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ACE+敏感性+内的サバイバルリソース ─ アーロン博士への想い ─

私の文章を読むために時間を割いてくださる方へ改めて日頃のお礼を申し上げます。皆さまの記事を拝読したいと思いながら、なかなかできない理由を少しだけ記させてください。

私は小さな刺激で良くも悪くも内面に大きな興奮の波が起きてしまいます。その刺激の種類は嗅覚、触覚、気持ちに感じる感触(?)など様々ですが知的な刺激もそのひとつ。好奇心が大きい一方で、常日頃これにとても難儀します。そのため夕刻からは良質な睡眠に向けての準備を極力丁寧に行います。思考のアウトプットに繋がりかねない行為をことごとく遮断し、部屋の明かりも調整し、感触や匂いに配慮し、食事内容にも気をつけ、頭が能動的な回転をしないよう徹底的に刺激的コンテンツに触れる時間を排除していきます。アウトプットに繋がる行為はできるだけ朝〜夕方までに済ませるよう隅々まで気を配ります。そのためなかなか気になる方の過去記事を辿れる時間が限られてしまい、さらに書きたいことが山のように浮かび一つに絞るのに多くの時間を使ってしまいます。いつも見て頂いてばかりで、なかなか皆さまの記事にまでお伺いできず申し訳ありません。(……と、なんか弁解がましいのも嫌ですよねえ。これは自意識の強さから起きてしまう私の妄想的産物ではありますが、今回だけあえて書かせていただきました。すみません笑)

今後HSPシリーズをアップする前にひとつ書いておきたい気持ちと今後の展望などを今日はまとめてみようかと思います。これはHSPの提唱者エレイン・N・アーロン博士への感謝と本の感想でもあります。

半世紀近くのあいだ私は自分を『内気』だと思い込んで生きてきた

アーロン博士の本を手に取り、〝内気や引っ込み思案とHSPの違い〟について書かれた記述を読んで、過去の記憶が走馬燈のように駆け巡り、博士の言葉が心に深く浸透し咽び泣いてしまったHSPが、世界にいったいどれほどいるでしょうか。私もそのひとり。

HSPと自覚しつつも創作にかまけてきたせいで今頃になってようやく博士の著書に真正面から向き合い、ついに敏感性の真実の姿に出会うことができました。本当に驚きです。この、内面に嵐のように波立つ感情、恐れ、不安、羞恥、自責の念……これらの正体が敏感気質によって引き起こされてしまう「内面の高い興奮性」だったなんて。また内気な傾向は「生まれつきの性質」ではなく誰しもに起き得る「心の状態」だと再認識しました。
子供の頃から『私だけが極度の内気に生まれついた』と思い込んでいた。自分で自分に間違った評価を下し続けていた。私は内気に生まれついたわけでは決してなかった。ただ単に、超がつくほど「敏感」だっただけ。あまりに敏感だったから、外部や内部から感受する情報量に圧倒されてしまい身動きが取れなくなっていただけ──。
身近に支えてくれる大人もおらず、精神的に好ましくない環境に置かれていたせいで、悪い影響を人一倍多く被り、あらゆるものを怖く不安に感じていたのだと……まさかこの歳ではっきり正確に捉え直すことになるとは。この〝極度の内気〟問題に対しては、間違った評価に基づく記憶を正しい評価に基づく記憶へと置き換える(リフレーミングする)だけでよかった……──こんな事実、いったいアーロン博士以外の誰が教えてくれたでしょう。敏感性(遺伝に関わるとされるSPS因子)を発見し心理学概念にまで高め世間に広めてくれた博士にどれほど感謝をしてもしきれません。

敏感気質だったからこそ生き延びられた

これは大きな価値のある癒しでした。先に書いてきたとおり、敏感(高感受性)だったからこそ内面に力があったことに気づいてはいたものの、自分以外の信頼できる大人からそう認めてもらえた(例え本を通してでも)ことは、人生においてかけがえのない出来事です。(ギフテッドの本では主に頭脳に焦点が当てられていたためこの癒しは得られなかった。本に出てくる人たちと家庭環境のあまりの違いに虚しくもなった。)

アーロン博士のインタビューしたHSPの中に、ダンという人がいます。彼の体験と彼の内面の話を読んでいるあいだ、『なんで私の心情がこれほど正確に書かれているんだろう』と不思議な感覚におそわれ、同時に胸底から込み上げてくる熱いものを抑えることができませんでした。幼い頃から機能不全家庭で暴力と向き合ってきた人一倍感受性が高いHSP。ACE(※)を抱えて生きてきたHSP。彼が乗り越えてきた方法、そして彼が自分の内面に見ている世界。心の中にある『ブラックホール』──これは私の中にもある。

ダンの言葉とそれに向けた博士の言葉ほど心に響いたものはなかったです。『〜』は省略部分。

〜話はしだいに「暴力への嫌悪」へと向かっていった。ダンは年中兄とケンカしていたことを思い出した。兄はダンを押さえつけ、叩いたり蹴飛ばしたり〜 ダンは子供のころ、〜よくタンスの中や洗面台の下、車の中、窓枠の椅子の下などに身を隠した。〜たったひとりだけ魂の救済者がいた。〜この祖母は、「敏感すぎる」子供が生き残るための戦略を編み出すために必要な精神的安定を与えてくれた〜ダンにはまた、素晴らしい弾力性とでも言うべき資質が備わっていた。「敏感すぎる」からといって、生き残るための粘り強さに欠けるというわけではない。〜彼には「親密さへの飢え」があり、〜
「僕の内面にはブラック・ホールがあるんです。生きるためのたった一つの理由さえ考えられなくなることもあります。生きても死んでも同じだと思ってしまう」〜彼は、自分の「敏感さ」と人生経験が相まって織りなす豊かさがあることもわかっていた。
「ものごとにとても深く感動するんです。その大きな喜びを失いたくはありません」
 彼は勇気に満ちた笑顔を見せた。
「大きな孤独感がありますけどね。人生の嘆きを味わえるようになるまでにだいぶ時間がかかりました。今はスピリチュアルな答えを探しています」
 ダンは生き残っている。

『些細なことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ』
──エレイン・アーロン著

一方で、私はいわゆる親からの「放ったらかし」の恩恵の方も受けとってきたことを既に自覚していて、そのことも書かれていました。私の場合は本の中にロールモデルがいて、空想と自然への愛情が心の支えだったからです。この記述も私の実感にぴたりと適合しており、これほど共鳴するものに出会えた喜びを隠しきれません。

たとえ両親がほったらかしにしていても敏感な子供は充分に愛情を感じ、一人でちゃんと育っていく場合もある。こういう子供は、おそらく想像上の人物、本の登場人物、自然などに慰めを見出し、支えにするのだろう。普通の子供なら耐えられないような孤独にもHSPの子供は耐え、幸せを見出だせる。〜普通の子供なら巻き込まれて混乱するところを、HSPの特徴である直感力が〜あなたを守るということは起こりうる。大人になってから子供の頃の傷を癒やす際にも、直感力はその過程を助けてくれるだろう。

『些細なことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ』
──エレイン・アーロン著
『素晴らしい弾力性』『敏感さと人生経験が相まって織りなす豊かさ』『直感力が〜あなたを守る』の表現に関わる(私の主観による)心理の動き。

敏感さにより獲得できる資質がある。それは、広い視野を持ち、複雑さに耐え、他人に理解を示せるようになることでもある。高い感受性を持つ人間ならではの内なる勇気と自分軸なのです。

ACE(Adverse Childhood Experience)
── 逆境的な子供時代の体験 ──

ネット検索をして、ACEスコアを出せる質問を見つけ(おそらく大元であろう)表現のものをやってみると何やら66点という結果に。医療機関などで使われているテストの表現は様々で、中には質問の出し方にやりきれない歯痒さを感じるものもありました。テストによっては、母親が暴力を受けるのを毎日見続けた人間が「逆境」に当てはまらないものがあるからです。暴力を振るうのが「父親や大人」に限定されているためです。また、ほぼ毎日私は自分自身が暴力を受けてきましたが、相手が「大人」に限定されるためこれもテスト中の〝身体的虐待を受けた〟には該当せず〝暴力を受けてこなかった人〟とされてしまいます。やはり特殊なケースは場合によっては『逆境的体験』にすら含めてもらえないようです。だから子供の頃から『この苦痛は誰にもわかってもらえない』と感じてきたのも当然のことでした。
兄弟間の暴力については心理学でも研究の対象にすらなっていないらしく悲しい現実を見る思いです。反抗的で暴力的な(身体的に頑丈で逞しい)子供が親や兄弟に暴力を振るう現象は現実社会に確かに存在しているのですけどね。しかしアーロン博士の本(ダンの例)ではそのことがきちんと表現されていました。博士のこの行き届いた目線に感謝。

さらにアーロン博士がインタビューしたHSPの中で最高齢の女性が語った言葉。

「子供の頃の困難さは、魂によって選び取られたもので、スピリチュアルな人生の宿命だった。」〜他の人が普通の存在として一定レベルに落ち着いている間に、困難さを持つ人の内的人生は成長し続けるということだろう。

『些細なことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ』
──エレイン・アーロン著

──能力を持って生まれたからこそ課題が与えられ、その道を辿り今ここにいる。

いまや脳内が科学的根拠に基づく論理しか受け取ろうとしない私にとって「スピリチュアル」というワードには抵抗がありつつも、言わんとする意味、言葉の背後にある心理の深い部分については細部まで感じとれてしまいます。……これが『直感』の不思議なところ。ましてや同じ敏感気質の年長の人の言葉には特別な重みを感じます。
また、ここで述べられる第六感的な感覚はSPS因子の濃度の濃いHSPがより強く感じとれる特徴なのかもしれません。強度HSPは理屈では説明しづらい『内向的直感』を持っているからです。(この内向的直感を初めて概念化したのはスイスの精神科医・心理学者のカール・グスタフ・ユングですが、アーロン博士の長きに亘る度重なる慎重な研究がこれに潜在的意味を付加したように私は感じてしまいます。これが真価を発揮するのは人間的に複雑で困難な体験をしたときなのですね。苦難を乗り越えるための新たな道を人の内面に創出する能力こそ、内向直感がもたらす働きの〝真骨頂〟なのだと思います。またこれは敏感な人間を積極的分離へと促し、高次の人格形成を可能にする力にも通じているのではないでしょうか。)
敏感だったからこそ、感覚処理感受性と差次感受性を使って、置かれた状況から「内面を成長させるための学び」をより多く受け取り心を豊かにしてきたのです。敏感人間ならではの偉業といえるのかもしれません。そして彼女に対する感想としてアーロン博士があまりにさらりと書いていた次の言葉に私は絶句しました。

私の友人が語った言葉だが、「最初の二十年でカリキュラムを与えられて、その次の二十年でそれを勉強する」のかもしれない。何人かにとってのこのカリキュラムは、オックスフォード大学院並みのレベルなのだろう。

アーロン博士の言葉

最高の評価の言葉に思えました。頭脳の優秀さだけで人間の価値を測る人たちに奇妙な薄っぺらさを感じてたこと、感情の端から端──両極端を体験した者にしか知り得ない複雑な内面世界があると信じてきたこと、そんな私の中にあった思いとリンクしました。むろん、最高値の知能に匹敵する才能があるなどと言いたいのではありません。ただ、敏感人間が身体的感情的困難の中で精神の混乱を経験しながら生き延びてきたその背景に、たしかに高度な何かを成し遂げてしまう内的資源がある、と感じてならないのですよね。博士がそれをこんなふうに表現されたことに、心が震えました。
実は同じ意味あいを持つごく短い言葉が日本の著者によるHSS型HSPの本にも書かれてありました。強度のHSS型HSPでACEを持つ人(及び幼少期から親密さへの飢えを持つ人)はその言葉こそ必要としているに違いなく……なのに、世界の誰も、どこまで行っても、その言葉をかけてもらえないでいる。私にとっても半世紀近くもの間ずっとずっと誰かに伝えて欲しかった、それはしごく簡単な言葉でした。たったそのひと言を得るためだけに自分はこれほど飢え渇きもがいて生きてきたのだと知り、胸底から込み上げるものがありました。灯台下暗しといいますが、それがこんな近くにあったとは。本のおかげで、私が私に自分でその言葉をかけることができました。

ACEを持つ強度HSPのためにできること

私はずっと絵を描くことや音楽作ることや小説書くことにかまけてきました。……正直いうと、辛い経験を思い出すのが苦しかったのですね。また、困難を抱える人と向き合うとその人の感情と自分の感情との境目がなくなってしまうことを知っていて、それゆえにも避けてきました。(過去に、友人の苦悩を受け止め過ぎて自分が鬱になって仕事を辞めた経験がある。その時の辛さを二度と経験したくなかった。)このように、内面に沸き起こるHSPならではの過度な興奮性を意識的に避けてきました。これまで何度もHSCを援助する何かができないかと考えたことがあり、その度にこの圧倒される内面の高ぶりのせいで自分には無理だ、と思い直していました。だけどここにきて他でもないHSPである人々(博士やインタビューを受けたダンや年長者)が私を癒してくれて、私もACE(辛い子供時代の経験)を持つHSPを癒す何かをするべきなのではないか? 気持ちの境界がなくなる怖さはあるけれど恐れずそれに向き合うべきなのではないか? むしろ私だからこそ共に流してあげられる涙があり、その人たちが一番欲しいはずの言葉を心からかけてあげられるのではないか? と真剣に考え始めました。

他の人が行っているような方法をそのまま真似するのは嫌なのと、心理に関わる経歴も肩書きもないため、何とか独自の方法を探り出しオリジナルなスタンスで行ってみたい。何より、敏感気質に生まれてきたことによる内面の複雑さと豊かさ、敏感気質だからこそ持っている──本に書いてたとおりの『内面へと向かう直感』、第六感のようなもの、を始めとする──過酷な環境を生き延びるための内的資源(リソース)を、直接に、ダイレクトに、表現して伝えられる何かを文章や交流などを通して少しずつ構築していきたいです。

この度も取り留めのない個人的な雑記文に目を通していただきありがとうございました。今後、世間でぼんやり捉えられているHSP像からHSPの本質をあぶり出すような形で長い文章を書いてみたく思っています。世間に訴えかけたい思いからきているのですが、できるだけ内面の興奮を抑えて柔らかく表現できるよう心がけながら書きたいです。興味のある方はぜひ読んでみてくださいね‪^ ^‬

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