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公務員の専門性ってなんだろう

はじめに

近頃公務員界隈にも高度な専門性や能力のある人材の確保や育成の話題がつきません。

人事院では下記のように大学院で学んだ方や民間等で高い業績をあげた方に高い報酬を払えるような給与制度の変更がなされました。


また、主に情報政策系の部署では、外部から民間等で実績のある方を積極的に受け入れている印象です。有名なのは東京都渋谷区や福島県磐梯町でしょうか。

一方で、一般行政職として入庁した我々のような職員は、3〜5年を目安に部署の異動をしながらキャリアを積んでいきます。

異動先によっては今までと全く異なる業務を担当することになるため、一から関係法令や知識を勉強し直すことも多いでしょう。

そのような人事異動によって、役所の中での仕事の仕方はわかるようになってきたけど専門性なんて全く無縁だよと思われる方もいるのではないでしょうか。

私自身も初めての異動によって焦りを感じると共になんとも言えないモヤモヤを感じるようになりました。

今回はそんなことを気持ちをきっかけに、市役所職員であり一般行政職員としての専門性について考えてみたいと思います。

専門性があると感じる人たち

例えば近頃自治体で流行りに流行っている「自治体DX」。
電算担当職員や情報政策担当課職員のように自治体職員は専門的な知識や技術を発揮して活躍されている印象です。

あるいは法制執務関係。
条例改正などを担当している職員の仕事ぶりを見ると、使用しているのは日本語のはずなのに読んだだけでは理解できないような仕事をされています。

はたまたスーパー公務員と呼ばれ、全国的にも知名度があるような特異的な職員さんもいらっしゃいます。圧倒的な成果や発信力を持っている方々を見ると、なんだか遠い世界のように感じてしまいます。

普通の職員に求められるものとは

一方私自身を考えてみると、とてもではないですが専門性があるとは言えません。私でなければできないような仕事があるはずもなく、異動したとしても全く問題なく業務はまわっていきます。

そんな普通の職員に専門性が必要ないのかと調べてみると、先行研究を見つけました。林奈生子氏の著作である『自治体職員の「専門性」概念』です。

本書にて自治体職員の専門性について次の4点を挙げておられますので引用します。

1.倫理
2.専門的な知識や技術
3.政策立案展開力
4.基礎

自治体職員の「専門性概念」|林奈生子

ひとつずつ見ていきましょう。

1.倫理

一定の考え方や行動の型。行動の根拠となる心理的作用。職務に関する行動の適正な判断基準。

自治体職員の「専門性概念」|林奈生子

入庁後真っ先に研修を受けるであろう公務員倫理。
確かに公務員には民間とは異なる行動規範が求められており、世間からの目線も厳しいものがあるように感じます。公務員に求められる倫理はマナー的な側面だけにとどまらず、汚職等を防止する側面もあるでしょう。

見方を変えてみると、求められる倫理によって公務員としての仕事ができるとも考えられ、我々を市役所職員たらしめる部分でもあります。

専門的な知識や技術

職務遂行上求められる専門的な知識や技術。

自治体職員の「専門性概念」|林奈生子

おそらく一番イメージされやすいものでしょう。
それと同時に、日々の業務を遂行するだけでは身についていないのではないかと感じる部分でもあります。昨今話題のリスキングもこの部分をさしているものと思われます。
また、自治体の規模によっても求められる専門性は異なる気がします。

政策立案能力

問題解決のための方法やその計画を作ること。政策プロセスの実施。

自治体職員の「専門性概念」|林奈生子

市役所職員らしい専門性が出てきました。
最近私が最も関心のある、サービスデザイン思考に基づいて住民を起点とした政策立案についても、自治体職員の専門性の1つと言えそうです。

基礎

職務遂行上求められる基本的な能力。
①接遇態度②資料の収集・整理のノウハウ③基本法令に関する知識④当該地方公共団体の概要⑤問題解決のために必要な分析力⑥課題への的確な対応能力

自治体職員の「専門性概念」|林奈生子

基礎というとおり満遍なく社会人としての能力が求められていると感じます。中級以上の職員になると⑤や⑥に関する研修を受ける機会も増えてくると思いますが、④の当該地方公共団体に関する知識は是非とも備えておきたいものです。

なぜ専門性にモヤモヤするのだろう

ここで自分自身の現状について考えてみます。

  • 研修等を担当する部署に所属しているため、能力開発に興味がある

  • 全国で活躍されている同業者をよく目にするようになった

  • 初めての異動でゼロからのスタートとなった無力感

ここまで考えてみたところ、おそらく初めての異動を経験した職員にありがちな症状なのではないかと思えてきました。

自分のイメージしていた専門性とは、「職務遂行上求められる専門的な知識や技術」のことであったため、異動を経験したことでそれらがなくなったと感じていたと思われます。

専門性というと派手なものをイメージしがちですが、自治体職員としての仕事について考え直してみると、派手なものばかりではないことに気づきます。

上記のように、自治体職員に求められる専門性とは倫理、専門的な知識や技術、政策立案展開力、基礎の4つであることを考えると、他の3つを高めることで異動先でも活躍できるような専門性のある職員になれると思いました。

まとめ

自分のモヤモヤした気持ちをnoteに書きながら考え直すことで、その理由や新たな学びを得ることができました。

異動後の部署で求められる「職務遂行上求められる専門的な知識や技術」を学び続けることはもちろんのこと、公務員として求められる倫理、政策立案能力、そして社会人としての基礎を高めていくことで、どんな場所でも必要とされる職員を目指していきたいと思います。


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