マーダーミステリーおける視点の違い

 マーダーミステリーを遊ぶ際、プレイヤーの興味深さや楽しさを引き出すための重要な要素の1つに、それぞれのキャラクターの視点の違い(キャラクターにとっての見え方の差)があると私は考えている。自分自身の思考整理を兼ねて、それぞれの見え方の違いを掘り下げてみる。

 マーダーミステリーにみられる見え方の違いはざっくり挙げて3種類ほどあると思っている。
1.対象との距離の違いによる見え方の差(知っている、知らないの差)
2.場所や立場による見え方の差(認識の差)
3.世界による見え方の違い

1.対象との距離の違いによる見え方の差

図1 対象との距離の違いによる見え方の差

 対象となる事象(人や物、できごと等)に対して、キャラクターがそれに触れたのか、あるいは目撃したのか、それとも全く知らないのか等によって対象に対する見え方が変わり、キャラクターの認識(キャラクターの設定書等)が変わるというものである。
 物語上の真相に近づくためには、なるべく近い距離の人からの話を聞くことが重要になる。(その近い距離の人が嘘をつかない限りにおいてだが)

 「対象との距離の違いによる見え方の差」は非常に多くマーダーミステリーにおいて取り入れられていると思う。ある時間のある場所において、各キャラクターが見聞きした情報を出し合い、時系列等を整理する。秘密を持つキャラクターの嘘がそれに混じるかもしれない。その場合は、少し離れた距離でも誰かが目撃していたり、何らかの証拠が出たりすることが多いので、小さな違和感から真相に迫っていくものとなる。

2.場所や立場による見え方の差

図2 場所や立場による見え方の差

 それぞれのキャラクターが対象を見た位置、あるいは立場(考え方)によって生じる見え方の差である。それぞれが自分の位置あるいは立場から見えたものを話し合うことによって、物語の真相に近づく。

 「場所や立場による見え方の差」ではキャラクターの誰も真相を知らない場合がある。そのため、プレイヤー間の議論が最も重要になると考えている。

 前述の「対象との距離の違いによる見え方の差」では、なるべく近い距離の人の正しい情報を精査することが重要となる。そのため、情報は距離の近い人からその他の人への伝達となり、情報の流れが一方向的である。
 「場所や立場による見え方の差」では、どの人も真相を知らないがゆえに、お互いの認識についての情報交換が重要となり、情報の流れが双方向になる。プレイヤーにとって、話し合いが最も楽しく感じるのは「場所や立場による見え方の差」ではないかと個人的に考える。

3.世界による見え方の違い

図3 世界による見え方の違い

 例えば、青色の光を放つ電灯で照らされた白い紙が青く見えるように、ある世界観(あるいは世界の法則)ではAと見えたものが、その世界観自体が変わると別のもの(B)に見えるというものである。

 これは世界観(あるいはルールや物理法則)の変更が指示されない限り、プレイヤーからはなかなか気付き難い。基本的にはこれは作者がプレイヤーに対して仕掛けるものとなる。これを使うと、プレイヤーにとって印象の強い物語(シナリオ)になりやすい。しかし、1つのシナリオ中に世界観の変更を多用し過ぎると、プレイヤーがシナリオ(作者)に引きずり回されているような感覚に陥る危険性もあるため、ここぞという一番効果的なところで1回だけ使う方が良いと考えている。

4.見え方の違いの個人的所感

 ここからは私個人の感想であるし、シナリオの内容によっても状況が変わるので、数多ある考え方のなかの一意見として聞いて欲しい。

 マーダーミステリーは基本的にはプレイヤー複数人で遊ぶものだと考えている。(もちろん、最近は1人用シナリオなども出てきてはいるが) 
 他の人と一緒に遊ぶのであれば、やはり私としては会話や議論を楽しみたい。そうなると、お互いが持つ情報の行き来が重要だということになる。
 
 私個人が一番好みの見え方の違いは「場所や立場による見え方の差」である。他の人と情報交換をしながら、一緒にその情報が示す色々な可能性について議論することができる。本筋の話に関連した事柄に、多くても数個程度入れられれば十分だと思う。ただ、私自身は、これに関するネタ(特にプレイヤー同士の話が盛り上がりそうなネタ)を考えるのは他のものよりも難しいと感じてはいる。

 マーダーミステリーのシナリオを考える上で多用でき、一番使いやすいのは「対象との距離の違いによる見え方の差」である。議論始めなど、プレイヤーたちがどう動けばいいのか(誰と話し、何を隠さなければならないのか)がまだ良く分かっていない時には、会話のきっかけにもなりやすい。
 ただ、秘密やミッションによるプレイヤーの嘘を防ぐような証拠類が多いと、プレイヤーの動きの自由度を狭める可能性がある。例えば、証拠カードが全て公開された場合、どんなことを発言したとしても自分の秘密が明かされてしまう状況はよくある。
(ただし、これはシナリオの難易度等他の要素とも関係する事柄なので、単に証拠カードを減らせばよいという単純な話でもない) 

 最後の「世界による見え方の違い」はシナリオに必要なければ無くても構わないと思う。
 あえて「世界による見え方の違い」が使われるのは、それがそのシナリオのテーマに非常に重要な場合や強いメッセージ性を持つ場合に多い気がする。(ネタバレ防止のために実際の作品名を挙げるのは避ける)
 強い物語性を発揮しやすい一方、プレイヤーによってはその物語の変化を先読みできてしまう人もいるので、効果は人それぞれのところもある。
 作者自身が強い世界観を作品に持たせたい場合には、「世界による見え方の違い」を入れてみてもいいかもしれない。


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