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右利き?左利き?とスケート

 私は実は左利きだ。

 母親は左利きを厳しく直されて苦労した世代だったので、私には「どっちを使っても良いよ」と育ててくれた。それでも、世の中は左に偏らない方が生きやすいようになっている事が多い。右手もちゃんと使えるようになっていた方が良いと、習字とピアノのお稽古を幼稚園から小学校6年生までずっとやらされていた。

 習字は、左手では絶対にできない。小筆ならまだなんとかなるが、大きな筆で一本の線を左から右に向かって横に書こうとすると、左手では無理なのだ。手は体の内側から外側に向かってしか大きく動かせないようになっている。

 ピアノも、常に両手を使う。しかもほとんどの曲はメロディが右手メインになって、左よりも右手を強く細やかに動かすことが多い。

 この習字とピアノのおかげで、私はかなり左利きよりの両利きとして育つことができた。アイロンや縫い針はいつも両手を使う。右に行くときは左手、左に行くときは右手を使うので、いちいち洋服や布をひっくり返したりしないですむのだ。

 右利きの人はなかなか気づかないだろうが、この世の中は右利きの人のためにできていることばかりだ。ほとんどのドアは右手で開けるようになっている。駅の改札口の切符を入れたりタッチするのも右手側。自動販売機のお金を入れる場所も右側。アラブの言語以外は左から右へ書くようにできているから、鉛筆で書くと左利きはノートが汚れる。包丁も刃が右利き用に研いである。水道の蛇口も、右利き用。ネックレスの金具も、ブラのホックまで右利き用にできている。ハサミだけは、さすがに最近左利き用ハサミも購入しやすくなったし、どちらの手でも切れるハサミも増えてきたが。

 そうやって強制的に右を使わされる場面が多いので、みんな利き腕にかかわらず、自然と右を使うようになっていく。あなたが右手をよく使っているのは、本当に右の方が使いやすいからだろうか。それとも、右利き社会で育つうちに自然と右を中心に使う事に慣らされていったからだろうか?

 

 スケートをやってみると「あれ?私はどっちの足が利き足なんだろう?」と分からなくなる人って、結構多いのではないだろうか。レッスン仲間でも、スピンを習い始める時にどちらで回ったら良いのか迷っている人たちが何人もいた。私の娘も、右利きなのに混乱していた。私自身は左利きのはずなのに、なぜかスケートは右足の方が安定するし、右利きの人と同じように反時計回りの方が得意だ。

 人によってそれぞれだとは思うが、利き腕と利き足は違う可能性もあるし、成長とともに変化したり、右利き社会で生きて行くうちに右の方が発達していく可能性もあると思う。スケート場はアイスもローラースケートも反時計回りで右足をクロスしていく事が多いので、自然と右ばかり使って利き足にかかわらず右の方が上達するようになってしまう可能性もあるかもしれない。

 だからスケートでは、自分で思い込んでいた右利き、左利きにあまりこだわらずに、自分の感覚に素直になって滑ってみた方が良いと思う。

 先日スピンの回の追記で紹介したダーディ・デボラの動画では、後ろから声をかけられたときに無意識に振り向く方向が自分の回りやすい方向だ、と説明していた。

 言われてみれば、私は、振りむくのは左。ちょっとぐぐってみても、右利きの人は左に振り向き、左利きの人は右に振り向くらしい。不思議だ。私は鉛筆はもちろん、トイレットペーパーを右手で持ってもちゃんと使えないし、体を洗うのも歯を磨くのも右ではなぜかできない。でも振り向くのは右利きの人と同じ方向の左で、足も右利きらしいのだ。

 そういえば上の動画でデボラも、自分は左利きでも何でもないのに姉が回るのを鏡のように真似しているうちに反対回りになってしまった、と言っていた。利き腕と回りやすい方向は、意外と同じではないのかもしれない。

 スケートではモホークターンやクロスなど、どちらの足でもできるように両方練習しろ、と指導されることが多い。でも、スピンやジャンプとなると、自分の回りやすい方向だけを練習していくことになる。

 右利き:反時計回り(左回り)

 左利き:時計回り(右回り)

 基本的にこれが回る方向になる。でも、自分が右利きか左利きかと頭で考えるよりも、どちらに回った方が回りやすいか、という感覚に素直になった方が良いと思う。

 また、ジャンプのあとの着地も反時計回りだと右足になる。着地の際にどちらの足の方が強くて安定するか、というのも大事なポイントだ。右足の方が強いなら反時計回り、左足なら時計回りで習得しておく方が良い。


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