見出し画像

小説同人誌を制作する際に使用しているアプリケーションの一例

一度発行してしまえばどうにかなると腹をくくれる同人誌。しかし一度も発行経験がないと妙に尻込みしてしまう同人誌。

一年ほど前まで、同様の理由かつ「圧倒的に低コストで電子書籍が作れる(ついでに在庫を抱えるリスクもない)のに紙媒体で発行する意味は…?(入稿データの作成面倒だし)」と思っていた人間が紙媒体の同人誌を制作し、印刷会社に入稿する際に使用しているアプリケーションをご紹介します。
尚、あいかわらず在庫を抱えるリスクは回避したいマンのため、基本的には「製本直送.com」さんにデータを預け受注から発送までお願いしています。
同人誌の頒布イベントが開催されるときのみ、「さすがに捌けるだろう」という部数だけ印刷して自家通販をするのが現在の状況です。
これまではいわゆるWebイベントのみで頒布していたのですが、次は2023年5月開催予定の文学フリマで翻訳本の新刊を頒布しようかなと思っているところです。(なのでさっさと翻訳作業に取りかかろうね)

PC環境(基本スペック)

閑話休題。
それでは同人誌を制作する際に使用しているアプリについてお話ししますが、まずは前提(私の環境)について。
筐体:13inch MacBookPro(2019年)
プロセッサ:1.4GHz Core i5
メモリ:16GB
OS:Ventura 13.0

Mac使いです。もう一度言います。Mac使いです。Mac以外の方にはおそらく何の役にも立ちませんので、その旨ご了承頂ければ幸いです。

下書き

基本的にはVisual Studio Codeで作成。
翻訳の場合はアプリ内でウィンドウを2分割し、上部に原文をコピペしたもの、下部に訳文を打ち込んでいます。ただ、それほど分量が多くなく、かつ集中力が低下しているときはnotionでデータベースを作成し、原文を一文ごとに区切って登録し、右側に訳文を打ち込む形で翻訳をしています。notionを使用した方が、文単位で訳抜けが発生する確率は格段に減りますが、訳文の読みやすさを考慮して訳文を統合したり分割したりといった作業をする際にはやや不向きです。適宜使い分けすることをお勧めします。
別名義でやっている二次創作の場合は、一画面で打ち込んでいます(拡張機能のnovel-writerを入れてるものの、縦書きレイアウトはこの時点では確認していないです)
長編を書く場合はプロットや設定メモも同じフォルダに放り込んで、参照したいときにアプリの切替をしないで済むようにしています。

表紙以外の入稿データの作成

egword Universal 2で作成。
セクションを切ったり改ページを挟んだり、あるいは設定済みの書式を適用しようとして起きるWordの意味のわからない挙動でイライラしているMacユーザーの方にはegwordを強くお勧めします。
少なくとも体裁に関し、egwordでは意味のわからない挙動が発生することはほぼありません。なんだかよく分からないけれどノンブルのページ数が飛んだりすることもないです。極めて素直で、概ね自分のやりたいとおりに動いてくれます。文書の中で縦書きと横書きを混在させたい場合に関しては、「図形テキスト」を使えばレイアウトは簡素になりますが大体のことは出来ます。
Macの標準アプリであるPagesも概ね狙ったとおりに挙動するのですが、なにしろルビ機能が大分弱いため、自分のように「小夜啼鳥」に「ナイチンゲール」というようなめんどくさいルビを振りたい人間には残念ながら向いていません。

表紙データの作成

Canvaで大体どうにかなる。
カラープロファイルがRGBで問題がない印刷会社であれば、Canvaで大体どうにかなります。(大事なことなので二回)
また、印刷で長年使われているCMYKのカラープロファイルでの入稿が望ましい場合も、PDFでの入稿が可能であればCanvaでCMYKを指定してデータをダウンロードすることが可能です。
Canvaはプリセットされているフォントもそれなりに豊富なので、欲張らなければ大体どうにかなります。(三回目)
どうしても!このフォントが!私は使いたいの!という方は、頑張ってIllustratorの最低限の機能を習得しましょう(割り切ってイラレの最低限の機能をググりながらでも入稿データを作成できます)

表紙データの画像

写真はunsplach.comやCC(クリエイティブコモンズ)を活用する。クラウドソーシングサービスでデザインをお願いするのも1つの方策。
文字を書くのが専業の方には表紙問題は永遠の課題だと思います。
でもですね!意識をして商業出版されている書籍の表紙を眺めてみるとなんとなくのイマジネーションが沸きはじめ、ストックフォトを組み合わせればどうにかなるんじゃないかと思えるようになってきます。
タイトルの配置に自信がない…というときは「奇を衒わなければ」大体なんとかなります。概ねデザインは引き算が重要なので、余計なことさえしなければ大丈夫です。写真を撮る際の構図もデザインの参考になるので参考にするのも1つの手です。
それでもえぇ…と思った方、洋書のペーパーバッグを眺めてみましょう。日本人の感覚からすると「ダサくない…?」というものが結構あるので「商業ベースでもこんなものか」と安心できますw

入稿データの作成

Adobe Acrobatで調整。
特殊なフォントを使用していなければワープロソフトから書き出したPDFでもおそらく大丈夫なのでしょうが、念のためAcrobatでアウトライン化(フォントの図形化)しています。(自分の環境と相手の環境は違って当たり前なので)
Acrobatはサブスクリプション形式なので月々地味に経費がかかるのですが、仕事でPDFデータを編集することもあり、かつ自分から契約書の電子署名依頼を送信することが(ごく稀にですが)あるためAcrobatは必要経費と割り切って導入しています。まさか同人誌の制作でも活躍するとは…w

まとめ

最近発行した「小夜啼鳥と薔薇の花」も上記の環境で制作しました。手元に届いた際にチェックしましたが、印刷関係のトラブルは特に発生していません。
20年ほど前と比べて自費出版は圧倒的に諸々のハードル(資金面でも)が下がっています。一冊だけで良いから自分で作った本を発行してみたいという方、是非チャレンジしてみましょう!
初めての時は慣れないことの連続で大変だと思いますが、その過程すら後から振り返ると貴重な体験だったと思えるはずです。

サポートいただけると嬉しいです。いただいたサポートは執筆・翻訳に関する書籍やツールの購入に充てさせていていただきます。