トウキョウベースの香港店は活況なのか?売上高から入店客数を類推してみた
6月29日現在、848円と株価の下落基調が止まらないトウキョウベースですが、その香港店が好調だと報道されていますが、本当なのでしょうか?
トウキョウベースの香港店が好調、強まる出店要請
17年春にコーズウェイベイ路面に出店した「ステュディオス」(ST)はメンズだけで年間売上高が2億円弱。その近くに同年11月に出した「ユナイテッドトウキョウ」(UT)も月商2000万円ペースと上昇し、年間2億円超えの勢い。香港や中国の商業施設からの出店要請も強まり、海外出店が想定以上に加速しそうだ。
とのことです。
年間売上高2億円と聞くと、なかなかすごいと思ってしまいがちですが、売上高=客単価×買い上げ客数ですので、この公式を持って分解してみましょう。
業界筋によると客単価はだいたい3万円前後と言われていますので、3万円だと仮定します。客単価が3万円で年間売上高2億円だと仮定すると、年間の買い上げ客数見込みは6666人となります。年間に6700人の買い上げがあるのもすごいと思ってしまいがちですが、これをさらに月単位、日単位に分解してみます。
年間6700人の買い上げ客数ということは、1か月あたりでは6700÷12か月=558人となります。1か月あたりの558人の買い上げ客数があるということです。そして、定休日なしでの営業だとすると、1日当たりの買い上げ客数は558÷30日=18・6人ということになり、18人~19人の買い上げ客数があるということになります。
客単価3万円というとなかなか売りづらいと思ってしまいますが、19人くらいになら決して不可能ではないと思いませんか?
そして入店客数を推測してみましょう。入店客数は絶対に買い上げ客数よりも多いのです。買わずに出て行った客が絶対に何人かいるのです。通常の店舗だと買い上げ客数は入店客数の2分の1前後だと考えれらますから、入店客数は1日当たり38人~60人くらいではないかと推測されます。多くても100人くらいでしょう。1日50人の入店客数だと8時間営業だとすると1時間当たり6人しか入店しないということになります。1時間に6人しか入店しない店が果たして人気店と呼べるのでしょうか?
もっとも、入店客数は立地条件にも大きく左右されます。隠れ家的な路面店なら少ないでしょうし、人気の高いショッピングセンター(イオンモールみたいな感じ)だと入店客数は恐ろしく多いでしょう。ちなみに、普段手伝っている天神橋筋商店街のバッタ屋でだいたい毎日50~120人の入店者数があります。
この程度の入店客数で海外出店を本当に増やせるのでしょうか?甚だ疑問です。
もちろん、香港で知名度が高くない「ステュディオス」「ユナイテッドトウキョウ」が年間2億円の売上高を稼いでいるのは健闘しているといえますが、実際のところは報道されているほどの「人気ぶり」ではないということが売上高の数字を分解していけばわかります。1時間に6人しか入店のない店なので、まあ、知名度のなさから考えると順当といえるのではないでしょうか。
記事や決算報告書では客単価が公開されていませんから、推測するしかないのですが、客単価3万円だと先ほど書いたようになります。2万円なら客数はもっと多くなりますし、5万円なら客数はもっと少なくなります。
【客単価2万円の場合】
2億円÷2万円=1万人(年間買い上げ客数)
1万人÷12か月=833人(月間買い上げ客数)
833人÷30日=27.7人(一日当たり買い上げ客数)
となり、1日当たりの買い上げ客数は28人となります。
そして1日あたりの入店客数は安い店なので少し入店者数は増えやすいですから、だいたい60人~150人くらい人となるのではないでしょうか。
56人÷8時間=7人
もしくは
80人÷8時間=10人
となり、1時間あたり7人~10人程度の入店となります。
1時間7~10人程度では「人気店」とはとても呼べませんね。
では今度は客単価5万円の場合を見てみましょう。
【客単価5万円の場合】
2億円÷5万円=4000人(年間買い上げ客数)
4000人÷12か月=333人(月間買い上げ客数)
333人÷30日=11人(1日当たり買い上げ客数)
1日あたりの買い上げ客数は11人となり、入店客数は22人~60人くらいだと考えられます。
22人÷8時間=3人弱
40人÷8時間=5人
なので、1時間当たり3~5人程度ということになり、これでは単なる閑散とした店でしかありません。
さらにいうなら、この程度の客入り、売上高の店は国内には掃いて捨てるほどあります。逆に最低でも年間2億円くらいの売上高がないと都心の一等地には店は構えられません。
トウキョウベースが香港での知名度がない中で、国内都心一等地と同じくらいの売上高を稼げているというのは本当に健闘しているといえますが、記事にあるように海外出店がどんどん進捗できるような状況であるとはとても言えません。
「全く仮定の話だが、春に海外へ5店出店もできる状況」(谷社長)。
とありますが、この程度の集客力で海外へ5店舗も出店することは難しいと言わねばならないでしょう。いえ、出店するだけなら資金さえ調達すれば可能ですが、営業を維持していくことはかなり難しいでしょう。
知名度がまだ高くない中、香港で2業態が好調なため、30~40代でファッション感度の高い層の集客を狙う商業施設からの出店要望が増えている。UTの香港2号店、STのレディス店の出店は早期に決まる模様で、今後は中国の大都市の商業施設出店も視野に、海外事業の成長を速める。
とのことですが、海外事業は現時点ではそれほど大きな成長に取り掛かれる状況ではありません。
今回ご紹介した、算数による数字の分解は当方のオリジナルではなく、マサ佐藤こと佐藤正臣氏のやり方で、こういう簡単な「算数」を使って、1日当たりどれくらいの入店客が見込め、買い上げ客数が見込めるかということによって、アパレルビジネスはこれほど科学的に分析できるのです。
ここから先は
¥ 300
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?