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【はじまり②】23歳女子、新卒。将来独立希望で農業生産法人に入るが、挫折して退職

前回のはなし

理想は「安定」の生活

「安定」というと、公務員や銀行員など手堅い職業が浮かぶが、

当時私が求める「安定」は、会社が潰れても、食っていける力だった。

当時の採用担当者に「(畑の方じゃなくて)営業事務の方じゃなくていいの?」と心配そうに聞かれた。

私は二つ返事で、お願いします!と伝えた。
私の目標は、その会社で修行して、何らかの形で独立することだった。

事務では意味が無い。

畑のノウハウを学び、自分でやっていける事業の形を見つけるのだと。


周りは猛者ばかり、自分の甘さを思い知る


私の周りは中途入社の
仕事の酸いも甘いも知った、本気で農業をやりにきた
「戦いにきた人」ばかり。

そして同様に新卒で入社した子も、
ガッツがあって、何を言われてもめげない子だった。

それに比べ、私は要領も悪く、立ち回りもうまくいかない。空気も読めない。そして何より、仕事に対する姿勢がいい加減だった。

そしてどこかで、「こんなもんでしょ」なノリで仕事と向き合っていた。

「何に力を入れていいのか分からない…」
とつぶやくと、
「全部を全力でやれよ」

と返ってきた。(そのとおりだ)


恥ずかしい。
情けない。
痛感する、傲慢さと未熟さ。


リスクをとって、大規模農業?

ある時、会社と繋がりのあった別の農家さんの畑に
チームで手伝いにいったとき。

文字通り信じられないくらいバカでかいトラクターを見て、コッソリ値段を聞いた。


うん千万円…


当時の会社が進めているのは、大規模農業。

あれほど大きなトラクターを購入しなくとも、売上を考えれば、必要な投資は必ずある。


けれど、

私は大きなお金を動かして、
つまり、リスクをとって、独立がしたいのか?
分からなかった。


でも、違う気がする。
自分が欲しかったのは
ただ、会社に頼らなくても、自分一人でも生きていける力。


本当にここで働きたいのか

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繁忙期は、朝4時10分出社、夜7時半に退社。


仕事のストレスと労働時間が過酷さが重なり、
徐々に体が付いて行かなくなった。
頭も回らなくなってきた。生理もこなくなった。

爪周りは洗っても洗っても落ちなくて、土で真っ黒になっていく。人前でごはんを食べるのが恥ずかしい。

コンテナを運ぶときに当たるため、足がアザだらけになる。

疲れてお風呂の中で数時間、眠ってしまったり、
捨てる気力もなく、家にはゴミ袋がたまっていく。


繁忙期が過ぎたある日、唯一の女性の先輩社員と話した。

「とよは、本当にこの会社で働きたいの?」

長野にきて、11か月。
退職することにした。

自分がどんな農業の形を求めていたか違いも分かったし、
体力的にも、ここで前向きに学び続けるのも限界だった。


襲われる「まずは3年同じ会社で」の呪い


スキルも知識もない、自分には社会的に価値もない。

「まずは3年がんばろう。3年の中で自分の形を見つけよう。」

誰かから「3年」という言葉が重くのしかかった。
本当は1年足らずで、退職なんかしたくなかった。

大学を卒業した周りの友人は、まだ頑張って働いている。
むしろ、自分より過酷な環境でも。

けど、もう無理。

自分の代わりに誰かが苦しんでくれるわけではない。
苦しいのは自分だから。

家族や友人にも連絡し、
就活時代お世話になった先輩方に報告の電話をした。

その時が人生で一番みじめだった。

私はどうしたいんだろう?
未来が見えないことに、漠然とした不安をもったまま、
一人部屋でぼんやりとしていた。


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