唐揚げ水蒸気爆発事件レポ

8月。
青森は4年ぶりに制限が解除されたねぶた祭りは大盛り上がりのうちに幕を下ろし、お盆と共に秋の気配が訪れ始めたある日のことでした。

お盆明けに高熱を出して寝込み、やっと回復した21日。
家族のリクエストで唐揚げを作り始めました。
砂糖・塩水で浸透圧?(だかなんだか知らんけどそういう現象)でみずみずしくしてから、ニンニクしょうが醤油酒みりんでしばらく浸けおく──
まぁそんな一般的な味付けが我が家の味です。
しかし物価高騰のこのご時世。大きな揚げ物用の鍋だと、消費する油の量が多くなって経済的ではありません。
少し考えた結果、小さめのお鍋に揚げ物用のお鍋についていた温度計を立てかけて揚げることにしました。
そして油が180度になったところで、薄力粉1:片栗粉2の割合で衣をつけて肉をイン。

すべてはいつも通り。順調に進んでいた──はずでした。

肉をひっくり返そうとした時、菜箸が温度計に引っかかりまして。
あっ、と思った次の瞬間、

大 爆 発 。 (SE:爆発音)


どうやら、洗ってはいけない温度計をうっかり洗ってしまったせいで文字盤に水が入り込んでいたのですが(この時点でアホ)、それが油にドボンしたことで、水と180度の油で反応が起こり、爆発したようです。
我が家の理系家族はのちに「初めて肉眼で水蒸気爆発を見た」と言っていました。
私は初めてその現象が「水蒸気爆発」というものであることを知りました。

──話を戻します。
爆発した次の瞬間、右手と顔にモーレツな熱と痛みが走りました。
気づいたら家族が保冷剤とボウルを出して流水に私の右手をつけ、私を屈ませてオデコと右目周辺にも水をかけてくれていました。
ついでに119番も。

唐揚げ作ってたら人生2度目の救急車です。ぴぃ。
救急車の中は気が動転してたのであまり記憶がないんですが、家族に
「担当さんに連絡して……ちょっと間に合わないかもしれないって……事情話して……」
と、非常にわかりづらい指示を出したことだけは覚えています。ゴメンネ。

救急では「水膨れになりそうなところもあるし、あとから火傷が深くなることもある(?)」とのことで、ステロイドの軟膏は出してもらえず……

アズノール軟膏(それ、我が家にもあります……と言う余裕はなかった)を塗られビニール手袋をはめられ、満量処方の鎮痛剤&坐薬と胃薬を出していただき、「明日皮膚科を受診するように」と言われ、家に帰りました……

が、とにもかくにも右手が痛い。
氷水に浸けていないと右手が火事、水から上げた瞬間灼熱地獄なんです。
鎮痛剤や坐薬なんて屁の突っ張りにもなりません。
とにかく氷水に浸けていないと正気を保てないのです。
その日はリビングのソファーで斜めに寝そべって、氷水を入れたボウルに右手を突っ込んで朝を迎えました。

もう2度と見たくないソファからの景色。

家族たちは夜を徹してつきっきりで水の取り替え、氷の補充をしてくれました。
ありがとう、ありがとう。

そんなわけで一睡もせずに迎えた翌朝。
家族が発明してくれた首からぶら下げる氷水入りジップロックに右手を突っ込み、ありったけの保冷剤を保冷バッグに入れて、母の運転で病院へ。
が、予約外なのでなかなか呼ばれず、保冷剤も心許なくなってきて、灼熱地獄の予感がし始めました。
内心半泣きで看護師さんに事情を話したら、少し優先してくれたのか間もなく呼ばれて無事に専門家の診察を受けることができました。

お医者さんは薬を塗って直にビニール手袋をかぶせられていたことについて、
「救急でこんな処置したの?」
と、ちょっと怒り気味のご様子だったので、おそらく真似しないほうがいい……のかもしれません。知らんけど。

夜のうちに親指と中指と薬指にできていた大きな水膨れは針で少し水が抜かれ、だいぶ楽になりました。
それから、リンデロンとアズノールが火傷の深度の様子を見て塗られ、今度はガーゼで指をぐるぐる巻きにされてからビニール手袋がつけられました。
救急の処置ではガーゼが巻かれていなかったから不満げだったのかと合点がいきました。

なにはともあれ、リンデロンのおかげで、痛みは劇的に軽減されました。こんな時、ステロイドは偉大。
……とはいえ、まだ陸上げはできません。
右手をビニール手袋ごと氷水に浸けたまま、左手だけでタイプしながら書いたのが、某マトリの彼の某シナリオのプロットです。思い出深い……。きっと一生思い出すだろうなぁ……

右手の分までタイプし、生まれて初めてスプーンとナイフで食事を摂り……と突然3日間酷使された左手さんは、その後しばらく筋肉痛になりました。
ありがとう、左手。
そして一番しんどい時に三食用意してくれた家族ありがとう。

そして、火傷から3日。
やっと水から上げても大丈夫になりました。
その次の診療では、「水につけなくても大丈夫になったなら、ムレてそこから感染症になったりしないようにビニール手袋を外しましょう」ということで、ガーゼでぐるぐる巻きからの包帯でぐるぐる巻きに。

全指がぐるぐる巻きになっているのでタイプミスは多いですが、両手で仕事ができることの喜びはひとしおでした。
お箸を持ったりはできないので、相変わらず不便ではありましたが。
まぁ1番の悩みは解決されました。
──と同時に「そういえばデコと瞼にも火傷が!!!!」と急に顔の火傷が痕にならないか気になり始めました。
中でもおでこのデカい火傷は「唐揚げ大陸」と名付け、そこから大事に大事に保護するよう努めました。
指もきちんと医師の指示を守って1日1回取り替えて……

そうして順調に治っていくかと思われていたある日。
取り替えるためにガーゼを剥がしたら、皮ごとめくれ上がりました。
どうやら湿潤液が乾いて皮とガーゼの接着剤の役割を果たしてしまったようで……

超 痛 い 。

そこから、「くっつかないガーゼ」ジプシー生活が始まりました。
「くっつかない」と謳っていても、交換の時にしっかりくっついてその都度ガーゼが乾きかけた皮を根こそぎ持っていってしまうのです。
次回の診療で相談したら、くっつかないフィルム?? みたいなので処置してくれましたが、「それも薬と一緒に出していただけませんか」と聞いても「処置のためのものだから処方はできない。軟膏を厚く塗ってください」とのイケズなお答え。
すでに軟膏を厚く塗って、なんならガーゼにプロペト塗りたくって保護しても、その度に皮持ってかれるんです、と。
必死に訴えたところで「薬局で探していただくしか……」とのこと。

病院で処置してもらった時のフィルムみたいなヤツを洗ってアルコール消毒して使い回しながら、本当にくっつかないガーゼを探し求めてあれこれと買い込みました……総額いくらだろうか? 考えたくありません。
(処置してもらったやつ、「使い回しは衛生的に問題があるからダメ」と言われてましたが、他のはくっつくから「ええい、自己責任や!」と……ほとんどヤケクソでした)

そうこうしているうちに、たいしたことないと思っていた部分が後から真っ赤になってじゅくじゅくし始めたり……
大切にしてきた「唐揚げ大陸」が、優しく水で顔を洗ってただけなのにベロンと皮が剥けてそこもじゅくじゅくになったり……

火傷との孤独な闘いはしばらく続きました。

そして、唐揚げ水蒸気爆発事件からおよそ7週間──

じゃん!


ひどかった親指もこの通り

とうとう包帯が取れましたー!
火傷の写真はグロいので、治ったのだけwww

なお、先日包帯が親指と薬指だけになったタイミングで厚手のゴム手袋をして唐揚げリベンジ成功しました。
家族からは「美味しい! これからもゴム手袋はいて作ってね」と言われました。
(津軽では、手袋は靴下と同じように『はく』ものですw)

あ、そういえば、「正直、咄嗟の時に”キャー”なんて叫ぶ女は実在しないよね」と思っていたんですが、なんとこの度ワタクシ、「キャー」デビューを果たしてしまいました。
ふと家族に「爆発した時、私なにか言ってた?」と聞いてみたら、「キャーって叫んでた」「自分に出せる最高音域の声で」とのことだったので。
乙女より乙女になってしまいました。
今まで「キャー」に対して都市伝説的な認識をしていたことを猛省し、改めたいと思います。

というわけで、今回は私の不注意が招いた事故でした……というか、こんなアホな間違いを犯す人間は私だけかもしれませんが、皆様、くれぐれも揚げ物の際には水蒸気爆発にご注意くださいませ……

PS.
8月17日にしてもらったひまわりネイルはすっかり伸び切ってしまったので、10日に新しいのにしてもらいます。
どんなのがいいかな?
今が旬のネイル、ご存じの方ご教示いただけると助かります。

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