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CHANGE WITH CHEERIO!LGBTQを理解する~株式会社チェリオコーポレーション~

令和元年7月に京都市南区に本社を移転した飲料メーカーの株式会社チェリオコーポレーションは、LGBTQをはじめとするセクシュアル・マイノリティの存在を社会に広め「“性”と“生”の多様性」を祝福するイベント「東京レインボープライド」への協賛を早くから行うなど、多様性を尊重する取組を積極的に行っています。なぜLGBTQの理解を広めていこうとしているのか、そこにある想いを伺いました。

お話を伺った人
座間 隆史さん(株式会社チェリオコーポレーション 取締役執行役員 経営支援本部本部長/ダイバーシティ担当役員)
柿島 なつみさん(株式会社チェリオコーポレーション 総務・人事課/ダイバーシティ担当)

Q:なぜLGBTQの理解を広める活動に協賛されているのですか。

座間―元々のきっかけは、NPO法人 東京レインボープライド(以下「TRP」)の代表理事である杉山文野さんからお声がけいただいたことでした。2013年当時、LGBT文化を讃えるイベントであるプライドパレードに協賛する企業は外資系の企業ばかりで国内企業は一つもありませんでした。日本のプライドパレードである以上、日本の企業がトップスポンサーとして応援していきたいと話が盛り上がったんです。会社としても、ただ飲料品を販売するだけではなく、事業を通して誰もが自分らしくあり続けられる社会をどのようにつくっていくのかという問いに向き合っていきたいという想いがありました。調査機関や調査方法によってデータにばらつきはありますが、現実には人口の3~10% がセクシュアルマイノリティの方だと聞いたので、この数字を弊社に当てはめると、相当数の社員が該当するのではないかと思ったのです(グループ全体の社員数は560名前後)。その方たちが自分のアイデンティティに誇りを持てずに働いているのだとしたら、看過できないことだと問題意識を持ちました。バックグラウンドがどうであろうと、同じ方向性に向かって進んでいける人と一緒に事業を行っていくことが会社の成長にもつながりますし、社会での生きづらさの打破につながると思います。

パレード参加時

Q:会社としてはどのように取組を進めていかれたのでしょうか。

座間―まずはパレード(「TRP」)に参加することから始めました。当初は東京支社の社員数名しか参加していませんでしたが、2019年には全社員の4割がパレードに参加している状態になりました。もともと、自動販売機へのルートセールスなど、社員には男性が多く、特に性のダイバーシティについて積極的ではない社員もいましたが、実際にパレードで歩いたり当事者と交流する中で、知らなかっただけなんだと理解が深まっていきました。悩んでいる方の想いを知ることでLGBTQの取組への否定的な意見は出なくなっていきました。

Q:社内的にはどのような取組が行われているのでしょうか。

座間―就業規則にLGBTQや性的指向で差別をしないという文言を2018年4月から入れました。弊社の福利厚生には家族手当がありますが、これまでは婚姻届の提出が必要でした。今は同性パートナーであっても適用できるように制度を作っています。施設面では本社の京都市南区への移転のタイミングで、性別に関係なく誰でも利用できる「だれでもトイレ」の設置を行いました。当事者に話を伺うと、更衣室とトイレに男か女かしか選べないということが多く、多様な性自認の人たちが使いやすい更衣室やトイレが欲しいと要望を持たれている方が多いようですね。ただこれに関しては、敷地面積や各営業所の個別の事情もあり、今後の課題だと感じています。

柿島―制度や仕組み、施設を整えることと並行して大切なことは、従業員への周知です。弊社がどのような想いでLGBTQに取り組むのかを知ってもらう必要があります。そこで新入社員研修はもちろん、年に1度の社員旅行などで定期的に研修を行っています。通常の名刺とは別に、LGBTQを正しく理解し人にも適切な説明ができる社員だけが持てる名刺を作成しており、現在は20名ほどの社員が持っています。

本社内にある「だれでもトイレ」の表示

Q:LGBTQの理解がうまく進んだ要因はどんなことだと思いますか?

座間―私たちが恵まれているのは、全社員が参加する研修に講師として「TRP」代表理事の杉山文野さんに講演に来ていただけていることです。杉山さんは、心と体が一致しない違和感や周囲への伝え方など自身が経験された大変さをストーリーで話してくださるだけでなく、その中にLGBTQの知識を差し込んでわかりやすく伝えてくださいます。最初は研修なので仕方なく講習を受けたという社員も、共感や尊敬が生まれ、意識が変わっていく様子が見られました。他にも当事者とそのご家族から「チェリオさんに応援していただいて本当に助かっています」という想いを直接聞けたことで理解が進んだ事例もあります。中部エリアには80台ほどチェリオのトラックが走っているのですが、「チェリオのトラックを見ると元気づけられるし、私たちはこの社会にいていいんだと思えます。飲料を販売しているだけではなく、私たちに希望を与えているのだと思ってください。」という声をいただきました。こうしたフィードバックにより、日々の業務とLGBTQの取組がつながっていると思えたことで、頭で理解しようとしていることがストンと腹落ちすることにつながっていったのかもしれません。

Q:社員の考え方や業務の中で良い影響が生まれていると感じることはありますか。

柿島―社員に関しては、例えば力仕事をする時に「男性だから」というような表現は聞かなくなりました。「これぐらい重たいものを運ぶんだけど、誰か手伝ってくれませんか」という表現を意識して行っているように感じます。性別で役割を区別することに違和感を持つようになってきているということだと思います。

座間―自動販売機を設置しているオーナー様からお声をいただくことがあります。レインボーにラッピングした自動販売機の売り上げの一部をレインボープライドに協賛する「のんでCHANGE!」という取組があるのですが、それを知ったオーナー様から「そんな面白いことをしているのなら、うちのもそれに替えてよ」というお話をいただいています。

Q:LGBTQの他にも多様性につながる取組をされています。障がい者アートでラッピングしている自動販売機もありますが、その狙いを教えてください。

座間―私たちは自動販売機を「お金を入れると飲み物が出てくる機械」という捉え方ではなく、まちの中にあるメディアとして活用できないかと考えてきました。障がいのある方のアート作品を世の中に知ってもらいつつ、収入を得られる仕組みを作っていくことができたらと活動されている「天才アートKYOTO」という団体があると知り、一緒にできることがないかと考えたのが、障がい者アートでラッピングされた自動販売機の設置です。通常の自動販売機からラッピングされたものにするにはオーナー様による許可が必要なので、アーティストを応援するという切り口でオーナー様にお話を持っていき、障がい者アートのラッピングをした自動販売機を設置させていただきました。自動販売機を通して障がい者アートを身近に感じるだけでなく、売り上げの一部を天才アート様に寄付しています。自動販売機を生かした経済の循環をつくる仕組みを進めていきたいと思っています。

Q:今後飲料メーカーとしてどのような価値を社会に提供していこうとされているのか、今後の展望をお願いします。

座間―飲料メーカーとしては、「美味しい、楽しい、新しい」という感覚を出し続けていきたいと思っています。多様な価値観が重なり合うことで新たに生まれる価値があります。みんなが楽しんで自分らしくあるという状態をどのようにしたら創れるのかを飲料の可能性を模索する中で見つけていきたいです。弊社は、「CHANGE WITH CHEERIO」をコーポレートスローガンとして掲げています。変化というのは受け入れがたいものです。しかし、今のままでいることは長い目で見ると衰退を意味することだと思います。今社会で活躍を始めた若い世代は、多くの人が多様性を当たり前の感覚として持っています。どんどん価値観ややり方は変容しているので、変化を恐れるのではなく、私たちと皆さんで一緒に変化を作り続けていけたら嬉しく思います。

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