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ファイナンシャルプランナー×学童保育の先生。発達障害の当事者である宮田慎太郎さんが伝える、子どもの育ちに大切なこと。

ファイナンシャルプランナーと学童保育の先生。そんなふたつの顔を持つ宮田慎太郎さん。「お金」と「教育」の側面から、子どもたちや保護者を応援する活動をなさっています。

中学生のとき不登校を経験し、発達障害の診断を受けた宮田さん。発達障害の一種である自閉スペクトラム症(ASD)の当事者として、講演活動も続けられています。

保護者の方に安心して子育てに取り組んでほしい──。そう話す宮田さんに、現在の活動やこれまでの経緯、子育てのヒントを聞きました。

お金に関わる制度を紹介。ライフイベントを見据え、経済的な視点から子どもや保護者をサポート

── 学童保育の先生としても活動されている宮田さんですが、どうしてファイナンシャルプランナーになろうと思われたのでしょうか。

障害者手帳や障害年金、自立支援医療制度など、障害のある方が活用できる公的な仕組みはたくさんあります。でも、その情報を知っている人と知らない人の間に、格差が生まれてしまっているのが現状です。

本来は活用できる制度とつながれていないケースが生まれてしまっているんですね。そんな情報格差をなくしていきたい。そんな想いで、ファイナンシャルプランナーとして活動しようと決めました。

ファイナンシャルプランナーは、経済面から夢や目標を達成できる方法を一緒に考えサポートします。ライフイベントなどを考慮しながら、長期的な資金計画を立てて目標達成を目指すのがファイナンシャルプランナーなんです。家計に関わる税制や年金制度、教育資金、医療費、保険、相続・贈与などについて、これまで学んできました。

── ファイナンシャルプランナーとして、具体的にどのような活動をされていますか。

まず、保護者の方を対象にした個別相談やライフプランの資料作成を行っています。僕がお伝えしているのは、具体的な制度や活用時の注意点です。

障害のあるお子さんが活用できる制度に焦点を当てて相談に応じることもできます。制度の紹介だけでなく、「トータルでどれくらいの教育費が必要か」など、個々の状況に合わせた相談も受け付けています。

また、講師活動も行っています。例えば、発達障害のある方が強みを活かして仕事に就くことを応援されている株式会社Kaienさんのセミナーに登壇する機会をいただきました。学童での経験も交えながら、お金の使い方をお子さんに教える方法や障害年金の仕組みなどについてお伝えしました。

他に、障害のある方の就労や生活を支援されているNPO法人アップル・シードさんのセミナーでもお話ししたことがあります。「発達障害当事者とお金」や「親なき後の生活」をテーマに、保護者の方がお子さんの将来に向けて今からできることや、利用できる具体的な制度をお伝えしました。

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学童保育の指導員の顔も。大切なのは、子どもの考えを受け止めること

── 学童保育の先生としても、宮田さんはお子さんや保護者の方を応援されていますね。どんなことがきっかけで、お子さんと関わる仕事を始められたのでしょうか。

ボランティアに参加したことがきっかけです。僕が参加したのは、地域の夏祭りでした。そこで、遊びを通して子どもたちと関わるのがすごく楽しいなと思ったんです。

僕自身、小学生の頃は秘密基地をつくったり山に探検に行ったりして、外で遊ぶのが好きでした。学童で働く中で、子どもたちと遊びを通してコミュニケーションを取ることも多いので、今の仕事とつながっているなと感じます。

放課後等デイサービスで働いていた時期もあって、子どもに関わる仕事は5年目になりました。学童では子どもたちから「みやたっち」「みやっち」と呼ばれています。子どもたちが付けてくれたんです。

学童で子どもたちは、放課後の時間を自由に過ごしています。宿題をしてもいいし、漫画を読んでもいいし、遊んでもいい。そんな環境です。

学童では毎日いろんなことが起こります。例えば、僕が勉強を教える予定だった日に、年上の子が年下の子に勉強を教えてくれて僕の出番がなかったこともありますね。

基本的に、僕たちは子どもたちが学び合ったり協力したりできるようにサポートしています。また、その日あった出来事を日誌を書いて保護者のみなさんに報告していますね。

── お子さんと関わる中で、どんなことを大切にされていますか。

普段から子どもたちの好きなことを聞いたり、教えてもらったことをインターネットで調べたりしています。こういったことの積み重ねが、子どもたちとの信頼関係につながっていくと思っています。

「こうしなさい」「ああしなさい」というように何かを指示するのではなく、子どもたちと共有することを大切にしています。「嫌だな」と思うことがあっても、子どもたちは学校でやらないといけないことを頑張っているはずなんですよね。

子どもたちの話を受け止めること。それが、僕らの仕事なんじゃないかと考えています。例えば、子どもたちが喜んでいるときは、僕も一緒に喜ぶようにしていますね。

「こんなことがあったよ」と話してくれたときは、その話題を深められるような返事をしています。承認されることが、子どもたちの心のゆとりにつながると考えているからです。

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子どもに注意するときは、良かったことも一緒に伝える。行動の背景に注目した関わりを

── 宮田さんはどのような子ども時代を過ごしてこられたのでしょうか。

小学生の頃は、ムードメーカーの役割を率先して担うような子どもだったように思います。クラスの中で自分のキャラクターが確立していたこともあって、毎日学校に通っていました。

でも、引っ越しをして、小学校とは違う校区の中学校に進学することになりました。周りに知っている子がいなくて、友だちがゼロの状態で中学生活が始まったんです。友だちが全くいないところから人間関係を築くことになって、学校に行くのがつらく感じるようになりました。

6年間一緒に過ごしてきた子が周りにいなかったのは、しんどかったですね。学校に行けなくなってから病院に行って、アスペルガー症候群(現「自閉スペクトラム症」)と診断されました。

小学生までは頑張って学校生活を送ってきました。でも、中学生になって得意なことで苦手なことを補うのが難しくなって。「自分にはこんな障害があるんだ」と突きつけられたような感覚でしたね。

同じ診断名であっても一人ひとりの状況は異なりますが、僕は場の空気を読むのが苦手でした。それで、子どもの頃は注意されるまで自分の話をしていたことがありましたね。また、言外の意味やニュアンスがわからず、言葉を字義通りに捉えてしまい、その場で求められている返事ができなかったこともあります。

一方で、子どもの頃から風景を覚えるのが得意でした。カメラのシャッターを切るように、一度見るとその風景を覚えることができます。これは僕特有のものだと医師に言われました。この強みのおかげで、地理が得意科目でしたね。それと、思い立ったらすぐに行動できることも僕の強みだと思います。

── 子ども時代を振り返ってこんなふうに大人が接してくれたらよかったなと思うことはありますか。宮田さんは子どもの頃の経験を講演で伝えられていますよね。

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指摘以外にそのとき良かったことも周りの大人が伝えてくれたら、僕はすごく助かったかなと思います。僕も子どもと関わる仕事をしているので自戒を込めてなのですが、どうしても誰かを叱るときは、改善すべき点が注目される傾向にあると思うんですね。

心に留めておいてほしいことを、伝えないといけない場面もあると思います。でも、「こういうところは良かったよ。この部分を改善したらもっと良いよ」というような声かけをしてもらえると、子どもたちへの届き方も変わってくると思うんです。こういうことを伝えてもらえていたら、僕自身もっと早くから活動できていたかもしれないと感じます。

── これまでの経験から、宮田さんが今お子さんと関わる中で大切にされていることがあるように感じました。

子どもたち同士で喧嘩が起こったときに、一方的に叱ることはないですね。ただ叱ることは、大人を信じられなくなるきっかけになるように感じるからです。子どもの頃、僕もただ叱られるのが嫌でした。

今は両方の立場から気持ちを聞くようにしています。ある行動の背景を尋ねるようにしていますね。それで、次からどうしたら良いかまで考えます。最後は必ず良い方向に話を持っていくように意識していますね。

── 子育てのヒントになるお話をありがとうございました。最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

今は社会全体にゆとりがなくなってきているように感じます。競争が求められがちな世の中だからこそ、子育てで大変な思いをされている保護者の方もいらっしゃるかもしれません。でも、成長のスピードは一人ひとり違います。他の子と比較せず、その子自身の成長を見守る意識をみんなで大切にできたらと思います。

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宮田慎太郎(みやた・しんたろう)
1991年4月生まれ。ファイナンシャルプランナー(FP2級)として、生活設計や教育資金に関する相談を行う。(2022年、FP1級取得予定)その傍ら、学童保育で発達障害児支援に携わる。2022年から、家庭教師を開始。「学校の学びが合わない」と感じている子どもたちを対象に、好きなことや特性に合わせたオリジナルカリキュラムを提供する。英語、社会(地理・政治経済・公共)、理科(地学基礎・生物基礎)に対応。不登校や発達障害をテーマに、全国で講演活動を実施中。

1歳半健診でことばの遅れを指摘される。小学校卒業まで難なく学校生活を送っていたものの、中学1年生のとき転校先で不登校に。大学病院でアスペルガー症候群(現「自閉スペクトラム症」)と診断される。関西学院大学人間福祉学部に合格するも、金銭的理由により辞退。発達障害を啓発する任意団体「福笑」(活動休止中)を立ち上げ、講演会を多数実施してきた。
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