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洗浄について(洗浄に適した液性)

ⅩⅩⅣ.可塑剤洗浄に適した液性
さて、今回もフィギュアの洗浄についての補足となります。
今回は洗浄に使用する洗剤の液性についてになります。

液性というのは、酸性、中性 、アルカリ性、という奴ですね。

フィギュアの可塑剤の洗浄には中性洗剤が推奨、というのはおそらく大多数の意見ではないかと思います。
しかしながら、武装神姫をいにしえより嗜むものには「可塑剤洗浄にはダヴ」という秘伝があります。
そして、ダブの液性は弱アルカリ性です。
ぼくも個人的に「なぜダヴが可塑剤洗浄に良いと言われるのか」の根拠を結構調べて回りましたが、それに対する回答はネットの海には転がっていませんでした(無論ぼくのネット検索能力に起因する可能性もあります、念のため)。

なので、実際に複数の洗剤を使って、検証してみよう、というのが今回の趣旨になります。
ご興味おありの方は、お付き合いください。

・洗剤の液性って、何が違うの?
さて、まずはこのお話から入りましょう。
洗剤には酸性洗剤、中性洗剤、アルカリ性洗剤、とあります。
理科の実験でリトマス紙やBTB溶液などの色を変える実験をした記憶のある方も多いのではないでしょうか。
で、汚れには酸に溶ける汚れやアルカリに溶ける汚れがあり、それぞれの汚れの種類に応じた洗剤を使う方が汚れを落とせる、ということです。

・じゃあ可塑剤は酸性?アルカリ性?
で、まず可塑剤というのはどっちの液性に弱いの?というのが次の眼目になります。
可塑剤というのは主にフタル酸エステルという薬品です。
現在ではフタル酸エステル自体は規制の対象なので、代替の薬品が使われるそうですが、アジピン酸ジイソブチルとかセバシン酸ジブチルとかいう薬品のようです。

当初の仮説としては、「なんとか酸ってついてるから液性は酸性で、アルカリ性洗剤と中和反応を起こして落ちやすくなるのでは?」という仮説を立てました(そもそも武装神姫に使われている可塑剤がフタル酸エステルで決まりかどうかも分かりませんが)。
が、どうもフタル酸エステルやその代替薬品の液性は中性であるようです。

よく考えたら酸性の液体って酢酸とか塩酸とか、そういう類です。
それらの特徴は、文字通りの酸味です。
流石にフィギュアの味見したことはないですが、酸っぱいにおいがするとかいう訳でもないですし、この仮説は違うのでは?と思い至りました。

で、よく調べてみたところ、アルカリ性洗剤は油汚れに有効というのは定説ですが、「中和反応はそもそも油汚れを落とすのには関係ない」ということでした。
油汚れは脂肪酸という名前ですが、前述のとおり酸味や酸っぱいにおいがするわけではありません。
で、液性の酸性というのは「水に溶けた時に水素を発する」という特徴があるようで、「そもそも油は水に溶けない=酸性ではありえない」ということになるようです。

とは言え、実際に調べてみないことには検証になりません。
まずは可塑剤の液性が本当に中性なのかを調べてみました。
方法はリトマス試験紙で可塑剤を拭って、色の変化を観察する、という小学校でもおなじみの方法です。
もしかすると時期によって可塑剤が変更されている可能性も考慮し、複数の種類の神姫を用意しました。

リトマス紙の赤が青に変わればアルカリ性、逆に青が赤く変われば酸性です。

今回は手に入れたリトマス紙が古く、赤かったので、まずは一度アルカリ性に漬けて青くします。ついででもあったので、赤いリトマス紙をダヴに触れさせました。画像上のリトマス紙が元、真ん中がダヴに触れたものです。確かに青く変色しているのでダヴの液性はアルカリ性で間違いないようですね。で、その次に水でダヴを十分洗い流し、乾燥したリトマス紙を使ってフィギュアの表面を拭います。それが画像下のものですが、若干青みが薄い・・・?でも赤というには・・・?という程度で、有意な変色は確認できませんでした。

ということは、武装神姫に使われている可塑剤は中性でいいと思います(もしかすると、本当にごくわずかに酸性に振れてる可能性もありますが、恐らく指の汗とかじゃないかなぁ、と思う程度です)。

・じゃあ結局どの洗剤がいいの?
さて、洗剤の㏗はあまり関係がないということが分かりました。
少なくとも、中和反応は関係ないようです。
ここからは実際に洗浄し、その成果をもとに考えてみます。

まず、神姫を液性ごとにグループ分けし、それを同じ回数同じ条件で洗ってみます。
条件は以下の通り。
①液体に30分漬け置きし、洗剤を拭い取って効果を測定。
②洗剤に漬けたパーツを手洗いし、温水で流すのを2回繰り返して効果を測定。

A群はダヴ(アルカリ性)で、アーンヴァルやストラーフを当てました。
B群は中性洗剤(家にあった適当なやつ、液性はリトマス試験紙で確認済み)に、マオチャオやハウリンを当てました。
C群は一応比較対象ということで、水にイーアネイラを当てました。

さて、順に結果を確認します。
まずは実験①。
ただ洗剤に漬けただけでは、効果はほとんどなく、それはA群、B群とも同じでした。
確かにただ水に漬けただけのC群よりは若干・・・?言われてみれば・・・?程度の違いはあるものの、ベタつきやテカりに目に見えた改善はありませんでした。

続いて実験②。
回数を2回としたのは、回数で結果が変わるかな、と思ったためでした。
結果的には、アルカリ性のダヴと中世の洗剤とで、大きく結果が変わったわけではありませんでした。
特に一回目の洗浄結果はさほど違わず、どっちもテカりは落ちているものの、指でこすると引っかかりを感じる程度にはベタつきが残っています。
今回は試し忘れましたが、ティッシュなどで拭ったら繊維が残るんじゃないかなぁ・・・という感じです。

ですが、二回目の洗浄の後ではダヴの方が指の引っ掛かりが軽減されているように感じました。
また、一回目から感じていたことですが、泡立ちは若干アルカリ性の方が良いように思いました。
もしかしたら、アルカリ性の薬品に油脂分を加えて加温すると、石鹸ができるという反応(鹸化反応)があったのかな?と思いましたが、これは検証方法が思いつかなかったので、あくまでぼくの体感です(温水を使ったのも、根拠は過去の経験的に冷水より温水の方が可塑剤のべたつきが落ちやすいと知っていたからで、特に鹼化を狙ったわけではありませんでした)。

また、結果的にダヴが優位と感じたものの、三回、四回と洗えば結果は有意に変化があるとは思えない、という程度の差異でありました。
よって、ダヴ(アルカリ性洗剤)でなければいけない、というほどではない、というのが今回の実験の体感的な結論です。
まぁ、気持ち弱アルカリ性の洗剤の方がいいとは思いますが、わざわざ新しく買うほどではないかなぁ・・・

ちなみに、ぼくはパーツ洗浄をまとめて行う場合、拝み洗いというやり方で行っています。
適当な数のパーツを両手の平で包み、手のひらをこすって洗うやり方です。
お米を研ぐときのやり方だそうですが、少量ずつしか出来ないので一般的ではないかなぁ、と思います。
慣れてくると、あまりパーツ同士をぶつけず洗えるので、塗装や表面を傷めずに洗浄できるので、個人的にはこの方法でやっています。

さて、いかがでしたでしょうか。
個人的には前回の結果と合わせて、「ものすごく結果に違いが出た!」という訳ではありませんでした。
とはいえ、前回のリモネンにせよ、今回の洗剤の液性にせよ、実際に確認してみるというのは大事です。
特に、個人的に使うだけではなく、他者に共有する知見となれば、正確であるに越したことはありません。
そういう自戒を込めて、今回は実際に検証を行いました。
この実験結果が、何か皆様の助けになれば幸いです。

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