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おゆまる二面型によるUVレジン複製

ⅩⅩⅦ,おゆまる二面型によるUVレジン複製

さて、今回はおゆまるを用いた、二面型による複製です。
と言っても、おゆまる二面型については以前にも取り扱っています。
では、なぜ今回また同様の記事かというと、今回は複製材にUVレジンを用います。
(以前の記事はエポパテを複製材に用いていました、詳しくは以下)

UVレジンを複製材に用いるのは、エポパテを使うよりも多少コツが必要です。
また、併せて型の作り方も、UVレジン向けに改良したものをご紹介します。
ご興味おありの方は、今回もお付き合いの程、よろしくお願いします。

1.準備
さて、複製の説明は以前にも致しましたので、今回は必要な材料と道具から見ていきたいと思います。
まずは型を作る、型材から見ていきましょう。

・原型(複製を取るパーツ、今回は髪パーツを使用)
・型材(おゆまる)
・型枠(今回はダイヤブロックを使用、シリコン複製の際に使っている物)
・プラ棒(H字のものと直線のもの、用途は後述)
・お湯を入れる容器と割りばし

まず、型材にはおゆまるを使います。
100均で買えるものですが、今回は少し多めに用意しています。
もしかすると、1セットでは不足かもしれませんので、ご注意ください。
また、塊状では柔らかくなるのに時間がかかるので、あらかじめ薄く延ばしておくと使いやすいです。

型枠は、複製材にUVレジンを使う場合、あった方が便利です(理由は後述)。
今回はこの中におゆまるを敷き詰め、その上に原型を入れて二面型を作成します。
イメージ的にはシリコンを使った二面型と同じような感じですね。

型枠に用いるものはブロックでなくても問題はありません。
プリンカップのようなものでも構わないのですが、出来たら円柱状のものより四角柱のものを選ぶ方が良いでしょう。
円柱状だと、上下の型がズレてしまう場合がありますが、四角柱ならば四隅が合えば型はズレないので。
もし円柱状の型枠を使う場合は、シリコン型で行ったようなダボ打ちをして、上下の型がズレないように工夫する方が良いでしょう。

粘度埋めをする必要はありませんが、下に何か敷いた方が作業性はよくなるので、カッターマットなどがあると便利です。
テーブルの上で直にやっても問題なく出来ますけど、結構びちゃびちゃになりますし、マットがあればそのまま持ち運びもできるので。

おゆまるを温めるために熱湯を入れる容器は、画像のカップ焼きそばの容器のように平べったいものだと便利です。
伸ばしたおゆまるはけっこう広がるので、全部お湯に沈めるにはある程度の広さが必要です。
また、お湯は多めに入れた方が便利です。
おゆまるが全部沈むくらいあれば柔らかくはなりますが、お湯が少ないとすぐに温度が下がるので、柔らかい状態を維持しにくくなりますので。
割りばしはおゆまるをお湯から取りだす他、型枠の中でおゆまるを突き固めるためにも使います。

2.今回作る型のイメージ
今回の肝のひとつです。
今回はシリコンによる型と同じようなものを作ります。

型枠の中に上型と下型を作り、原形を挟み込む形です。
上型にはレジンを流し込むレジン流路と、空気を抜くための排気口を開けます。
排気口と流路はなるべく型に埋まった原型の最頂点に持ってくるようにしましょう。

以前の記事ではレジン流路は原型下側に配置しましたが、UVレジンは厚みのある物を一度に作ろうとすると、紫外線が内部まで浸透せず、表面だけ固まって中は液状のまま、ということもあり得ます。
そのため、今回は複数回レジンを流して複製する手法を取ります。

排気口が原型最頂点なのは、空気が上に貯まるためです。
それを逃がすために、どうしても原型の頂点部分に排気口を作る必要があるのですね。

また、UVレジンは硬化の際に体積が減少するヒケが起こることがありますので、それを予防するため、多めにレジンを型の中に入れられるように、レジンだまりを作ります。

準備の画像にあった、二種類のプラ棒はこの流路とレジンだまりを作るためのものです。
今回は流路を作るためのプラ棒は一本しか使いませんでしたが、これは流路と排気口のためにふたつある方が便利でした(後述)。

また、型枠があることでおゆまるが逃げなくなるので、原型に密着しやすくなります。
加えて、UVレジンはエポパテと違って液体ですので、型の隙間から流れ出るのを防いでくれます。

3.型作り
まずは型枠内に柔らかくしたおゆまるを入れ、下型を作ります。
その際は図のように、複数回に分けた方が楽でしょう。

今回は凹型の髪パーツを複製するため、へこみ部分にもしっかりおゆまるを入れてやる必要がありました。
そのため、まず土台層を作り、その上に原型と接する層を乗せてやる形で作業しました。
型枠の外で作業した方が、へこみ部分にはしっかりおゆまるを詰め込むことが出来ます。
特に髪パーツの場合、接合面を含む面を下側に作る必要があるので(この理由は後述)。
勿論、おゆまるに押し込むだけで原型の型がしっかり作れる場合はこの限りではありません。

ちなみに、今回は作業性を考慮して髪パーツとレジンだまり用のプラ棒は瞬着点付けで軽く接着してあります。
無塗装のパーツなどならば推奨出来ますが、今回のように塗装済みのパーツだと塗膜が剥げますのでご注意ください。

下型が出来たら上型です。
上型を作るときは、下型に熱が移らないように注意する必要があります。
上型の熱が移ると、下型と融着してしまい、型を破壊して原型を取り出すしかなくなります。
下型を作った後に冷水で十分に冷やすか、上型を少し冷ました状態で被せるようにしましょう。
もっとも、上型に十分な柔らかさがないと原型に密着する前に硬くなってしまうので、この勘所は少々難しいかもしれません。

また、上型が柔らかいうちにプラ棒を差し込み、レジン流路や排気口を作るのも忘れてはいけません。
そのため、上型づくりは結構なスピード勝負です。

こんな感じで出来れば成功です。
今回は上型に使ったおゆまるが多すぎましたね。
もっと少量でも良かったと思います。
また、流路と排気口のふたつを作る方が良かったので、本来なら突き出しているプラ棒が二本必要でした。

おゆまるが十分に冷えて固まったら、原形を取り出します。
ブロックだと型枠も分解して外しやすいので、その点でも空き容器などよりは便利ではあります。

原型を外したら、よく乾かしましょう。
水気が残っていると、レジン硬化の際の発熱で気化し、気泡を作る原因になります。
ぼくは水分をふき取った後、念の為一日自然乾燥させました。
言うまでもなく、熱を加えると型が変形しますのでドライヤー等は厳禁です。

4.複製作業
さて、型が出来たらいよいよレジンを流します。
が、前述のとおりUVレジンは一度の厚みのある物を作るのには不向きです。
中までUVが浸透する程度の厚みでなければなりません。
そのため、複製材も何回かに分けて流す必要があります。
今回は分かりやすいよう、流す度にレジンの色を変えてみました。
一層目は赤のレジン、二層目は緑のレジンです。

まず一層目です。
この時点では下型のみの状態にしてレジンを入れます。
髪パーツの場合、接合面が全部満たされる程度で良いかと思います。

今回の場合、この時点で接合部分は全部複製できます。
そのため、下型に接合面があった方が好都合だったのですね。
接合面が歪んでしまうと、修正が非常に手間ですので、出来たら一度にしっかりしたものを複製できるようにしましょう。

また、レジンを注ぐ際は少量ずつにしましょう。
ボトルからレジンを注ぐ際にどうしても気泡は混じってしまいます。
特に髪パーツのようにとがった部分の先端には気泡が溜まりやすいですし、粘度の高いUVレジンではなおさらです。
気泡が混じったらその都度ヘラなどで取り除きましょう。
その際は爪楊枝等の木製のものは避けましょう。
(気泡対策の方法はこちらのnoteでもご紹介しています)

気泡をしっかり取り除いたらUVランプで十分に硬化させましょう。
ぼくは流すレジンの色を変えた都合上、色が混ざると都合が悪かったので5~6分ほど当てましたが、3~4分程度でも十分でしょう。

一層目が硬化したら、上型を乗せてズレないようにしっかり密着させ、二層目を流します。
この際に、流路と排気口が兼用だと、注がれたレジンが蓋の役割をして気泡が中々逃げません。
これでも出来ないわけではありませんが、出来たら流路と排気口は別で用意した方が便利です。
流路と排気口が別ならば、流路から流したレジンが排気口まで登ってきたら、型がレジンで満たされたという合図にもなりますしね。

型にレジンを注ぎ終わったら、型枠をつけた状態でUVを当てます。
今回はおゆまる越しにランプを当てることになるので、直接ランプを当てる一層目よりも長めに硬化時間を取った方が確実です。
ぼくは型枠をつけた状態で5分、その後に型枠を外して左右と下側から各2~3分程度ランプを当てました。

もし万一硬化が不十分だと一層目からやり直しなので慎重になりましたが、これだけ硬化時間を取れば流石にしっかり硬化していました。

硬化は十分でしたが、流路と排気口が兼用だったため、流路のすぐ下に気泡が残っていたようです。
流路のレジンが折れた際に空洞を作ってしまいました。

これには上からレジンを乗せ、硬化させて対処します。
型枠を乗せなくても大丈夫ですが、その場合は硬化後にヤスリで均す必要があるでしょう。

5.バリ取りと修正
複製直後は上型と下型の間に流れたレジンの膜があります。
このバリは不要部分なので、デザインナイフなどで切り取って、ヤスリで均してあげましょう。

また、尖った部分の先端など、どうやっても気泡が残ってしまう部分はあると思います。
今回は左側の髪の房にはレジンが流れておらず、欠けてしまっています。

青丸部分は型を使わなくても、先程の場合と同様に先端部分にレジンを乗せて硬化させてあげれば対処できると思います。
ですが、赤丸部分は大きく欠けてしまっています。
これはレジンを乗せるだけでは対処できないので、もう一度型を使って再生します。

今回の対象は上型部分なので、そこにレジンを塗り付けてから複製パーツを型の中に戻します。
この時、ズレないようにおゆまる型に戻せると、きれいに修正できます。
硬化させなければチャンスは何度でもあるので、焦らずしっかり型とパーツを合わせましょう。
(勿論、お手間でなければ複製をやり直すことも出来ますし、その方が早い場合も往々にしてあります)

修正部分は黒いレジンを流してみました。
が、ここでもやはり先端部分は欠けがありますね。
完成後に塗装する場合はベビーパウダーなどの粒子の細かい粉を振っておくとレジンが流れやすくなるのですが、クリアを利用したい場合はレジンの粘度を下げるか、諦めてひとつひとつ修正するかだと思います。

実際にフィッティングしてみるとこんな感じです。
が、後頭部との間に若干の隙間が空いてしまいました。
これは型を使って修正するのは困難なのですが、修正方法としては以下のような方法が考えられます。

a.UVレジンを硬化させつつ隙間に塗り重ねて高さを出し、ヤスリやナイフで調整。
b.額側の髪パーツ内部を削り、頭部がもっと前まで入るようにする。
c.エポキシパテやラッカーパテなどを塗りこんで埋める(パテは非クリア材なので、塗装推奨)。
d.再度複製をやり直す(型から作り直すことも視野に入る)。

この辺りは、UVレジンのクリアを生かすかどうか、どれだけの手間暇をかけられるかにもよりますので、恐らく正解と言える方法はないと思います。

別記事でも述べましたが、作業のゴールは作業者である貴方しか決めることが出来ません。
この品質で満足するのも、ひとつの回答ではあります。
が、どんな答えを出すにせよ、おゆまる複製で高い精度を出すのは大変難しく、複製を取って終わり、とはなりにくい手法です。
そのため、ある程度の終着点をあらかじめ考えておく方が、気持ち的にもよろしいかと思います。
完璧な複製が出来ない以上、パーツに完璧を期するのは非常に苦しいので。


さて、今回はこの辺りで締めようかと思います。

複製は初心者が行うには難度の高い作業です。
複製作業自体もそうですが、修正作業は引き出しの多さが物を言う部分が多分にありますので。
そして、複製で満足いかないならばもうひとつ同じパーツを購入する、というのも方法のひとつです(無論、それを選べない理由が多々あるのは承知しております、特に武装神姫のパーツは入手困難なので)。

もしかしたら、出来栄えに満足できないこともあるかもしれません。
今は満足でも、パーツを使う内に、やはり不満が出てきたということもあるでしょう。

もし完成したパーツに不満なら、何度も手直しをしてもいいです。
あるいは、型から作り直して複製を繰り返すのもいいです。
もしくは自力での複製を諦めて、同じパーツや代替パーツを探すのもいいと思います。

大事なのは、ご自身に合ったゴールを設定することだ、とぼくは思います。
コストは有限なので、ご自身の時間や資金を上手く采配してください。
複製は、あくまでゴールに至る方法のひとつだ、ということを知って頂けると、ぼくは嬉しく思います。

それでは今回もお付き合い頂き、ありがとうございました。
皆様が楽しい模型ライフを送られますように。



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