そこで、さらに別の塗料で追試。
Mr.ホビーの油性(いつものやつ、濃い青ラベルの方、今回使用したのはグリーン)と水性(水色のラベルの方、使用したのはクリアブルー)を改めて30分漬け置きし、塗膜を拭う方法で実験。

水性はクリアブルーしか手持ちがなく、大分見えにくくなってしまっていますが、ツヤは画像からも確認できるのでこのまま実験。

結果は、油性は全く異常なし、水性は塗膜をこすった時に端から欠けるように剥離しましたが、大部分には異常はなく、色移りもありませんでした。

また、その辺に転がっていたトレフィグも30分ばかり漬け込んでみたのですが、やはり異常なし。
指で触って確認した所、ほんのわずか、気持ちベタつく・・・?という感じで、明確な異常は確認できませんでした。

まぁ、洗剤である以上、日用の清掃に使う可能性があるものにそこまで強い溶解力は必要ないか・・・という印象です。

しかしながら、成分表にはオレンジオイルと記載があるだけで、どれだけの量配合されているのかは不明です。
つまり、この商品にはリモネンがほんのわずかしか含まれていない可能性もあります。
実際、薬局等で洗剤を見比べたところ、リモネン配合を謳っている製品は高価な部類でした。
なので、現時点では配合量によっては影響が強く出る可能性が否定できません。

・追加試験
そこで、さらに追試。
今度はなるべくリモネンが多く含まれている製品で塗装への影響を実験します。
なるべく多くリモネンが含まれているもの・・・

そう、タミヤのリモネンセメントですね。
こちらは柑橘精油85%と、その成分のほとんどがオレンジオイルです。

というわけで、追試は下記のようにして行いました。
③サーフェイサーの上に各種塗料を塗布し、その上からリモネンセメントを塗布して綿棒でこする。

本当は漬け込みたかったのですが、洗剤ほどの量がないのと、最初の実験に使ったプラカップに注いだらPSだから溶けちゃうじゃん、ということで直接スプーンに塗布する形に。
とは言え、少量じゃあ影響が出る前に乾燥しちゃうんじゃないか?とか、少量じゃあ影響でないんじゃ?などの不安は拭えません。
事前の下調べで、「リモネンセメントは塗装面には効果がない」「接着面の塗装は落として使用するべき」という情報もあり、この時点でぼくのリモネンへの信用はストップ安です。

ところが結果はこの通りです。

文字でもまとめます。

Mr.カラー油性
こすり始めはほぼ影響がなかったものの、こするうちに徐々に綿棒に色が移り、最終的には有意に影響が確認できた。
ただし、きれいに取り除くのは難しい印象(量を多くし、こすり続ければ別かもしれないが)。
また、サーフェイサー由来の黒も確認できた。
下調べでの「サーフェイサーはほんの少しだけ、流れるように落ちた」というのも、こすったりしなければまぁ、そんな感じかな?という印象。
とはいうものの、サフは表面が少し持って行かれているだけで、クリアにするのは難しい感じ。
よって、やはり塗装面に対しては接着剤としての機能はしないと思っていた方が良い。

Mr.カラー水性
油性同様、こすり始めは影響がなかったが、油性より若干早く綿棒への色移りが確認できた。
洗剤の段階でも多少の影響があったことと併せて、油性より塗膜の形成力が弱いのではないかと推測。
ただし、やはりきれいに全部取り除くのは困難である印象。

エナメル
こすったら即ドロドロに溶けた塗料が綿棒に移った。
Mr.カラーよりこすっている時間は明らかに短かったが、それでも下地のサフ面が露出し、こすり続けるときれいに落ちた。
恐らくさらに続ければ、エナメル面のみ取り除くこともできると思う。

アルコールマーカー
エナメルほどではないものの、塗膜の抵抗力は明らかにMr.カラーより下。
こちらもこすり続ければきれいに取り除くことが出来そう。

と、いうことで、③の実験結果は明らかに塗装に影響が出ました。
まぁ、下調べ段階でペイントリムーバーにもリモネンが使われていると分かった時点で、結果はお察しではありましたが。
(現在はクレオスのリモネンペイントリムーバーは終売のようです、調べた限りでは下地のプラまで溶かしてしまうほどだったとか)

さて、実験結果をまとめます。
1.リモネンは塗膜に有意な悪影響を与える。
2.ただし、洗剤として販売されている製品については、明確に悪影響が出ない場合もある(どれほどリモネンが配合されているかによる)。
3.リモネンを避けるなら、柑橘香料やオレンジオイル、ジペンテンにも注意した方が安全。

このようにまとめることができます。
なので、洗剤を選ぶ場合は無香料のものであるに越したことはない、という形でしょうか。

無論、実験結果が示すように、リモネン配合の製品が直ちに影響があるわけではないようです。
が、配合量によっては影響が否定できないので、事前に不要のパーツや今回の実験で使ったような試料を用いて、塗膜への影響を事前に調べた方がより安全である、と言えるでしょう。

今回はこのような形で次回に続けたいと思います。
次回の主な検証内容は、「中性とアルカリ性のどちらが可塑剤の洗浄に適しているか?」となります。
なるべく近々に投稿したいと思いますので、ご興味おありの方はそちらもよろしくお願いします。

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