応援ソングライターyu-kaさんに聞く、相手の背中を押す「応援ソング」&発達障害と仕事をテーマにした「企業講演ライブ」に込めた想いとは?
応援ソングライターとして活躍中のyu-ka(ゆうか)さん。シンガーソングライターとして自身の体験や想いを素直な歌詞に乗せた歌をピアノの弾き語りで歌う傍ら、インタビューで聞いた相手の想いを歌詞に込める、オーダーメイドの『応援ソング』をこれまで作詞・作曲してこられました。
また、発達障害の一種であるADHDと20歳で診断されたことをきっかけに、当事者や家族を応援する『はったつソング』を制作し、発達障害について伝える講演やライブも多数実施してこられたyu-kaさん。
企業や経営者の方々を対象に、「発達障害と仕事」をテーマにした『企業講演ライブ』を新たに始められます。そんなyu-kaさんに、応援ソングや企業講演ライブに込めた想いを聞きました。
自分を信じてくれた親友に、助けられた経験が原点に
── yu-kaさんは応援ソングライターとして活動されていますが、応援ソングをつくる原点となった経験はありますか。
自分よりも自分を信じてくれた人の言葉に支えられてきたことが、私の原点です。会社に勤めていた頃、相手の悲しい顔を見たいわけではないのに、仕事でミスをしてしまうことがつらくて。
「自分には力がないのかもしれない」「役に立てていないかもしれない」と自信を持てなくなった時期がありました。
でも、親友は私よりも私を信じてくれたんです。そんな彼女の在り方に救われて、「私は大丈夫なのかもしれない」と力がみなぎってきたんですよね。
──「本人以上に、その人を信じる」親友の在り方が、yu-kaさんの原点となっているのですね。
ライブ活動でも、親友は私のことを信じてくれたんです。2019年3月に、大阪府八尾市で発達障害のある子どもたちや大人の方々、支援者を応援するライブ『yu-kaと凸凹フレンズ八尾LIVE』を開催しました。
満員のお客さんの中でライブがしたいけれど、当時は不安な気持ちも強かったんです。そのことを親友に相談すると、「yu-kaならできるよ」「信じているから、そのまま突き進んで」とボイスメッセージを送ってくれました。
その言葉を聞いたとき「できるかもしれない」と感じて、お客さんが喜んでくれている映像が浮かんできたんですよね。最終的に、満員のお客さんの中でライブができて、自分の夢を叶えることができました。
── おめでとうございます! 応援ソングへの想いは『僕が欲しがっていたモノ』の歌詞にも込められているそうですね。
『僕が欲しがっていたモノ』は、応援ソングをつくるきっかけとなった想いを込めた曲です。親友をはじめ、自分を信じてくれた人の言葉が歌詞になっています。
“君が君を信じるよりも強く
私は信じているから
そのまま突き進んでよね”
“これは心から欲しがってた“言葉”
「僕には力がある」って
初めて知った気がしたんだ”
『僕が欲しがっていたモノ』より
目の前の人を、本人以上に信じる。その在り方に触れたとき、本当に嬉しかったんですよね。周りの大切な人にしてもらったことを、今度は私が音楽で恩返ししていきたいです。
「あなたならできる」「100%あなたの味方でいるよ」という気持ちで、これからも応援ソングを届けていきます。
原点の熱い想いを聴いてつくる応援ソング。一番のこだわりは「在り方」を引き出すインタビュー
── yu-kaさんはこれまでどのような立場の方々に応援ソングを届けてこられましたか。
議員、個人事業主、ラジオパーソナリティ、YouTuber、企業の方、結婚した方など、これまで60曲以上の応援ソングを届けてきました。
── 60曲以上……! 応援ソングはどのような工程でつくられているのでしょうか。
一人ひとりの想いを伺いながら、オーダーメイドで作詞・作曲しています。最初に行うのが、コーチングの視点を取り入れたインタビューです。過去の出来事・今頑張っていること・悩み・今後の夢などについて伺っています。
その後の工程は、作詞・作曲です。好きな歌を3曲ほど教えていただき、共通点を曲づくりに活かしています。落ち込む日があったとしても、好きな歌詞や曲調で、その方を応援できたらいいなと思うからです。最後に、スタジオで収録をして、完成した応援ソングをお届けしています。
── コーチングの視点を取り入れたインタビューについて聞かせてください。
コーチングとインタビューを掛け合わせているところが、応援ソングの1番のこだわりです。その方の在り方や、大事にしていることを引き出せるような質問を大切にしています。
在り方を大切に、夢に向かってほしいという願いがあるからです。その方の感情が揺れ動いた原点の熱い想いを曲にしています。
── その方の「在り方」を大切にされているのですね。
はい。その方の根幹にある想いをサビに込めています。例えば、こんな歌詞があります。
“今日も伝えるよ
価値があるんだよと
ほら あなたは あなたのままで”
『永橋草太さん 応援ソング』より
これは、四柱推命鑑定士で大人向けの運動会を主催されている永橋草太さんの応援ソングです。インタビューで草太さんが話してくださったのは、学生時代の部活動でレギュラーになれなかった経験でした。
でも、仲間や顧問の先生から「良い声かけをしてくれていたから、チームがまとまっていた。いてくれてよかった」と言われ、「自分もここにいてよかった」と感じたそうです。
この言葉に救われたからこそ、「あなたはそのままで価値がある」ことを仕事や活動を通じて伝えていきたい。そんな草太さんの信念をインタビューで感じました。
四柱推命においても「そのままの自分で自信を持てた」とのお声が嬉しくて、鑑定を長く続けているというお話がありましたね。そんな想いを歌詞に凝縮した応援ソングが完成しました。
── クラウドファンディングのために、応援ソングを届けられたこともあったそうですね。
全国でLGBTと性の多様性に関する出張授業を行っている井上鈴佳さんの活動を広げていくために、鈴佳さんの思いを『rainbow』という曲に込めました。応援ソングをきっかけに鈴佳さんの思いに共感し、支援をしてくださった方もいたんです。
最終的に目標金額以上の資金を集め、クラウドファンディングを成功させることができました。応援ソングを通じて、「人繋ぎ」ができたことが嬉しかったです。応援ソングは、仲間集めの曲でもあってほしいですね。
夢は応援ソングを届けたすべての人を招待した野外ライブ
── 応援ソングをきっかけに、仲間が集まる瞬間を目にされたのですね。これから挑戦したいことはありますか。
開催したいのは、これまで応援ソングを届けてきたすべての方々を招待した野外ライブです。500人のお客さんの前で、応援ソングライブをする夢があります。お客さんの中から、お互いの夢の応援者が現れるライブを目指したいです。
── 応援ソングライブでは、具体的にどんなことをしてみたいですか。
応援ソングを歌ってその方の素敵なところを伝えた後、舞台上でご本人に自分の思いをプレゼンしてもらえたらなと思っています。その後、お客さんがメッセージを書いて、その方の夢を応援する。そんなお客さん同士が応援し合えるようなライブに挑戦したいです。
例えば、「今こんな活動を頑張っています」という話を聞いた後、「私もその活動にジョインしたいです」というメッセージをお客さんが書いてくれたら、何か新しいことが生まれるんじゃないかなって。
ライブでたくさんの共感が生まれて、応援者が現れたらいいなと思っています。人と人が繋がることで、その方の夢を応援できたら嬉しいです。
── これまで開催された応援ソングライブについて教えてください。
オンラインとリアルの場で応援ソングライブを開催したことがあります。SHOWROOM(ショールーム)というライブ配信アプリを使って、6時間連続で応援ソングメドレーを歌ったときは、最終的に2666人の方々が来てくれました。
また、神戸のコミュニティースペース「room4」で少人数のライブをしたこともあります。応援ソングを届けた3名の方々をゲストにお招きしたのですが、そのときも想いを語ってくださった方をみんなで応援したんですね。
応援の渦が起こっていることを肌で感じて、すごく楽しかったです。運営メンバーの温かい想いも場に循環しているように感じました。
── お客さんだけではなく、スタッフのみなさんの想いも伝わってくる場だったのですね。
そうなんです。優しくてあたたかい場にしてもらえたなと感謝しています。
2021年の大晦日にも、お手伝いいただくメンバーとともにroom4に伺ってライブを開催します。この日は、YouTube毎日更新の100日記念日でして。
「点灯式~応援ソング de 心に灯りと繋がりを〜」と題したメドレーライブ。YouTubeでも同時中継するので、寒い時期ですが(笑)場のあたたかさを、オンライン越しでもたくさんの方と分かち合えたらと思っています。
これから挑戦してみたい野外ライブでは、準備も含めた長期プロジェクトとして「運営メンバーも主人公になってほしい」という大きな願いがあります。それぞれのメンバーが自分の得意なことを持ち寄って、強みを存分に発揮できるようなライブができたら嬉しいです。
誰もが笑顔で働けることが当たり前になってほしい
── 応援ソングライブだけではなく、企業講演ライブにも今後チャレンジしたいと聞きました。企業講演ライブを始めようと思った背景を教えてください。
まず、「発達障害のある方をはじめ、何か苦手なことがあったとしても誰もが笑顔で働けることが当たり前になってほしい」という想いがあります。
一方で、発達障害についての理解が十分に進んでいないこともあり、現状は企業内で当事者が働き続けることが難しいケースがまだまだ多いです。そんな危機感から、講師仲間の方とも協力しながら企業講演ライブを始めることになりました。
発達障害のある方や親御さんを応援する『はったつソング』をつくり始めた当初から、「目に見えない発達障害の特性や当事者の心境を、歌で分かりやすく伝えていきたい」という想いがあったんです。
企業講演ライブでも『はったつソング』を届け、発達障害者の雇用に関心のある企業の方々・経営者さん・人事担当のみなさんに、発達障害について知ってもらいたいと思っています。
また、発達障害のある方と一緒に働く方にとっても、「どうしたら当事者が働きやすくなるかわからない」などの疑問が解決する時間になってほしいです。目に見えない発達特性についてお伝えすることで、みんなの働きやすさにつながったらいいなと考えています。
──『はったつソング』の歌詞には、yu-kaさんの実体験や気持ちも込められていますよね。会社で働かれていた頃の出来事について教えてください。
20歳で発達障害の診断を受ける前は、10回もアルバイトを転々としましたが、会社に就職してからも困ることがありました。
一社目の就職先では、広報誌の編集をする部署に配属されたのですが、ADHDを代表する「不注意」の特性があらわれていましたね。
例えば、ライターさんの文章チェックをする仕事を担っていたのですが、重大な見落としをしてしまったことがあります。迷惑をかけたくなくて何度も確認していたものの、周りからは真面目にチェックをしていないと誤解されていたかもしれません。
また、毎月提出する交通費精算の記載をたびたび間違えて、「自分のことなのに、いい加減にしなさい」と叱られてしまったこともありました。
「ミスをしないように」という意識と、目で見た情報の処理や取捨選択が苦手な特性も相まって、メールや事務作業全般に時間がかかってしまっていたとも感じます。
同じ診断名であっても一人ひとり特性が異なるので、症状のあらわれ方には個人差がありますが、私の場合はこのようなことがありました。
「失礼のないように」と日々頑張って仕事をしていましたが、「なんでできないんだろう」と徐々に自分を責めるようになってしまい、1社目の会社をうつで休職することになったんです。
でも、上司からの指示をボイスレコーダーなどで録音して耳で聞けるようにしたり、苦手なメール業務の配分が少なくなるような働き方ができていれば、もう少し仕事を続けることができていたかもしれないと感じています。
── 企業講演ライブで、どんなことを伝えたいですか。
一人ひとり、情報認知の仕方に得意・不得意のチャンネルがあることを知ってほしいです。今までに聞いた事例から、特に発達障害のある方々は、不得意な方法で指示を受けた場合に、仕事上で困難を抱えるケースが多いように感じます。
まずは「認知の仕方に凸凹があるのだな」と知ってもらうだけで、正直かなり当事者の働きやすさが変わるのではないかと思います。同じ情報を見聞きしたとしても、それを脳内でどのように整理・記憶・理解しているかは人によって違うんですよね。
例えば、「文章を読んで記憶する」方が得意な人もいれば、「音声を聞いて記憶する」方が得意な人もいます。「絵や図など目で見て記憶する」方が得意だという人もいます。
同じ診断名であったとしても、一人ひとりの状態は様々なので、口頭で指示が飛び交う職場で苦労している当事者の方もいます。
当事者が自分の特性を知って工夫することも大切な視点だと思うのですが、私は1人だけで対処していくことに限界を感じました。
「周りに迷惑をかけないでおこう」と無理をして頑張りすぎてしまい「過剰適応」になってしまうと、適応障害やうつ病などのリスクを高めてしまうことになります。
一緒に働いているチームの中に、特性を理解してくれている人がいたら、働きやすさは変わるはずです。発達障害の特性があったとしても、誰もが笑顔で働けることが当たり前になったらいいなと思っています。
得意を活かし合うことで、「ありがとう」の循環が生まれる社会へ
── 他に企業講演ライブで伝えたいことはありますか。
得意なことを活かし合う大切さを伝えたいです。発達障害のある方の得意に注目して歌詞を綴った『はったつソング』もあり、企業講演ライブでお届けできればと思っています。
今私は「聴覚が優位であること」「音楽をやってきたこと」「人の強みや良いところを見つけられること」「聞き上手と言われてきたこと」といった、特性も含めた自分の得意なことを活かしながら仕事をしています。得意を活かした働き方が広がっていったらいいですよね。
一方で、発達障害があることを面接官に開示したとき、苦手なことだけを聞かれてしまい、苦しかった経験があります。どんな配慮ができるかという背景がきっとあったのだと思うのですが、苦手なことだけに目を向けられてしまうと、自尊感情が落ちてしまうように感じました。
苦手なことを知ってもらうことも大切だと思いますが、得意なことにも目を向けてほしかったです。すぐに実践することは難しいかもしれませんが、一人ひとりの強みを引き出し、それを活かして業務を任せていくという視点も大切なのではないかと考えています。
得意なことに着目してもらえると、一人ひとりの能力がどんどん伸びていき、会社が居場所だと感じられるのではないかなと思います。
初めてADHDについて会社に伝えたとき、崖から飛び降りるくらいの覚悟が私には必要でした。それくらい勇気を出して、発達障害のことを開示していることも企業講演ライブで伝えたいです。
自分の「好き」や「得意」を活かすことで、「ありがとう」の循環が生まれる社会になったらいいなと思っています。
それぞれのメンバーが自分の強みを活かすことで、生産性が上がるというデータもあります。企業講演ライブで、一人ひとりの得意が活かされる働き方を提案できたら嬉しいです。
yu-ka(ゆうか)
兵庫県生まれのシンガーソングライター。好き・得意なことで貢献&応援がモットー。広報誌編集業・インタビューライターを経て、編集室Roots「プロライター講座」を卒業。その後、「人の話を聴くこと」と「音楽」を掛け合わせた「応援ソングライター」として起業。ヒアリングで引き出した想いをもとに、相手の背中を押すオーダーメイド『応援ソング』を制作。また「シンガーソングライター教室」にて、半年間ミニソングづくりの講師を務めた。
大学生の頃、飲食のアルバイトで躓き、発達障害の一種であるADHD(不注意優勢型)と20歳で診断される。その後、発達障害の強みに焦点を当てたインタビューメディアを自ら立ち上げ、講演活動やイベントを開催してきた。また、シンガーソングライターとして、当事者や家族を応援する『はったつソング』を制作。当事者や家族、学校向けにライブを届けてきた。現在は「発達障害と仕事」をテーマにした『企業講演ライブ』開催に向け、準備を進めている。
1stミニアルバム『でこぼこ道』、2ndミニアルバム『大丈夫。』をリリース。
2021年12月31日に、YouTube100日連続投稿最終日として、記念ライブ「大晦日!yu-ka点灯式~応援ソング de 心に灯りと繋がりを~」がリアルとオンラインで同時開催されます。ぜひイベントページをご覧ください。
関連情報:
yu-kaさん
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