見出し画像

真田くんの個展に行ってきた

 9月21日から開催されていた写真展「きおくのカケラ」が、9月29日に終了した。
「入場料:無料」の太っ腹だった。会場の中は一部を除き、「撮影OK」なのも嬉しかった。


個展内部


 会場を入ると、小気味のいい音楽に迎えられる。

出入口脇に鎮座する大きなスピーカー

 右手にこの写真展のメインと思われるタイトル付きの作品が8枚並んでいる。説明は作品側に掲示してあるQRコードを読みこんで見られるようになっているが、会場が地下のせいか電波が弱くて読み込めない。しょうがないので、いったん会場を出て階段下まで行ってようやく先の画面に到達した。読み込み先はインスタで、このためにアカウントを作成していたようだ。8枚分のタイトルと説明が並んでいた。

入口を入って右手にメインの作品8枚のうちの4枚が並ぶ
奥に残りの4枚が展示され、
天井のグルグルからも写真が下がる

 幼少の頃の写真が天井から3枚ずつ、3箇所にぶら下がっている。右下に撮影日が印字されている、懐かしさを感じる写真たちである。

 横長の会場左手奥には展示物が置かれた階段状の棚があった。ここは、真田くんのクリエイターとしての歩みがギュッと詰まったコーナーである。プロデューサーを務めた「映画30S」で使用された小道具や、監督として製作に携わったMV「RUNNERS」で使用した絵コンテ、社歌のコード譜などが陳列されている。

上段の展示物に触ることはできないが、
下段に並んだ真田くん作の文章は、
コピーを手に取って読むことができる。
映画の中で使われていたポラロイド写真
「薫のノート」をかなり近くで見られる貴重な機会だった
直筆の絵コンテ
レジ前の棚には個展グッズが陳列されている。

 奥にグッズを購入できるレジブースがあり、その真向かいに、もう一つ同じ形状の階段の棚が置かれている。ミニライブの時には客席として使用しているらしい。

レジ向かい側に設置された階段棚。
この棚裏の壁面が撮影禁止のコーナー。
奥の部屋は、畳の間。

 この棚裏の展示は撮影禁止のコーナーになっていた。7ORDERが発足して初めて開催された上海でのファンミーティングやコロナ禍当時の写真が、中止になった舞台への悔しい思いなどを綴った直筆のメモとともに小さなパネルにして展示されていた。

 畳が敷かれたコーナーは、靴を脱いで上がることができる。メンバー個人の写真と、奥には6人で並ぶ写真が飾られていた。メイン会場の8枚の写真は白い額縁を使用していたのとは異なり、このコーナーにあるメンバーの写真は周りの装飾に合わせたのか黒い額に縁取られ、クールな装いであった。

キーボードとアンプも展示されていた。

 出入口の周りは、ポストイットのメッセージで飾られている。会期中どんどん増えていく。

真田くん直筆のメッセージは
展示内のあちこちに貼られている。
「きおくのカケラ」ポストイットを貼るコーナー。
メンバーが記入したメッセージも紛れている。
机上の連絡帳にも記載する事ができる。
真田くんのもあった。

感想


 芸歴20年イベントと聞くと20年分の歴史のカケラが見られるのではと想像してしまうが、真田くんが7ORDERになってからの5年間に撮った写真だから、会場が広すぎるわりに点数はめっちゃ少ない。ここはミニライブ「ゼロカライチ」を行うスペースでもあるから、間仕切りなどで壁を増やすことが出来なかったのかもしれない。真ん中がポッカリと広く開いた中、壁際にたった8点だけの写真展示では空間が寂しい。8点に絞るならもっと大きく引き伸ばした方がインパクトもあり良かった気もする。
 
 その厳選された写真の説明を一点一点確認しながら見たいところなのに、電波が悪いせいで1回目の訪問時はスムーズにいかない。真田くんが創り上げた世界観に浸れるのは次からかと楽しみに訪れた2回目でも、すんなりとはいかなかった。なぜか。会期終盤の平日は訪れる客も少なくなっていたせいか、会場内は静かなのにレジブースに居るスタッフがお喋りに夢中で、その会話が広い会場に響いていて萎えるからだ。
 レジブース向かいの階段上になっている休憩スペースでは振付師の方ともう1人のスタッフが座っていて、ものすごく大声で会話していた。

「さっき真田に電話してさ~」
「昨日、安井がさ~」

 何だろう。わざと大きな声を出して、鑑賞中の7ORDERファンの私たちに聞かせてくれているのだろうか。私たちはメンバーの裏話やこぼれ話を有り難がって聞き耳を立てるのが正解なのだろうか。
 傍にPCが置かれていたから仕事中だったのかもしれない。しかしその仕事は、真田くんの個展会場の中で、大声を上げながらどうしてもやらなくてらならないものだったのか。私は真田くんの創る世界を楽しみに来たのであって、スタッフ同士のおしゃべりなど聞きたくもなければ、真田くんがスタッフとどんな会話をしているかなんて心底どうでもいいと思い、残念に思った。

 そもそも会場に入る前から私は穏やかな気持ちではなかった。ネタバレを踏みたくなかったので開催後は極力SNSから遠ざかっていたが、1ドリンク制くらいは心得ていて、会場に着いたらまず1階のお店でドリンクをと思っていたのに、前を歩いていた人も、後ろから来た人も、ドリンクを購入しないのだ。2度目に訪れた時も3度目の時も、そのまま地下に進む人が多くなんとなくモヤモヤした。
 たしかにドリンクを買って写真展に向かうと、ドリンクが邪魔でせっかく撮影OKなのに写真が思うように撮れない。鑑賞後に買うほうがいいのだ。ドリンク購入は厳格な強制ではないのかもしれないが、お約束ならもっと徹底してはどうかと思った。入り口に立ちドリンク購入を促す案内役が一人くらい居てもよいのではないか。鑑賞前でなく後から購入してもいいですよ、と言ってくれるなら尚更親切だ。

 またファンクラブ「Lucky's Club」の会員の特典として、会員証を掲示すれば「ステッカー」をもらえるのだが、その案内はレジのカウンターに小さく置かれているだけなのでわかりにくい。

 期待できない中訪れた3回目では環境の改善が見られた。会場の音量が大きくなりスタッフ間の無駄話が気にならなくなっていた。大声を上げる人も居らず閉幕が迫ってようやく快適に過ごせた。しかしスタッフはなぜ常に全員が狭いブースに溜まっているのか。仕事は自ら作るもの。省エネスタイルなのは気にかかった。


きおくのカケラ


 真田くんが厳選し、タイトルを付けた8枚の写真たち。なぜこの写真を選んだのかその説明文を読むまでが一つの作品である。20年芸能人として生きてきた中で、山あり谷ありの経験を経て生み出された言葉のカケラたち。私が特に印象に残ったのは、2匹の猫がフレームに収まった「食事の仕方」であった。飾らない、正直な人柄が現れている。

 「縁」。30才を超えたあたりから、真田くんの口からこの言葉をよく聞くようになった気がする。芸能人として生きることにおいて、「縁」や繋がりは特に大切なんだろう。真田くんは自分だけがその恩恵を享受するのでなく、積極的に繋げる側にもなろうとしている。幸せの輪を惜しみなく広げようとする人なのだ。
 
 真田くんにはたくさんの思い出がある。しかしそのカケラが最近少しずつ、はらりはらりとこぼれ落ちている気がしていた。

 3回目の個展鑑賞の帰り、そういえばこの近くに「金魚鉢」さんがなかったっけ、と初めて寄ってみることにした。「金魚鉢」とは、7ORDERのかつての秘密基地近くにあったお弁当屋さんだ。メンバーがよく利用していた縁で今も親交が続き、今回の個展にも豪華なフラワーアレンジメントを贈ってくれている。

真田くんのメンバーカラー赤一色のアレンジメント

 私は特に7ORDERのファンアピールをせずに店を後にしようとしていた。しかし支払いの際、カウンター下に今回の個展グッズであるキーホルダーが飾られているのに気付き、「あっ!」とした顔をしたと思う。するとそんな私の些細な表情の変化を見た店の方が「もしかして7ORDERのファンの方ですか?」と聞いてくださり、「ファンの方には唐揚げを一つプレゼントしています!」と言って、その時一緒に居た彼氏の分まで唐揚げを一つずつおまけしてくれたのである。そしてお店に飾られている7ORDERのサインを指差しながらニコニコと個展の話をしてくれた。

 お弁当は美味しかった。私たちは結構な量をあっという間に平らげた。その後彼氏はファンでもないのにちゃっかり唐揚げをいただいてしまった罪悪感からか、俺も個展見てくるわ、と言うので見送った。

 ここのところの私は社会人一年目で慣れない仕事に少し疲れていて、ファンミも当たらないし、ミニライブも外れるし、呼ばれてないならもういいかなという気分だった。そんな中の個展においても不完全燃焼な思いが生じて、誰かを応援したいと思う心の余裕がなくなっていた。それが優しく穏やかな金魚鉢さんとのこんなささいなやり取りの中で、硬った心がみるみる氷解していくのを感じた。7ORDERは、温かい人たちに支えられている。あの大声で話すスタッフの方々も、何か彼らのプラスになるかもと起こしたアクションだったのかもしれない。人の感性はさまざまだ。ただ私の心には刺さらなかっただけなのだ。

 真田くんのいう「縁」とは、こういうことなのか。タイミングも大事である。わたしも広い心でひとに優しくありたいと思いました。