夢へのルート ~HKT48 5期生昇格発表で思う事~

昨日(2021年12月29日)の「脳内パラダイス」公演にて、HKT48・5期研究生の昇格が発表された。
お披露目から3年余り。いちオタクとして思うのは「長かった」という事。正直、遅すぎるような気もする。

なぜ昇格がここまで遅れたのか。研究生達のスキル不足では、決してないように思う。「博多なないろ」公演やR24「博多リフレッシュ」公演、各チーム公演のアンダー出演など、研究生は正規メンバーに決して見劣りしないパフォーマンスを見せていた。それは或いは素人目、ファンとしての贔屓目線があるかもしれないが、多くのHKT48ファンに同意してもらえるのではないか、と勝手ながら思っている。

ではなぜ、ということを考えた時に一つ想像されるのが「なるべく同期一斉昇格させたい」という思いが運営側にあったのではないかという事。HKT48の研究生は過去、ドラフト2期生、4期生、ドラフト3期生が同期全員一斉昇格をしている。ドラ2に先立つ3期生も、”なこみく”の2人が先行して昇格した以外の7人は同時昇格である。「48グループのなかで一番仲がいい」とされるHKT48の中でも、同期の絆、仲の良さというのは折々に垣間見えるもの。同期の中で昇格時期に差が出ることで、先に昇格したメンバーと”取り残された”メンバーの間に溝ができるのはよくない、という考え方があるのかもしれない。

一方、同期一斉昇格の条件になるのが「全員が一定レベルのスキルを身に着けていること」だろう。一斉昇格させるために、水準を満たしていないメンバーまで昇格させるのでは研究生制度の意味がない。
4期生、ドラフト2,3期生の場合、これを満たしていたので一斉昇格が出来たのではないだろうか。4期生はHKTのなかでも「黄金世代」と呼ばれるほどの実力者揃い、ドラフト生の場合はお披露目前のレッスン期間がトータルで長く即戦力的要素が強く、同期の人数も少ない(ドラ2:3名、ドラ3:5名)のでレベルが揃いやすい要素となっていた。
翻って5期生は14名。同期の人数としては1,2期生(各21名)に次ぐ多さ。人数が多ければそれだけ差も出やすくなる。チーム公演のアンダー出演デビューにも差が生まれ、特に最年長の長野雅は混成チームであるひまわり組「ただいま恋愛中」公演に唯一出演経験が無いなど出遅れが目立っていた。

こういった事情があり、今年の春に4名(上島楓、水上凛巳花、石橋颯、竹本くるみ)が先行して昇格したのはある意味では不本意だったかもしれない。この4名は同時期に発売されたシングル「君とどこかへ行きたい」の選抜メンバーであり、水上は3作、上島は2作連続での選抜入り。お披露目から時間が経過する中、選抜メンバーをいつまでも研究生としておくことができないという事情はよく分かる(デビューシングルのセンターを務めた田島芽瑠も、3rdシングルの発売と前後して昇格している)。

ただ、この時点でも筆者は、活動中の研究生を全員昇格させてもよいのではないかと考えていた。しかしそうなったときにネックとなるのが、前年(2020年)春から秋にかけて休養していた長野雅の”出遅れ”。前年秋の新劇場オープン以降行われていた「博多なないろ」公演にも参加できず、ステージに立つ機会が研究生公演「脳内パラダイス」に限られた長野が、「博多なないろ」で先輩とともにステージに立つほかの5期生と差を広げられているのは明白だった。長野ひとり残して他メンバーの昇格という選択も、精神的な不安定さが垣間見えた長野には酷でありなかなかとりづらい。結果、昇格のタイミングが取れないという一面があったのではなかろうか。
(勿論、これが昇格発表が遅れたすべての理由ではないだろうけれども)

実は長野は、筆者の推しメンの一人である。最初の休養から復帰した頃から特にウォッチしているのだが、そのころの長野はどこか前のめりというか、気持ちばかり先走っているような印象があった。相撲に例えれば上体が前に行っても足がついて行かないような状態で、そうなるとばったりと倒れてしまうのは必定、Twitterでの不用意な発言もあり、一部活動の制限(事実上の休養)となってしまった。
HKT48では過去、初期のエースメンバーである兒玉遥が長期休養(後に躁うつ病だったことを公表)し、グループへ復帰することなく卒業ということがあったので、長野が同じようにならないかファンとして心配していた部分が非常に大きかったのだが、今年の秋に再復帰してからの長野は地に足をつけているというか、自分の現状を受け止めたうえで前に進む意欲、あるいは覚悟があるように見えている。

今回、5期研究生8人の昇格に当たっては、長野のこういった”変化”がプラスに働いたのではないか、と思う。他のメンバーが概ね以前からアンダー出演しているチームに昇格となった中、長野の昇格先がチームKⅣになったのは彼女に対する期待、あるいは叱咤激励かもしれない。HKT48のファンであれば周知の事実だが、チームKⅣ公演の演目「制服の芽」はダンスのレベルが高い高難度の演目である。とりわけダンスを不得手とする長野にとっては大きな試練とも言えるが、裏を返せばその壁を乗り越えて欲しいとの期待、あるいは越えてくれるだろうとの確信が運営サイドにあるのではなかろうか。

「博多なないろ」公演、チームイエローのセットリストでラストを飾る楽曲『夢へのルート』にこんな歌詞がある。

ゴールまでの長いルート みんなそれぞれだよ
遅くたって確実な道を選ぶ人もいる

今回昇格した8人、特に長野雅にとって、昇格までの道のりは遠回りな道となったかもしれない。ただ、その回り道は決して無駄ではないし、ここをゴールとせず、さらなる道を進んでほしい。いちファンとして、それぞれの道を見届け、あるいはともに歩んでいきたい。

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