読書感想文〜成瀬は信じた道をいく

読書は私たちに未知の友人をもたらす。フランスの小説家になろうバルザックの言葉だ。

主人公の成瀬あかりは二人組お笑いコンビ、ゼゼカラの1人。『膳所から世界へ』は彼女らのキャッチフレーズだ。成瀬さんは滋賀県でいちばん頭の良い高校、膳所高校に通っている。小6のときに作った交通安全標語は電柱にかけられていて、夏休みには絵画、作文、書道などの自由課題を全部やってきた。下校ついでにパトロール中と書かれた赤い腕章をつけて好きでパトロールしている。おやつ昆布が大好きで、一度聞いた人の名前と顔は忘れない。
すごい。でもクラスにいたら近寄りがたいかもしれない。何だか変な人という気もする。実際、話し言葉は独特だ。「いかにも私が成瀬あかりだ」なんて、こんな戦国武将みたいな言い回し、言ったことも聞いたこともない。

この情報はときめきっ子タイムというときめき小学校の総合学習の時間に4年生の北川あかりちゃんが調べたものだ。あかりちゃんとともに成瀬さんと知合いになった気がして、わくわくした。

成瀬さんはその後京都大学に合格。
成瀬さんは何があっても自分のペースと信条を貫いて行く。でも、自分勝手ではないし、人に悪意をぶつけたりしない。京都大学受験では自分持ち受験生なのに、宿のない受験生をうちに泊めてあげるし、アルバイト先のスーパーでは、クレーマーの女性とかかわっていき、変えていく。成瀬は変わっているけれど、絶対いい子なんだよね。
どんどん好きになっていく。
実際にいたら、声もかけられないかもしれないけれども、本の中では、もう仲良しだ。一緒いて楽しい。信頼できる。
年末には「探さないでください」という置き手紙をおいていなくなる成瀬。お父さんや友達が真剣に心配してあちこち探しにいく。やっぱり愛されてるんだなあ。紅白歌合戦のけん玉チャレンジに参加してたのも面白いけれど、言わないでねと言われた言葉を杓子定規に捉えた成瀬も面白い。心配させられたけど、怒れない。

成瀬さんの呼び方が成瀬になって、もう一緒の町内に住んでいるみたいだ。さすがに京都大学は無理だから、大学の同級生にはなれないけれど。そんなの関係ない、成瀬は関係ないと思っていると思うから。
自分の信じた道を行くのは、他の人の信じた道も認めることで、気持ちが踊るし、自分も認められていると感じられる。
読書がもたらすのは、友達がひとり増えるだけではなくて、もう一つの世界にその世界しかいない友達ができるということ。現実にはいない友達は、私に新しい世界を見せてくれる。世界がたくさんあることは、私を何故か落ち着かせてくれる。

成瀬のうちの電話番号は「コンビーフはうまい」。何番なのだろうと考えた。語呂合わせだけではなく、あいうえお表の順番や文字の画数を持ち出したかなり無理のある陸続きだけれど、一度聞いたら覚えたという不思議な番号。成瀬は受験番号の108番も1✕2²✕3³と嬉しそうにするし、素数が大好きだ。数学の好きな人はどうして素数が好きなのだろう。もう何にも割り切れなくて、我が道を行くからなのかな。成瀬みたいだ。
さて、この難問に挑んでみた。5から始まる番号だ。私の推測は591−1281。コンビーフのンはあいうえお表の最後だから数字も最後の9。ビはひいふうみいのひいで1。ーはー。
ビイーフと聞こえるから、次は12だ。うまはこコンビーフは、まできたときにふと出た言葉。なので、文字はなし。最後にいは1だ。

現実にはいない友達とこんなに遊ぶのは初めてだ。成瀬はきっとあなたともいい友達になれるはずだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?