沖縄方言、女性語「ハイタイ」について

沖縄の方言での女性の表現は「ハイタイ」です。
ハイタイとは沖縄の方言で「こんにちは」という意味です。
ハイサイは男性語、ハイタイは女性語。
つまり、男性と女性では2つの異なる言い方があるということです。
たとえば、タイ語で「ありがとう」というとき、私が男性だったら「コップンクラップ」と言います。 そして女性用は「コップンカ」。
これは日本語でもよくあることですが、男性なら「ありがたいです」、女性なら「ありがたいですわ」です。
日本語の女性に対する表現は非常に古い時代にまで遡ります。
土佐日記(934年書かれた)は、「をとこもす日記といふものををむなもしてみるとてするなり」と書いている。
つまり、文字の使い方においても、男性は漢字、女性はかな文字というように、男女で明確な違いがあったのです。
アメリカでは「so」「lovely」「wonderful」を付けると女性らしい表現と言われることが多いです。

「街」という文字が「カイ」と「ガイ」と読まれる理由を以前書きました。
そして、「カイ」は中期中国語の発音を移した漢音、「ガイ」は慣用読みです。
呉音と漢音を比べると、漢音より呉音が時代的に早く使われ、漢音より呉音が慣用的に使われていました。
別の本には、この 2 つの読み方を比較して次のように書かれています。
呉音:習慣的。 いつもの; 一般; 普通の発音。
漢音:体系的、発音。 時代が下がればシステマチックになるのは当然だと思います。

ハイタイとハイサイの話に戻りましょう。
「西」を辞書で引くと、サイ=呉音、セイ=漢音と書いてあります。
「男性向けのコップン・クラップ、女性の場合はコップン・カ」」という言葉は、男性の言葉は体系的であり、女性の言葉は慣習的なものであるため、納得できます。
日本語でも漢字が体系的に伝わり、平仮名が習慣的に使用されました。
したがって、それは理にかなっています。
しかし、ハイタイとハイサイに関しては逆行しています。
これについてどう思いますか?

硬音、軟音の問題。
女性が軟音、男性が硬音を使うであろうことは容易に想像がつく。
硬音(男性的) : 軟音(女性的) 
     t → d
     p → b
     k → g

男性語から音が脱落し、女性語となった例としては、「いやだ」が「やだ」になった例や、「~している」が「~してる」の例が見受けられるが、Hi-sai からHi-thai とあえて硬音を音追加している事は不可解である。

はいさい はいたい  タイもサイも断定の語尾で、「~である」の尊敬表現と考えられる。
「こんにちは、お邪魔します」に相当する、ちゃーびらさい ちゃーびらたい 古語の「来侍ら(きはべら)」=来ました、が変化したものといわれ、男女の語尾変化は同じ。
つまり、「ハイサイ」は Hi!でございます。 「ハイタイ」は、Hi!でございますわ。という事である。
標準語の終助詞も、話し手の男女差がある。
「~だ」=男性 「~わ」=女性
「ハイタイ」は「ハイサイ」よりも少しフォーマルな挨拶。

先ほど、女性語、男性語という観点からは男性語「はいさい」、女性語「はいたい」と、男性の言葉は体系的であり、女性の言葉は慣習的なものや女性が軟音、男性が硬音を使うの原則に反しているのではないか、と疑問に思ったが、「ハイサイ」「ハイタイ」を尊敬の度合いから考えると、納得がゆくのではないだろうか。
「ハイタイ」の方が「ハイサイ」より尊敬の度合いが強い、ということは、「はいたい」の方が正式(体系的)で、従って硬音を使って当然、という事になる。
日本語における「~です」が女性語になると「~ですわ」と、丁寧度を追加していると考えると納得がいくのではないか?


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