見出し画像

(詩)光

光 

はじめに暗闇があった
おれが生まれたのは
ぬるぬる生暖かい暗黒世界
ここでおれはすくすく育った

おれが立つ大地には
酸の混じる有機溶岩が流れ
すべては柔らかく形なく
そして暗かった

言い伝えによると
この闇はもう一つの闇からうまれ
その闇もまた別の闇から生まれた
それは果てしない闇の連鎖

だが別の伝承によると
この闇の世界の外には
別の世界があるという
そこは光に満ち
冷たく乾いているらしい

でもおれは光が何かを知らない
光の世界が実際どんなところか
誰も見たことはないのだ
だからただの神話だと思っていた

だがある日突然世界が変わった
どこからか白いものが現れ
闇の中を移動しながら
周りの世界を白く染めていく

これが光なのか
別世界から来た使者なのか
でも、何のために?

そのまま通り過ぎると思いきや
光はなんとおれの真上にとどまり
じっとおれを照らした
おれは白い圧を感じて
神秘的な恐怖に襲われた

光は厳しい眼差しで
おれを見つめていた
測定し 評価するかのように

それは善か悪か 救いか滅びか

そのとき光の元から細長い腕が伸びてきて
これまで触れたことのない
冷たく硬い輪がおれを捉えた

鋭い痛みとともに
おれは温かい大地から切り離され
この世界の外へ運ばれていった

光の世界へと

(MY DEAR 336号投稿作)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?