見出し画像

第11回 「公」の崩壊 佐高信

 最近出した森功との共著『日本の闇と怪物たち』(平凡社新書)の第四章は竹中平蔵である。
 「国際政治学者」と称している三浦瑠麗が、夫が経営する太陽光発電投資会社の問題で集中砲火を浴びたが、もっと問題なのは竹中だろう。大体、メディアが竹中を「大学教授」と書くのが、まず間違いである。規緩和ならぬ規緩和の政府の会議の委員をしている時も彼はパソナの会長だった。そして非正規雇用を推進する発言を繰り返して、パソナの拡大に貢献したのである。これ以上の利益誘導はない。
 私は2020年に『竹中平蔵への退場勧告』(旬報社)を出した。竹中は日本マクドナルドの藤田田に取り入り、フジタ未来経営研究所の理事長となって、その広告塔の役を務めたので、私は"マック竹中"と命名した。その後、"パソナ平蔵"というニックネームも追加したのである。
 金融担当大臣だった竹中が、弟分の木村剛がつくった日本振興銀行を異例に早く認可したことが問題になり、『日刊ゲンダイ』が「木村剛よりもっと悪い竹中元金融相の大罪」と報じたこともあった。しかし、『朝日新聞』をはじめ、大手メディアはなぜか、その動きを追わなかった。
 公私の区別がつかない自民党に世襲議員が多い。私はこれは「公職私有」だと思うが、それに無感覚な小泉純一郎や安倍晋三などが、「いまだけ、オレだけ、カネだけ」で公を知らない竹中を使う。竹中が総務大臣の時の副大臣で、竹中を師と仰ぐ菅義偉も同じである。小泉が竹中を使って強行した郵政の「民営化」はつまりは「会社化」であり、「私営化」だった。政治から公がどんどん失われていく。
 水俣病は「公害」と言われるが、「企業害」であり、「私害」である。「公」を「私」が食い破っていく過程でそれは起こった。

(さたか・まこと 経済評論家)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?