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「きょうだいさんの味方がたくさんいることを知ってほしい。ひとりじゃないよ。」京都こどもきょうだい会えるも代表・村上珠理さん

「会場全体から、きょうだいさんの味方がたくさんいることを知ってほしいです。ひとりじゃないと思ってくれたら。」そう語るのが、障害や病気のあるお子さんの「きょうだい」のための団体「京都こどもきょうだい会えるも」代表の村上珠理(むらかみ・じゅり)さん。珠理さんは、障害のある兄を持つきょうだいでもあります。自身の経験を生かしながら、きょうだいさんに向けたワークショップ「シブショップ」や、きょうだい支援についての啓発活動をこれまで実施されてきました。そんな珠理さんに、きょうだい支援に関わるようになった経緯と、活動にかける想いについて伺いました。

(聞き手:田中美奈)

きょうだい支援と出会って "自分はひとりじゃない"

学生のとき、しぶたねという団体(現在はNPO法人)を知人の紹介で知りました。病気の子どものきょうだいに向けて活動している団体で、ホームページにはきょうだいの持ちやすい気持ちが書いてありました。不安、罪悪感、寂しさ、孤立感、自己肯定感の低下などの気持ちが載っていて。これまで自分が感じてきた気持ちに当てはまるものが沢山書かれていました。そのページを見たとき、「これ自分だ」と感じ、思わず涙が出ました。自分は「きょうだい」なのかもって。きょうだい支援というものがあるんだとびっくりしました。それでボランティアをしてみたいとメールを送ったんです。そこから活動に参加し始めました。

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(村上珠理さん(写真中央)。しぶたね代表の清田悠代(きよた・ひさよ)さん(写真左)と専属ヒーローのシブレッドさん(写真右)と一緒に(提供写真))

しぶたねが主催するきょうだいさんのためのイベント(きょうだいさんの日)にスタッフとして参加しました。子どもたちに「あなたはひとりじゃないんだよ」とスタッフの方が声をかけているのを見たとき、小さな頃の自分に向けてそう言われているような気がしました。しぶたねは2003年から活動を続けている団体です。自分が子どもの頃はそういった団体とつながることはできなかったのですが、しんどいと思っていたときも、誰かがちゃんと自分のようなきょうだいのことを考えてくれていたことが嬉しかったです。自分はひとりじゃなかったと感じました。

きょうだい支援が足りていない えるもを立ち上げて

しぶたねの活動の中で、きょうだい支援が必要だと知りました。その後、きょうだい支援の研修会に参加するようになり、きょうだいへの支援が足りていないことを知ります。そのことは、作業療法士として就職した京都の福祉施設でも感じました。障害のある子どものリハビリテーションをする中で、きょうだいさんの居場所がないように感じました。きょうだいについて知っている支援者が少ないことも知りました。また、きょうだいさんを気にかけていても、その子と過ごす時間を十分に取れていないと悩む親御さんに出会うこともありました。当時京都には活動しているきょうだい会がなかったこともあり、団体を立ち上げることに決めました。

京都でえるもを立ち上げて3年目になります。コロナウイルスが広がる前は、年に4回ほど、主に小学生のきょうだいさんを対象として、思いっきり遊ぶイベント(きょうだいさんの日)を行っていました。また講演などの啓発活動も行っていました。コロナウイルスが収まったら、対面での活動を再開したいです。また、中高生のきょうだいさんが交流できるように居場所作りにもチャレンジしたいと思っています。今年の1月には、オンラインできょうだい会を実施する予定です。 

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(きょうだいさんの日の様子。(提供写真))

味方がたくさんいることを知ってほしい ひとりじゃないよ

きょうだいさんの日は、アメリカで生まれたきょうだい(シブリング)のためのワークショップ「シブショップ」をベースに組み立てています。勝ち負けではない遊びや、体を動かして発散できる遊びをすることが多いです。自己紹介を兼ねた遊びもします。親子のワークショップで、お子さんがサイコロを振り、親御さんが書かれた質問に答える自己紹介を行ったこともあります。親御さんにお子さんの自慢ポイントや得意なことを紹介してもらいました。きょうだいさんの日は、体を動かすだけではなく、お菓子作りも行っています。チョコレートフォンデュ、ワッフル、アイス、たい焼きをこれまで作りました。

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(きょうだいさんの日に作ったワッフル。(提供写真))

きょうだいさんの日に、ひとりじゃないよということはどうしても感じてほしくて、色んな工夫をしています。まず、会場の壁に気持ちをシェアできるスペースを作っています。子どもたちが何か書きたいと思ったときのために、紙を置いておきます。参加するきょうだいさんに合わせて、形を変えています。自分の好きなところや苦手なところ、きょうだいの好きなところや苦手なところという質問をしたこともありました。また、思いついたことを好きに書けるようにしたこともあります。中には紙に絵を描いて貼る子もいます。それもOKです。きょうだいの立場のスタッフが、自分が小さかった頃の気持ちを書いてくれることもあります。大人になったきょうだいの姿を見る一つの機会になったらといいなと思っています。周りのスタッフもきょうだいなんだと知ってもらって、こんな風に生きているきょうだいもいると思ってもらえたら。味方がたくさんいることを知ってほしいです。

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(きょうだいさんの日の会場にある気持ちをシェアできるスペース。(提供写真))

それと、会場に「えるも図書館」を作っています。きょうだいさんのための絵本や親向けの本を並べたコーナーです。きょうだい支援について勉強し始めたときに、きょうだいに関する書籍がたくさんあることを知りました。きょうだいさんに向けて活動している大人がたくさんいることを知ってもらう機会になればと思っています。ひとりじゃないと感じてもらえたらいいなと。

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(えるも図書館の様子。きょうだいさんの味方がたくさんいることを伝えている。(提供写真))

また、イベントの終わりに「えるも便」をメダルと一緒に子どもたちに渡します。「えるも便」は一緒に遊んだスタッフからの手紙です。「今日はありがとう」、「風船サッカー楽しかったね」、「〜のこと教えてくれてありがとう」などと、ひとりひとりに向けたオリジナルのメッセージを書きます。その子と話したことを覚えているよという気持ちで書きます。

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(きょうだいさんの日の終わりに、子どもたちに手渡される「えるも便」とメダル。(提供写真))

えるもの会場全体から、きょうだいさんの味方がたくさんいることを知ってほしいです。障害や病気があってもなくても自分は大事な存在。ひとりじゃない。そのことが伝わればと思っています。

関連情報:京都こどもきょうだい会えるも

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