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2022年11月の記事一覧

退屈

退屈な時間ができるとつい考えてしまうんだ この足が宙へ躍り出たときの体の軽さや 吊られたときの重力の重さ あの水を飲み干したときののど越しの良さや その刃の切れ味の鋭さ 僕はそれを夢想してはいつも 目を覚ますように退屈な時間から抜ける 退屈は僕を殺すんだ

夜に眠る

夜に眠ることは勇気がいることだって知ってた? 今日を終わらせる勇気 明日を始めさせる勇気 過去を考える勇気 未来を考える勇気 ほらたくさんの勇気がいるとき だから勇気が足りない人は 夜眠るのが怖くなっちゃうんだ 本当は勇気がいることなんかじゃないのにね

言葉

言葉。それはときとして胸を刺す。それはときとして心臓を鷲掴みにする。それはときとして涙を流させる。音や匂いや形を変えて、言葉は真実を伝えようとしてくる。嘘を伝えようとしてくる。感傷を揺さぶろうとしてくる。その言葉の重みはどれくらいだろう。凶器になるような言葉の重さは。

繰り返す日々

同じことの繰り返しの日々 そう言ってしまうけど本当に同じだろうか その日の天気、その日の服装、その日の気分 笑った回数、ため息の回数、話した相手 本当は違うのに、何故同じに感じてしまうんだろう 空から女の子でも降ってきたら そんなことはなくなるのに

私は私である 私はあなたではない 私は君ではない 私は私でしかない 私の喜びを知るものは私だけ 私の楽しみを知るものは私だけ 私の痛みを知るものは私だけ 私の悲しみを知るものは私だけ 私を知っている 私を理解している そんなこと云うやつは嘘つきだ 私は私にしか理解し得ない 私は私にしか心を開かない 私は私にしか 私の心を読めるのは私だけ 私の思考を読めるのは私だけ 神様すらもわからない 私の動力源の思想 私は死を楽しみに生きている 私は死を待ち遠しく生きている 私は死に恋い焦

夢の私

私は私のことだけを ひたすらに考えていたい 私は私のことですら 半分も理解できていないから この小さな脳みそに残る 自分という不確かな記憶 擦れて掠れて傷んだビデオテープのようだ 再生するたび薄くなってく ひたすら私はそれを見る いや見させられている 夢が私を捉えて離さない 思い出せと 感じろと 眠っている間に見せてくるのだ 楽しかった記憶 悲しかった記憶 もしかしたらの記憶 捏造の記憶 私はわからなくなる どれが私ですか なにが私ですか どこが私ですか 私はここにいる ここ

大したこと

たとえば首筋に落ちた雨粒一つ たとえば足元に転がった空き缶一つ たとえば目元に貼り付いた髪の毛一つ 大したことはないでしょう 大したことはないでしょう だけれどそれに気づいて意識を向けると ふと自分の輪郭がぼやけていたことに気づくのです

早朝覚醒

目が覚めたがまだカーテンの隙間から朝日の光は入ってきていなかった。暗闇だ。今は午前四時。秋から冬に変わる瞬間はひどく寂しい。私はこれからはじまる今日のことを憂う。寒さは鉛だ。押しつぶされそうになりながら毛布を引っ張って被る。ああ嫌だな。何が嫌かわからないままそう呟いた。

自分へ

自分自身のことをいちばんよくわかっているのは もしかしたら自分じゃないかもしれない それは恋人かもしれないし、親友かもしれないし、赤の他人かもしれない けれど自分しかわかっていないこと 誰にもわからない自分のこと そこに向けた言葉を言えるのは 自分だけだと思うのです

メンヘラ

僕が生き残るにはこのほっそりとした首を締める必要がある あるいはこの手首でもいい 縄で縛って放置してくれ 食べ物を与えないで飲み物を与えないで 空気すら与えないで乾かしてほしい カッターの刃を一メモリずつ数えておくれ ピルケースのシートを一錠ずつ数えておくれ それがだめなら頭を殴って 僕の記憶を消しておくれよ たったひとことで片付けないで 僕の人間性がいくら矮小だとしても どうか僕を決めつけないで そのキャラクター性などありふれているから 無個性だといっそ憐れんでおくれよ 個

証明

はめ終えたパズルを分解するように 組み立てたガンプラを解体するように クリアしたセーブデータを消去するように 僕は無力さを証明したい 夏に暖房を冬に冷房を お湯に氷をアイスに熱湯を 相反するもの同士をぶつけることでしか得られないものがそこにあって 僕は天邪鬼だからそういうものを 吸って吐いて溜めて捨てて そうすることでしか生きていけない 哀れな下僕でしかないのです

月の裏側

月の裏側に行ったことはあるかい 太陽の光も届かぬ暗闇で 地球の喧騒も聞こえぬ静寂で 瞼を閉じて耳を塞げば ここは孤独の三番街 昼寝するにはぴったりさ ああだけどとても寒いから 厚手の毛布を忘れないで 温もりさえも忘れたら 永遠に帰れなくなってしまうから