マガジンのカバー画像

n + 1

51
n+1関連のものを集めたもの(別名義も含む)
運営しているクリエイター

#小説

しにたみくん

 しにたみくんは、いつも私の傍にいてくれる。  朝目が覚める。セットしたアラームが鳴る前に起きてしまって、のろのろと手を枕元のスマホに伸ばし、手に取ってアラームを解除する。はぁ、と欠伸ではなく溜め息をついて、私は起き上がる。  また〝今日〟が来てしまった。  いつもと同じ繰り返しの今日。さして変わることもない今日。布団の上でぼーっとしながら、空虚な頭の片隅で、絶望を感じている。そんなときしにたみくんは語り掛けてくる。彼はいつも私と同じ時間に目を覚ます。 「おはよう。今日も始

僕と彼女

「君は相変わらず物事を考えすぎるきらいがあるようだ」 久しぶりにうちへ帰ってきた彼女は、一人で二人掛けのソファーを占領しながらそう言った。くぁぁ、と欠伸をしてごろりと仰向けに寝転がる。 「君が考えなさ過ぎるんだ」 「私は私だよ下僕くん。とりあえず食事を用意してくれたまえ」 ふふん、と彼女は鼻で笑った。毛づくろいをしながらにゃおんと鳴き、ごろりとうつ伏せになる。僕はそんな彼女を横目で見ながら、お皿にじゃらじゃらとキャットフードを注いだ。 「君はいいな。気まぐれに生きられて」 「

クセモノぞろいの友人たちへ

拝啓、僕の最高に最強に個性的な友人様。 ご機嫌麗しゅう。そちらの天気など如何ほどだろうか。こちらは梅雨というのに雨はあまり降らず、クーラーが必要になるほど暑くなったかと思えば今度は涼しいくらいで温度差で体がバカになりそうだ。 さてこの度こうして筆を執ったのは他でもない。特別に伝えたいことがあるからだ――というわけでもない。 ただの気分だ気分。たまには畏まったことをしても良かろう。とはいえせっかくなので、日頃の感謝でも綴ろうではないか。 まずは先日の誕生会、ありがとう。